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Strain   作者: Ak!La
13/56

第13話 ENCOUNT

「…………僕が?」

「そうだ。頼めないかね?」

 ソニアと共にアクバールの教会へやって来たグラナート。彼は少し考えてから、答える。

「…構わないよ。数少ない友人の頼みだしね」

「助かるよ」

「アクバール…お前、俺とは友達じゃねェっつったのに……」

「グラナートの方が君よりもずっと付き合いが長いからね」

 ローエンの文句に、アクバールはあっけらかんとしてそう答えた。

「君はワタシが頼りにしている一介の殺し屋であって、友人ではない」

「………じゃあ友人でもねェ奴にソニアを預ける訳には」

「それとこれとは別だろう」

 と、アクバールはローエンとグラナートを交互に指差す。

「君達二人は友人なのだから、友人の友人でグラナートが不都合の時はワタシにも預かる権利はある」

「………勝手な理論だな」

「ったく、アクバールも変な意地張ってないで」

 グラナートはため息を吐き、ソニアに言う。

「どうも君はアクバールを好いてはいないようだけど、彼は悪い人じゃないから安心していいよ。………ちょっと胡散臭さはあるけど」

「君達、揃いも揃って失礼じゃないかい」

「お前は誰が見たって胡散臭いんだよ」

「なんだと!」

 アクバールに睨まれて、ローエンは首を縮める。そして、机の上に置かれた紙切れを指差した。

「んじゃ、さっさとその番号に連絡して行くか」

「僕が連絡すればいいのかな」

「そうだ。………あぁ、白衣じゃない方がいいと思うぞ」

 ローエンが言うと、グラナートは頷く。

「そうだね。…………じゃあ一度着替えに帰っていいかな」

「………俺もそうする。後で落ち合おう」

「ん。また連絡するね」




 太陽は南を過ぎ、西に傾きかけている。それでもまだ太陽は高く、影も短い。にも関わらず、その路地はかげっていて、そこにたたずむ白いコートを着た男の顔は、フードのせいでよく見えない。

 その前方から、男が二人、近づいて来た。

「お前が、グラニ?」

 一人がそう言うと、フードの男は頷いた。

「………先程連絡した者です」

「一人だな」

「はい」

 と、その時フードの男は、背後からも三人近付いて来ている事に気付いた。

「…………あの」

「気にすんな、ちゃんと交換が済みゃ解放してやる」

 と、男が白い粉が入った袋を一つ、差し出した。フードの男の目が輝いたのを感じてか、男は手で制止した。

「待て待て、言った分の金は出せよ」

「………」

 フードの男は黙って封筒を差し出した。男は受け取ると、中身を見た。が、段々とその表情が険しくなって行く。

「………何だこれ、全部紙…………」

「ぐわっ!」

「!」

 ハッとして男が顔を上げると、フードの男の後ろに控えさせていた三人の姿が消えていた。さらに目線を落とすと、彼らが全員、首を切られて倒れていた。一目で、殺されているのが分かった。そして、血飛沫を浴びた目の前のフードの男が冷静なのに気付き、男は彼に詰め寄る。

