プロローグ
五年越しの再会は唐突で、あまりにも残酷だった。
最愛の『彼』は銃口を突き付け、ただ真っ直ぐに私を捉える。
彼の眼差しに宿るは憎悪。青い瞳の奥底も、憤怒の焔に揺れていた。
……そうだよね。彼にとって今の私は、憎きテロリストの首魁に過ぎないのだから。
私の末路を嗤うように、聖都と仇名された大都会は喧騒を奏で続ける。
時折摩天楼に映る星空は、いつかの地球の夜にどこか似ていた。
父さんはあの日凶弾に撃たれ、母さんも消息を絶ったまま。
兄もその命を擲って私を護り、遂に私に遺された家族は彼一人となってしまった。
その最後の家族に討たれるなんて、どんな皮肉だろう。
怒りでも哀しみでもない複雑な感情が、私の小さな胸を締め付ける。
絶対に、死んではならない────。
たったそれだけの想いを胸に、あの日から今日まで生き抜いてきた。
地獄のような……いいえ、地獄の夜を一つずつ踏み越えてきた。
生きれば、生きてさえいれば、きっとまた彼に逢えるから。
必ず帰ってくる────そう彼は約束したから。
でもそんなこと、もう貴方は覚えてないよね。
穏やかに過ぎた日常も。二人で見上げた星の海も。
全ての記憶を消し去られ、植え付けられた偽りの正義。
例え信ずる物が虚構であったとしても、最期までその命令を全うする……それが貴方の、ネクスロイドとしての定め。
それでも、それでも。
…………本当に私を忘れてしまったの? ブレイド…………