冒険者組合
「冒険者組合へは初めて?」
「は、はい」
「ではそこから説明させて頂きます。少し長くなるので座って下さい」
扉の中はファミレスみたいな感じ。
2人用のテーブルと椅子が2脚あるのが5箇所。
う~ん、車を買いに来てるみたいだ。商談?
「まず依頼を話していただきます。
これを聞いて組合員が受ける金額を査定させていただきます」
「え~と、こちらが自由に設定は出来ないんですか?」
「ある程度は交渉の余地はありますが……。
極端な例を言わせていただきますと、例えば小石を10個拾ってきて欲しい、という依頼だとします。
小石自体は価値が無いので、1個1Jで全部で10Jと言われるとします。
それでは冒険者の日当にもなりませんし、組合も儲けがありません」
「その場合、適正金額は?」
「そうですねぇ……1人で半日仕事ですから、冒険者の賃金で5000J、組合に5000J。
合計で10000Jくらいでしょうか?」
小石10個で10000J!
高いな! ラノベとかなら薬草10本で500Jとかじゃないか?
で、それで大量に持ってきて買い取ってもらい、目立つ(本人は目立ちたくないと言っている)のが普通だろ?
でも、よく考えたら確かに謎ではある。
薬草10本と依頼を出して500Jで受けたとして、ギルドの取り分は?
ギルドが依頼主なら取り分は考えなくて良いけど、その場合はギルドがこの薬草を転売するのだろう。
10本で1000Jで転売するとする。よくあるのは薬屋が相手かな?
だったら最初から800Jで買うと薬屋が提示すれば良い話だ。
定期的に欲しい場合、薬屋自身で採取者を雇用した方が良い。品質の統一も出来るだろうし。
他の依頼のついでに採ってきてもらう?
少額の為にわざわざ採取しないだろ。
特にラノベではアイテムボックス持ちが少ない設定が多い。
荷物になる薬草を採る訳が無い。時間も取られるし。
おっと、考えこんでる場合じゃないな。
話の続きを聞かないと。
「査定が終わりますと、期限等を決めていただき、納得されたら契約となります」
「は、はい」
「契約が完了しましたら、契約書を発行します。それと引き換えに料金を払っていただきます」
「先払いですか?」
「そうなりますね。これは後から契約内容に苦情を言われない為の仕組みです。
後払いですと、品質が悪いとか高いとかゴネる人が居ますので」
「は、はぁ」
「その代わり、契約内容と違った場合、支払いされた金額の倍額をお返しいたします」
担保みたいなものか。
この辺は問題無いな。
「あ、でもその違約金狙いで、冒険者の邪魔をする者とかも出てくるんじゃないですか?」
「大丈夫です」
「えっ? 言い切るんですか?! その根拠は?!」
「今までにそのような事案は12件起きています。
しかし全て検挙済みです。絶対に逃しません。ちなみにこの国では詐欺罪は10年以上の鉱山送りとなります」
にこやかに微笑みながら怖い事を言うな!
するつもりは無いけどさ……怖いよ!
「ここまでで、他に何か疑問はありますか?」
「ん~、特に無いですかね」
「では、続きを。
契約完了しましたら、組合が仕事をする冒険者に依頼します」
「えっ?!」
「どうかしましたか?」
「冒険者が依頼を選ぶのではなくて、組合が冒険者を選ぶんですか?」
「はい、そうですけど?
例えば採取の仕事だとして、雑な者にやらせる訳にはいきません。
組合が常に冒険者を監査していますので、適正な者に依頼しますので安心してください」
だから建物の中に依頼が貼ってある所が無かったのか!
だが、言われてみて納得。
出した依頼は責任持って完遂してもらいたい。
だけど、誰でも受けられる状態なら、ラノベに出てくるような荒くれ者が受ける可能性もある。
いい加減な事をされたら、依頼主も困るし、やらせた組合も困る。
特に組合は評判が悪くなる。
組合は受けた冒険者のせいにする?
そりゃ無理だ。だってまた依頼出したらそいつらが受ける可能性があるだろ?
だったらその組合には仕事を出さない。個人で雇う。
そいつらをクビにしない限り、組合は仕事が減り続けるだろう。
そもそも、完遂とするのは組合の仕事だ。
OKとした以上は組合にも責任はある。
……うん、ラノベの絡んでくる冒険者はファンタジーの話だな。
そう言えば冒険者登録しようと考えてたけど、ダメだなこりゃ。
登録すれば、常に監査されるみたいだし、そうなると俺の正体もバレる恐れがある。
それに今の実力では加入出来ない可能性もある。
ついでにこの世界の知識も薄いし。
「分かりました」
「では、これで終わりとさせて頂きます。
それで、本日はどのようなご用件で?」
「依頼を出しに来ました」
「そうですか。ありがとうございます。
それでは契約の為に詳しく依頼内容を教えてください」