「………てめぇ‼︎何しやが…………」

「僕じゃない、後ろだよ」

「!」

 フードの下の薄紫の瞳と目があった。冷たい視線に射竦められたその瞬間、彼は後ろから首筋に冷たい刃を当てられ、そして鋭い痛みと共に気を失った。

「…………音も無くって、フクロウか君は」

 フードの男、グラナートはフードを下ろしてそう言った。目の前に立つローエンの足元には、今倒した男ともう一人、男が倒れて死んでいた。

「梟とは初めて言われたな………」

「一瞬で三人殺したろう」

「じゃないと見つかるだろ」

「…………君にナイフ持たせるのは気を付けなきゃね」

「何でだよ、お前は別に関係ないだろ」

 ローエンは手にしたナイフを弄んでそう言った。グラナートから借りたものだ。

「どうして普段から持たないんだい」

「…………使って戦うのは無理だ。トドメを刺すには便利だけどよ」

「銃とかは」

「もっと無理。当たんねえし隙がデカいだろ」

「……まぁ向き不向きがあるからね………」

 はぁ、とグラナートはため息を吐いた。

「さて、帰ろうか」

「……そうだな」

 と、ローエンが踵を返して歩き出した直後、その背後から声がした。

「動くな」

「!」

 癖のある、中年の声だ。少なくともグラナートではない。振り向くと、グラナートの後ろに男が立って、手にした刀をグラナートの首筋に当て、しっかりと捕まえていた。

「…………ゴメン」

 グラナートが引きつった笑みでそう言った。

「……気にすんな、俺も気付かなかった」

 ローエンはそう言って、そちらへと振り向いた。

「………悪魔のローエン、やな」

 そう言った男の格好は黒のコート、否、それは警察の制服である。

「………あんた、警察か」

 彼が相当の手練れである事は、その風格から察する事が出来た。だからローエンは、慎重に男に訊ねた。

「そや。ダミヤ・オルグレン、お前の担当や、以後よろしゅう…………って、なんや動じひんな、お仲間が捕まってんねんで?心配やないん」

それには答えず、ローエンは言う。

「どうしてここが?」

「………質問に質問で返さんといてェな」

 はぁ、とダミヤはため息を吐くと、答えた。

「………お前は罠にハマった、それだけの話や」

「…………は?」

「だから、お前らがここに来てこの麻薬グループを」

「……そうなる様に、スラムの住民に仕込んだんですね」

「……せや」

 グラナートの言葉に、ダミヤはため息を吐いた。

「お前と絡んどる神父の……えーと、名前は………何やったっけ、忘れたわ。…………まぁ、とにかくそいつに、このグループの事教えろーゆうて。……あぁ、このグループとは俺らは関係ないで、なぁんも知らんまま囮に使わせてもろたわ。………俺がどうやって日を合わせたかは教えへん」

 別に説明しろとは言ってないだろ、とローエンは心中でツッコみ、そしてアクバールの事まで知られているのか、と思った。

「とりあえず、大人しく投降しい。そしたら………あぁ、協力者ならあんたも捕まえなあかんか」

 と、ダミヤはグラナートを見た。

「…………僕の事はご存じない様で」

 グラナートが苦笑してそう言うと、ダミヤは少し考えてから答えた。

「………あぁ知らん」

「……本当に知らねェのかそれのこと」

 ローエンが言うと、ダミヤは首を傾げる。

「………どういう意味や?」

 その時だった。突然、ダミヤの腹に電流が走った。その衝撃で、彼は思わずグラナートを放した。そこをすかさず、グラナートが蹴って距離を取る。

「……………なんっ……」

「この手袋、全体に電線が張り巡らされててね……まぁ言わばスタンガンみたいなものなんだけど……右手が後ろで抑えられてて助かったよ」

 黒い手袋を見せながら、グラナートはフードを被った。それを見て、ダミヤが目を細める。

「………お前」

「こうしたら、分かる?」

 そして、眼鏡を外して折り畳むと、ポケットに入れた。

「……グラン、お前それ見えてるのか」

 ローエンがそう言うと、グラナートは笑う。

「僕、視力は普通だよ。アクバールが、こうしてた方が医者らしいだろって」

「…………」

「知らなかったっけ?」

「知らねェよ」

「………ホワイトリッパー」

 ダミヤがぼそりと呟いた。

「…………もうすっかり忘れられてるかと思ってた」

 グラナートはそう言ってくすりと笑った。

「しばらく噂を聞かねェと思ったら……医者やってたってか?」

「今まで名前も顔も伏せてたから、誰も気付かなかったよ。……今バラしちゃったけど」

 ダミヤが立ち上がる。ローエンが身構えようとすると、グラナートはそれを止める。

「僕一人で十分だよ、君は下がってて」

「………」

 ローエンは無言で、下がる。………グラナートの実力は嫌という程知っている。だが、彼と相対するダミヤもまた、強いのは確かだ。

「……………刃物なら怖くねー」

「また病院で監禁されたくなかったら大人しくしてな」

「………チッ」

 ダミヤが一歩、二歩と近付く。手にした刀を、体の前で構えた。一方で、グラナートはただそこに立っているだけである。

「…………ねぇ、今日は一人で来たの?」

「二人いるんは予想外だったんや………部下がいるにはいるが、あまり危険に晒したない」

「……まぁ確かにローエンは手加減してくれないけど」

「…………そういう事ちゃうやろ」

「危険と見なせばこの子は容赦なく、誰でも殺す」

 と、グラナートはにこりと笑って親指で背後のローエンを指した。

「例え女だろうとね。………手加減を知らない、不器用な悪魔さ」

「………そういうお前は、死神か」

「今は生を与える医者なのだけれどね」

 肩を竦め、グラナートはおかしそうに笑う。

「……本気で捕まえたいなら、複数で来るべきだった」

「…………お前からは殺気が感じられへん」

「音もなく魂を狩るのが、死神なんだよ」

ダミヤが動いた。ローエンの目がギリギリ捉えられる速さだった。しかし、それよりももっと早く、グラナートが動く。

 ギィン!と激しく金属のぶつかり合う音がした。グラナートの手には二本の長い刃が握られていた。剣というにはやや不恰好である。刀身から柄までが全て金属で、装飾も一切ない。刃自体は薄く、細い。

