選択肢
俺は今、馬車の中。
そう、城にドナドナされているのだ。
赤ん坊程度の能力では、どうにもならなかった。
しかし諦めた訳ではない!
この先の展開を知っているのだから、まだチャンスはある!
ちなみに、普通に城に行くとだな。
王様と話をして、その後に指示を出される。
具体的に言えば「~~でモンスター討伐」とか「勇者の証が~~にあるから取ってこい」とか。
そう言いながら、ショボいお金と、ショボい装備をくれる。
このありふれた展開。誰もが謎に思うだろう。俺も思う。
そしていつもゲーム画面に向かってツッコむ。「もっと金寄越せ!」「俺だけにやらせるな!」「軍隊出せ!」と。
つまり、城へ行くと死亡フラグが立つようなものなんだよ。
だから行きたくない。
セラフさんがお目付け役として仲間になるし。
そうなると、今回のように強制的に動かされるんだろう。
ゲームだから、死んでも大丈夫な訳で。
実際はどうなるか不明だし、なりよりもそんな実験したくない。
だから逃げる!
少なくとも年齢並のレベルになるまでは!
あっ、そうそう。チャンスの話だったな。
チャンスってのはさ……多分そろそろ起きるはず。
ほら、やっぱり! 馬車が止まり、周囲からザワザワと野次馬の声が聞こえる。
セラフさんが御者に確認して、話しかけてきた。
「……すみません、キョウさん。道の真ん中で事故があったみたいです」
これ! これが道中で起きるイベント。
確か馬車が転倒していて、怪我人が出ているんだ。
ゲームの中では、静止を振り切り俺が降りて、助けるんだよね。
それによって、セラフさんの好感度が上がる仕組みなのだ。
今回はこれを利用させてもらおう。
「本当ですか?! 大変じゃないですか!」
「そうですね」
「じゃあ!」
「……じゃあ?」
ここでゲームでは選択肢が出る。
『→助けに行く 静観する』
この2つだ。
普通にゲームをやってたら、誰もが『助けに行く』を選ぶ場面。
なので……。
第3の選択肢だ!
「怪我人が居るのでは?」
「ここからでは分かりませんけど、可能性はあると思います」
「じゃあセラフさんの出番ですね!」
「えっ?!」
「修道女なんでしょ?! 困っている人を見捨てて良いんですか?!」
「で、でも、私はキョウさんをお城に連れて行くという使命が……」
「そんな事よりも人々の治療が先でしょう?! ほら、早く早く!!」
「そ、そう、ですね! では行ってきます!!」
「頑張ってください!!」
セラフさんは最初に仲間になるだけあって、回復魔法持ちなのだ。そして修道女。
ならば、ここで人々を助けないという行動は取れないだろう。
さて、セラフさんは行ってしまった。行ってくれた。
ついでに御者の人も転倒した馬車を動かす為に、現場に行っている。
はい、フリーになりました。
今しかない! 脱出!!!
やったぜ! なんとか裏路地に隠れる事が出来た!
後は捕まらないように、すばやく移動しなくては。
今日の内に近くにある町まで移動したい。
そこには城でくれるような武器や防具よりも上等な物を売っているからね。
この城下町でも売っているが、のんきに買い物していたら捕まりそうだし。移動だ、移動。
ゲームでは、移動方法が複数あった。
徒歩、自前の馬車、乗合馬車、魔法での転移、ワープスポット、等。
マップの縮尺も分からないし、徒歩は無謀だろう。
やはり乗合馬車かな。ゲーム内では隣町へ向かう乗合馬車は無かったけど、現実ならあるだろう。
セラフさんも、まさか来たばかりの人間が乗合馬車に乗って移動するとは思わないはず。
ちょっと前に会話した時に俺が聞いた武器屋や道具屋を探すだろう。
あっ! ステータスにある所持金の出し方を聞くのを忘れてた……。