プロローグ
プロローグ
火曜日の今日は塾がある。正直塾に飽きてきた俺こと矢崎竜翔は、そんな重い足を動かして塾へと向かっている。
今日も普段通りの時間に塾は終わり、帰宅ラッシュの過ぎた午後九時頃、駅前の本屋に寄ってから家に帰る。
いつものルーティーン、いつもと同じ過ごし方、のはずだった。
異変に気付いたのは、本屋を出てから十分ほどたった頃だった。薄暗い路地を進む中、ふと後ろを振り向くと黒い服にフードを深くかぶった、それはもう不審としか言いようのない誰かが、俺の後をつけていたのだ。
一瞬それから目を離した瞬間、それは人間が出せるようなものとは思えないスピードでこちらへ向かってきた。
そして、どこかへ消えたと思った時には自分の背後に立っていた。
思わず固まった体を、ゆっくりと後ろへ向ける。
俺、死んじゃうのかな? と無意識に思ったが、そのような展開ではなかった。
それは周りをきょろきょろと注意深く見まわしてから、ゆっくりとフードをめくった。
そこにいたのは、俺と同じ年くらいの、肩まで伸びる黒髪の少女だった。
「こんばんは。あなたが矢崎竜翔さんですか?」
「そ、そうですけど……あんたは、一体……」
誰? と言おうとした時、彼女から自己紹介をしてきた。
「私は、ヒミユフハルニって言います」
「ヒ、ヒミユフ、ハルニ?」
「はいそうです。別に好きに呼んでもらえれば結構です。さて、それより…………」
とてつもなく呼びにくい名前、そしてこの口調。
なんでだろ、すっごい嫌な予感がする。
「実はあなた、わたしたちの王に等しい存在なんですよね……。なので、これから私たちの王の跡継ぎとして仕事をしてもらいます」
「…………マジ?」
「マジマジ」
「マジか…………」
いきなりそんなこと言われても、全く実感がわかない。わく訳もない。
そんな俺をよそに、彼女がマシンガンの如く補足をしていく。
「実は私、地球で言う宇宙人なんですよねぇー」
「……マジで?」
「はい。それで、本当だったらそろそろ迎えの船が来るはずなんですけど……、来ないんで、いきなりなんですけど竜翔さんの家に行ってもいいですか? いろいろ説明しないとまずいこともあるんで」
「……ちょっと今のもっかい言ってもらっても?」
「あー、はい。本当だったらそろそろ迎えの船が来るはずなんですけど……、来ないんで、竜翔さんの家に行ってもいいですか? いろいろ説明しないとまずいこともあるんで」
ヒミユフなんとかが、一寸違わず答えてくる。
「は? 家来るの? いやいやちょっと待っていきなりすぎる」
「待てませんよそんな。今すぐにでもブラックナイトが追っかけてきますしね」
「……そのブラックなんとかってのは?」
「えーとですね、要は竜翔さんを狙っている悪の組織的なものなんですけど、話すと長いので今度しますね。さあ、ちゃちゃっと行っちゃいましょう!」
一分前とは全く違うテンションな何とかハルニを連れて、家に向かう。
家までは五分も掛からずに行ける。それに、訊きたいことが山積みだから、とりあえずこいつにぶつけてみる。
「なあヒミユフ何とか、いろいろ聞きたいことがあるけど、まずなんて呼べばいいんだ?」
「自分の好きなように呼んでもらって結構ですよ~」
「じゃあ、宇宙人で?」
「なんでそうなるんですか…………」
ヒミユフハルニが残念そうな表情でこちらを見てくる。
「はぁ、それなら……ヒミ子かハル子かどちらかで呼んだください」
ヒミユフハルニは小さい溜め息を吐きながら言ってくる。
「何故に邪馬台国の女王……。じゃあハル子でいいか?」
「あっはい」
「それで……ハル子、どうして俺なんだ?」
さっきからとても気になるのだが、なぜ他の人ではなくこの自分なのだろうか。それこそ、宇宙人だったり地球人でももっといい人がいると思うのだが。
ましてやこんな『中の下・面倒くさがり・インドア派』という負の遺産三点セットを抱え込んだこの俺を。
そしてハル子からは当たり前というような答えが返ってきた。
「そりゃあ、王家の血をあなたがひいてるからですよ」
「…………マジで?」
「マジですよ。ほら、この家系図見てください」
「マジか」
「だからそうですって。百二十五代目が地球人と結婚して、そうして生まれたのがあなたのおじいちゃんです。今は亡くなっていますが、昔はちゃんと王の仕事をやっていましたよ。つまりあなたは百二十八代目です」
「マジだ」
「まあそんな感じですね。それで、私はあなたのおよm……じゃなくて側近ですはい」
なにかヤバイ言葉が聞こえたが、ここはスルーしておこう。
そんな話をしている内に、家の前まで来てしまった。
「んじゃ、入っちゃって」
「ここが竜翔さんのお宅ですかぁ、はぁ~。お邪魔しまーす」
