秘密の話
道中は色々な話をした。
サッチ君(君で呼んでくれと言われたので)は22歳。
俺の5つ年下だ。
と言っても日本の居た頃の年齢なので、ゲーム内では何歳か分からないけども。
やはり、何故モグを倒しに行くのか、というのが疑問らしい。
サッチ君は裏切るような人じゃ無いと思い、この件については話す事にした。
「サッチ君を信用して話すんだけど……」
「はい」
「誰にも言わないで欲しいんだけど」
「大丈夫です。誰にも言いません」
「紙に書いて渡して『言ってないですよ』は無しね?」
「そんな事しませんよ」
「後、脅されたから、とか、組合から聞かれたから、とかも無しね?」
「分かってますって」
「一人の時に呟いて、誰かに聞かれてしまった、とかも無しね?」
「大丈夫ですって!」
「日記に内容を書いて、誰かに読まれた、ってのも無しね?」
「あれ? さっき信用して話すって言いましたよね?!」
「ははは、念押しだよ、念押し」
一応、念は押しておかないとね。
ラノベのよくあるパターンくらいは確認しておかないと。
さて、話そうか。
でも、どうやって話そう?
う~ん、ま、話しながら考えれば良いか。
「実はね、モグは倒すとレベルが上がりやすいって噂があるんだ」
「レベルが? どの項目ですか?」
「それは俺にも分からない。ただ、上がりやすいっていう噂だから」
「う~ん、なかなか信用出来ない話ですね。
それにすばしっこいという話ですよ? どうやって倒すんです?」
「ん? その言い方だと、遭遇した事が無い?」
「はい。この辺には居ないですから」
「そうなんだ~。出現場所も聞いてるから大丈夫だと思う」
「そうなんですか?」
「うん。それで倒し方だったね。
こないだビー退治があったじゃない?」
「はい、あったそうですね。自分は護衛の仕事をしていて、町に居なかったんですけど」
「そのビーの毒針ってあるじゃない?」
「あぁ、ドロップ品の」
「そう、それ。それがモグに有効らしいんだ」
「ふむふむ。つまり今回の依頼は『モグが出現する場所に行き、毒針で倒してレベルが上がるか検証する』という事ですね?」
さすが優秀。
もう内容を把握してしまったようだ。
「ついでに言えば、倒した時に仲間もレベルが上がるか知りたい」
「えっ?! 仲間も上がるんですか?! 何もして無くても?!」
「そういう噂だったんだよ。だからサッチ君で検証してみたい」
「そりゃありがたいですけど…………確かに念押しするような内容ですね。
事実なら大事ですよ?!」
ゲームなら、パーティー全員に経験値が入る。
最初の一撃で倒して、他のメンバーが何もしていなくても、だ。
はたしてそれはこの世界でも同じなのか。これも実験したい。
「ところで、そこまで大事?」
「そりゃそうですよ! レベルが上げたければ、自分で努力するのが当たり前ですから!
仲間なだけで上がるなら、お金に余裕のある者達が、全員実行しますよ!」
あぁ、パワーレベリングね。
出来たら良いな。
出来るなら、まず真っ先に俺が実践するわ。
冒険者を沢山雇って、戦いの場について行くだけでレベル上げになるんだもん。
金ならある! チートの金が! そんなに多く無いけど!
「理解出来ました。世紀の大発見になるような事を調べに行くのですね」
「う、うん。まぁ、そうだね」
「ところで、毒針を使ってモグを倒すという話でしたけど」
「えっ? うん」
「どうやって使うんです?」
「え?」
「だって毒針って小さいじゃないですか」
た、確かに!
ゲームではサイズ表示なんか無かったから気にしてなかったけど、本物は長さ3cmくらいしか無い。
太さも5mmくらい? 軽いから投げても当たらないだろう。当たっても刺さらないな。
「本当だ! どうやって当てよう?!」
「えっ?! 考えて無かったんですか?!」
「おう! 何も考えて無かった!!」
「誇らしげに言わないでください。自慢出来る事じゃありません」
「そこで経験豊富なサッチ君に、方法を考えてもらいたい!」
「丸投げですか?! え~、何か方法があったかなぁ」
おおっ。文句を言いつつも考えてくれるようだ。
俺よりもこの世界に詳しいんだ。何か良い方法を編み出してくれるだろう。
俺よりも頭も良さそうだしね。
……自分で言ってて、ちょっと悲しくなった。
俺も考えよう。




