途中の村
会話をしていると、目的の村に到着。
あれぇ? こんな所に村なんかあったかな?
ゲームでは無かったはずだが。
…………考えてみれば当たり前かもしれない。
ゲームでは町と町の間に道すら無かった。
だが現状では道がある。
ならばその道中に宿場町のようなものが合っても不思議じゃない。
そもそも、ゲーム内では高速移動のようなものだからねぇ。昼夜も無かったし。
村はかなり小規模。
あるのは宿屋と武器屋。
サッチ君に聞くと、泊まるのと食事は宿屋なんだって。
武器屋はメンテナンス用らしい。後、矢とかの消耗品の補充。
薬は宿屋で販売しているそうな。
宿屋に行くと、そのまま馬車を預けた。
この宿屋は冒険者組合が営業しているんだってさ。
だから専用の馬房があるらしい。組合員が使うのは無料なんだそうだ。
部屋を借りる為に中に入ろうとすると、サッチ君は来ない。
何かあったのかな?
「俺は馬車で寝ますよ」
「えっ?! なんで?!」
「そういう契約ですから。泊まっても良いんですが、それだと自分の懐から支払う事になります」
契約では1日20000Jだったな。
それに自分の飯代も含まれていると。でも宿代は含まれていない。
泊まればそれだけ利益が減るって訳か。
う~ん、でもなぁ。
最初からそう言われてれば納得出来たかもしれないけど、宿まで来てから言われても。
この世界の人達は知ってる事かもしれないが、俺は初めてだし。
……うん、俺が払うから泊まってもらおう。
「えっ? 気にしないでください!」
「いやいや、俺だけ泊まるって、何か偉そうだし」
「雇用しているから偉いでしょう?」
「偉くなんかないよ。
それよりも契約時に聞かなかったから、一緒に泊まるって思ってたんだ。
だから泊まってほしい」
「え~?」
「じゃあさ、口止め料って事で。今回の事を言わないでって頼んでるからさ」
「いえ、契約の事を話さないのは普通ですから!」
「じゃ、じゃあさ、ほら、俺って世間知らずだから。
一人だと不安じゃん? 一緒に居てくれると助かるなぁ」
「……分かりましたよ」
よっしゃ!
ちょっと自分で言って悲しくなったけど、結果良しとしよう。
その日は、晩飯食って、すぐに寝た。
翌日。
ここからは馬車は置いて歩いていく。
組合の宿屋だから出来る事だってさ。
ま、山に入っていくからね。馬車で行っても放置する事になるし。
どうしてもと言うなら馬車でも行けるらしい。
その場合は御者を雇う事になるそうな。
その人に待機していてもらえば、馬車も守れる。
でも、俺がやる事が秘密の事なので、人を増やすのは止めておいた。
目的地に向かいながら、モグへの攻撃方法を話し合う。
「毒針が小さいので、吹き矢はどうだろう?」
「悪くないと思いますが、吹き矢の経験が?」
「……無い」
「無ければ難しいですよ? ただでさえ素早いのに、慣れてなければ当てられないでしょうね」
「う~ん、そうか~。
そうすると、投げるってのも無理だよね?」
「そうですね。重さも無いですし、投げても届かない上に当たらないでしょう」
「あっ、木の実とかにくっつけて、それで投げるってのは?
それなら重さもあるし、ある程度の大きさになるから投げやすいと思う」
「良いですけど、栗みたいにするんですか? 持てませんよ? そもそも、コントロールに自信があります?」
「……無い」
「まぁ布を利用して投げるって方法もありますが。これも練習が必要です」
あ~、なんて言ったっけ?
スリングショット? ボーラー?
……投石機で良いか。って呼び名はどうでも良い!
確かに練習が必要だな。やった事無いし。
「無難に槍が一番良いでしょう」
「槍?」
「ええ。と言っても棒ですけどね」
「棒?」
「棒の先に毒針をくっつけておくんですよ。
それで突けば良いんです。これなら少々離れていても当てられるでしょう。
それに棒ならそこら辺でいくらでも手に入ります。
吹き矢にしろ投げる木の実にしろ、物が無いですからね」
……あっ、本当だ。
俺、アホじゃないか?