なんだかヤバイ系オーラが出ているが、気にしないでおくよ、うん。
「それじゃあ、どっか適当にすわって」
「わっかりましたー。ってそれより、なんか食べさしてください」
矢崎家はラノベでもよくある、両親どちらも海外出張などでいない主人公と同じような展開の家だ。ひとつ違うのは、新婚が頭に着く旅行なだけで。しかも今年で二十回目。
家に上がって早速食事を要求してくるあたり、本当に日本の礼儀がわかってないハル子を尻目に、竜翔は台所に向かう。もちろん晩ご飯は自分で作らなければならない。
「……何食べたい?」
とりあえず聞いてみる。
「別に何でもいいですよ~」
まるで我が家にいるかのようにくつろいで、ハル子はテレビのリモコンを操作しながらそう言った。
「ま、腹壊すのは俺じゃないからな~」
ハル子にわざと聞こえるようにそう言って、今日の晩ご飯を作る。作るといってもこんな展開だとそんな気も湧かないので、朝の残りや昨日の夜の残りを適当にチンして並べるだけだが。ちらっとハル子を見ると、若干震えているように見えたのは気のせいだろう。
5分くらいで全ての食材が温まり、それらを全てテーブルに並べる。
「はー、これが竜翔さんの手作りですか。じゃあいただきまーす!」
「はぁー、とにかく食べながらでいいから俺の質問答えてくれよな……」
「イエッサー。うーん、美味美味」
ほんとに答える気があるのか? と聞きたくなるが、話が進まないのでスルーする。
「なあ、そういえば、なんで俺が狙われているんだ?」
「それあえすえぇわあいたいにおわかあないんえすえ……」
「飲み込め。まずは飲み込め」
ハル子が口にあるものを飲み込んでから質問に答えた。
「それはですね、私たちにも分かんないんですよね……一応、調査中という事で」
箸を伸ばして、唐揚げを一気に三つほどかっさらってく。
「……お前、よく食べるな」
「ふぇ? そんな食べてます? それより竜翔さんも、食べないと大きくなれませんよ!」
彼女に促され、箸を伸ばして野菜炒めを皿にすくう。
それだけ食べりゃ、大きくなるはずなのに……
「竜翔さん、今何か失礼なこと考えませんでした?」
「いや―何もー」
流石宇宙人、考えたことも読みとれるのか。知らないけど。
一通りの皿が空になったところで、ハル子が立ち上がった。
「さて、タイミング良く船も来ましたし、早速行っちゃいましょう!」
「へー来たんだ。……って、ちょっと待てもう行くのか?!」
「ええ、船来ましたもん。さあ、さっさと行きましょう! ねえ、ねっ!」
ほんとにテンションの高いハル子に急かされ、皿を片づけて庭に出る。そこには、俺の想像をはるかに超える大きさと迫力の宇宙船があった。
「なあハル子、これってUFOだよな。流石にでかすぎじゃねえか?」
一応聞いてみた。
「そりゃあ政府専用機ですもん。大きいはずですよ」
なるほど、日本のあれみたいなもんか。
「てゆうかこの大きさ、周りの目は大丈夫なのか?」
当たり前のことを一応聞いてみた。
「超強力な結界を張ってますから。絶対見られませんよ。というかこんなの目撃されたらオカルト研究者が真っ先に飛んできますよ。さて、じゃあ行きますか」
「そうだよな、こんなの見られたらただじゃあ……え、もう行くの? え、ちょっと待って、心の準備がまだってちょっとぉぉぉぉ!!!」
話しを聞かず、船へ行こうとするハル子。だが既に遅く、俺の脚は地面がら離れていた。
それはもう、未来から来た青タヌキがくれる竹トンボで空を自在に飛ぶ感じで、俺は見事に空を舞っていた。
『恐怖』の二文字を背負って。
「さあ、矢崎竜翔さん。ふつつかものですが、これからよろしくお願いします」
「ちょっとぉぉぉぉ! これって……ちょっとぉぉぉぉ!」
ハル子がなにか言っていたが全く聞こえず、叫びながらゆっくりと船へ上昇していった。
とまぁ、よく分からない感じで始まりました「まさかの俺はとある星の国王」ですが、最後まで読んで頂いた勇者は何人いるんですかねぇ(汗)。
さて、まずこの作品についてパパっとおおまかに説明させていただくと、主人公が遠い星に行って、何かやっぱり地球とは違って、いろんな意味で楽しむ(?)小説となっております(語彙力)。
とりあえずプロローグだけまずは上げようと思いまして、上げてはみたもののキーワードだの何だの、訳が分からない感じです、はい。
ジャンルとかね、間違ってはいないから大丈夫? 大丈夫かこれ...ちょっと不安。
続きが出次第、主人公竜翔とハル子、加えて愉快な仲間達の楽しく、熱く、泣ける? ストーリーになると思います!(多分...)
最後になりますが、読んでいただきありがとうございました!
第一章から始まる、彼らのストーリーの方も、お楽しみください!