【第0話】とある半機械の独白
────型式番号ED-14B、バックナンバー23番。
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「……トリガーを引き、次いで銃口からは鉛玉が滑り出る。
放たれた銃弾は寸分違わず、対象を射抜き……
血が。回路が。穿たれた穴から滔々と溢れ出す。
……機械も人も変わりなく。程なくばたりと斃れるが、共通する点が唯一つ。
やはり、その「魂」とやらまでは、決して斃れてはいない。
腹這い横這いどちらに伏そうが、信念の込もった刺すような視線が……必ず僕を襲うのだ。
“お前は何の為に戦うのか”、“そこに自らの意思はあるのか”。
僕はそれから逃げるように、決まって次弾は眼球に撃つのだ。
敵の妄言に惑わされる事のないよう……目という目を、カメラアイというカメラアイを、念入りに。
人間では「感情」という不確定要素が邪魔をするから、僕ら“次世代型人造人間”が使われるのだ。
人間は「心」という不純物を持つから、心無き僕らが任務に就くのだ。
だから、僕らには感情も、心も。
この身体のどこにも存在はしない。
任務で殺めた同種の目も、きっと何かのプログラムに違いない。
この湧き上がる何かだって、恐らくは一種の不調に過ぎないだろう。
僕らは武器だ。
武器に感情など必要ない。
ただ、敵を殺す────
───たったその一つ事を……淡々と実行できれば、それでいい。
昨日も、一人の男を殺した。
一昨日も、二人の女を殺めた。
一昨々日も、三機の同種を壊した。
相手の涙に目を逸らし。問いかけられても口を閉じ。
ただ僕は……あくまで「武器」として在り続けた。
武器は、使う側の思惑などに左右されない。
武器は、ただ対象を討つ為のみに在る。
……だが、どうだろう。
本当にそれでいいのだろうか?
本当に僕はただ、力を振るうのみの存在で、許されるのだろうか?
人間の側面も持つ、生半可な機械……
そんな僕だからこそ、持つ疑問なのかもしれないが。
…………俺はいつから、武器になったんだ?
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再度記録を閲覧する際には、手順1からもう一度……