孤児院
長い長い書類との戦いを経て、やっと組合証を手に入れた!
引き換えに100000J払ったので、依頼も出せた。
出発日は翌日と言ったら可能との事。
朝に組合に来ればOKらしい。
ちなみに移動は組合所有の馬車を使うんだって。
それも料金に含まれているらしい。
歩きだと思ってたから助かるね。
翌日。
組合に行くと、一人の男性を紹介された。
「こちらの方はサッチさんです。本日から貴方の護衛をしてもらいます」
「サッチです。よろしく」
「あ、どうも。よろしくお願いします」
「サッチさんは孤児院出身なんですよ。たまたま予定が空いてまして。運が良いですね」
「孤児院出身ですか?」
「はい、そうです」
おおっ、ラノベの定番だ!
教会が運営で、貴族からは疎まれて、毎日の食事にも困ってる、孤児院だね!
ラノベの主人公が関わって、あっという間に過ごしやすい場所になるアレ!
それで孤児院の子供になつかれたり、孤児院出身の女の子に言い寄られたりするヤツ!
きっとこの人も、苦労して冒険者になって、儲けのいくらかを孤児院に寄付したりしてるんだろうなぁ。
って顔で見てたら不思議がられた。
「あっ、そうでした。
契約の時にお話させていただきましたが、キョウさんはこの国の方ではありませんでしたね」
「あ~、そうなんですか……。だからその顔なんですね……」
「えっ? えっ? 何か?!」
「この国の孤児院の事を知らないでしょう?」
「えっ、は、はい」
「まぁまぁ。俺が道中にでも説明しますよ」
「えっ? えっ?」
納得出来ないまま馬車乗り場まで移動し、そのまま出発。
サッチさんは御者をして、俺はその横に座っている。
後ろ? 後ろは色んな荷物が乗っている。
どうやら道中にある村に持っていく物らしい。
そこで泊まるので、ついでに荷物も運搬するそうだ。
実はそれもあるから馬車が安く借りられる、という事を教えてもらった。へ~。
「改めて。私はサッチと言います」
「あっ、どうも。俺はキョウです。年も近そうなので、もっとフランクに話してもらって良いですよ」
「そうですか? では少しだけ」
「俺もそうするから」
「それで孤児院の話でしたね」
「あっ、それ! どういう事?」
「え~とですね。まず、孤児って何で出来るか知ってます?」
「えっ?! え~と、親が死んだから?」
「そうです。何で死んだか分かります?」
「……モンスターに襲われた?」
「いや~、それは少数ですよ。大体は戦争です」
「戦争?!」
「と言っても昔の話で、今は違いますよ?
国対国の戦争で親を無くした子供が孤児になったんです。
そこで当時の陛下は考えました。自分たちのせいで孤児が増えてしまったと。
自分たちの為に戦ってくれた兵の子。その子供の面倒も見れないなら王失格だと」
「ほう。立派な王様だったんだね」
「ええ。それで国が出資して孤児院が各地に作られたんです」
「しかし、子供を養うというのはやはり費用がかかります」
「確かに。人数が多いほど多額の費用が必要だよね」
「当然側近達からはそんな費用は出せないと言われたそうです。
そこで陛下は上手い手を考えたんですよ」
「上手い手?」
「ええ。そこは孤児院じゃない。教育の場、だと」
「教育の場?!」
「はい。孤児院に居る子は、文官から読み書きや計算を習います。
兵士からは戦う方法を習います。こうする事によって、未来の文官や兵士が誕生するのです」
「な、なるほど!」
つまり、孤児院=学校としたのか!
子供の時から英才教育されれば、さぞかし優秀になるだろう。
「その策は成功し、俺が言うのもアレですけど、今では孤児院出身というのは結構なステータスなんですよ」
「へ~! じゃあサッチさんも兵士に?」
「いや~、俺は勉強の方がアレだったんで……だから兵士には向いてないと思って冒険者になりました」
「そうなんだ。そういう人は結構居るの?」
「はい、居ますよ。それに商人の人も優秀な子を引き抜きに来ますね。
今は、卒業した子は、文官6割・兵士2割・冒険者1割・他の仕事1割、って感じです」
確かにただ金を出してるだけよりも良い策だよね。
将来国を支える優秀な人材を確保出来るんだもん。
「貴族とかはどうなの?」
「貴族ですか? あっ、子供のいない貴族が養子にする為に来る事もありますね。
後、自分の子供を通わせている貴族も居ますね」
……そういう事が聞きたかったんじゃないんだよ。
貴族が孤児院出身の文官とかを見下したりしないの?って聞きたかったんだよ。
でも、そんな様子じゃあ、見下すとか無さそうだな。
この世界の孤児院は、ラノベの主人公の出番は無いようですね。




