拝啓、あなたへ。
ラブレターを書いた。
生まれて初めてラブレターを書いた。
気持ちを文字にするのは難しくて、何度も書き直した。
書いては消し。
書いては消し。
書いては消し。
書いては消し。
シャープペンシルの芯を入れ替える。
消しあとで汚れた便箋を買い直す。
今日こそは想いを言の葉にする。
そう決めては便箋をダメにした。何枚も何枚も。
想いを綴れなかった便箋は捨てられなかった。一緒にこの想いを捨ててしまいそうで怖かった。
ダメにした手紙は引き出しの奥に隠した。
そしてまた繰り返した。
書いては消し。
書いては消し。
書いては消し。
書いては消し。
ダメにしては隠し。
ダメにしては隠し。
ダメにしては隠し。
ダメにしては隠し。
気が付いたら財布の中が寂しくなっていた。
そんなある日、夢を見た。
誰かが楽しそうにはしゃいでいた。
ときおりこちらを振り向いては大きく手を振ってくれた。
それがとても嬉しかった。
気がつくと朝だった。
誰だったかは分からなかったけれど、とても大事な人だったような気がする。
おかげで今朝は心地良く目が覚めた。
心にじんわりと優しさが満ちていた。
その日、ようやく想いを綴った手紙ができあがった。
宛名はなかった。
自身も誰に書いているのかは分からなかった。
ただ、そこには伝えたい想いだけがあった。
「ありがとう」
拝読いただきありがとうございました。
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