「…………どっから出したんやそれ」

 それに刀を交え、ダミヤが言う。

「この上着の裏に、仕込んであってね」

 グラナートが弾き切る。ダミヤはすぐに構え直し、襲い来るその薄い刃を受けた。

「!」

 が、その軽そうな刀身から、思った以上の衝撃が伝わって来た。ダミヤは下がって、距離を取る。

 浅く息を吐いて、グラナートが再び刃を振るう。飛び上がり、体を捻ってダミヤへと斬りかかる。

「ぐっ」

 一撃目で弾かれ、二撃目でダミヤは傷を受けた。が、寸前で退がった為に軽傷だ。

「………んー…防刃繊維か………ちょっと硬い」

 グラナートは剣を切り払ってそう言った。ダミヤは右肩に滲む血をチラリと見て、刀を構え直した。弾かれた腕がビリビリと痺れている。

「……久し振りに刀傷受けたわ」

「刀じゃあないけどね」

「何なんやその武器…………」

「何なんだろうね」

 グラナートは曖昧にそう笑う。

「………さっきからヘラヘラと………笑ってばかりやな」

「…………気に食わない?」

「……余裕な感じがな」

「まぁ、余裕だからね」

 空気が動いたのを、グラナートは感じた。一瞬にして目の前に迫ったダミヤが、物凄い疾さで刀を振り下ろす。グラナートは下がり、斜めに切り上げられた攻撃を上に飛び上がって避けると、路地の壁を蹴って彼の背後へと着地した。

「!」

 不意に感じた強い殺気に、反射的にダミヤが首を曲げると、グラナートの刃がその頰を掠め、浅く裂いた。顔をしかめつつ、ダミヤは体の右側で握り直した刀を、グラナートの脇腹を狙って振る。が、当たる前にもう一方の刃に阻まれた。

(…………コイツ、一瞬で逆手に)

「二刀は苦手かい?」

「!」

 グラナートがダミヤの腹を蹴飛ばした。ダミヤは吹っ飛んで、地面を転がる。うつ伏せに止まった彼は苦しそうに咳き込む。

「………がはっ、ゲホッ」

「……参ったなあ、しばらく動いてないから鈍っちゃった。体力もあまり持たないし」

 ダミヤが近くに落ちた刀を握り直そうとするので、グラナートは刀を蹴り飛ばした。刀はローエンの横へ、ダミヤの手の届かない所へ行ってしまった。

「…………!」

「……一人で来たのが浅はかだよ、こっちがローエンだけじゃないと分かった時に、逃げるべきだった」

「………!」

「……おい、俺だけだったら大丈夫みたいな言い方するな」

 ローエンがそう文句を言うと、グラナートは顔を上げる。

「実際、君は得物持ち相手は苦手だろ?」

「…………そうだけど」

 確かにそうなので、ローエンは言い返せない。グラナートはダミヤへと視線を戻す。

「さっきので肋骨何本かイッたかな?」

「…………」

「起き上がれないんだ」

「…ナメ…………んなよ」

 ぐぐぐ、と起き上がろうとするダミヤへと、静かにグラナートは刃を振り上げる。………が、しかし、その時。

「武器を捨てなさい!」

「!」

 女の声がした。ローエンもグラナートも驚いたが、一番驚いたのはダミヤだった。

「…………セリン‼︎」

 グラナートの数メートル後ろに、アナスタシアが銃を構えて立っていた。

「……増援か、困ったな」

 と、全く困っていないような顔でグラナートは呟いた。

「……何で来たんや」

「オルグレン班長がいないからじゃないですか!」

「……アーチボルトは」

「………彼は………」

 その時、グラナートの横を影が通り過ぎて行った。彼の目でもほぼ捉えられなかった。が、気付けば目の前にいたはずのローエンが消えていた。

「ひぁっ…………⁈」

「‼︎……セリン!」

「…………コレはおもちゃじゃねェんだから、脅す暇があったら撃て」

 セリンを押し倒したローエンは、彼女の銃を持った手と、口を抑えていた。

「……むーっ!」

「…………ローエン、びっくりしたじゃないか」

 グラナートは振り向いて彼にそう言った。振り上げていた刃を、ダミヤの首筋へと向ける。

「俺が動かなきゃ誰が動くんだよ」

「……まぁそうだけど」

 あれ、何を言おうとしたんだっけ、と思っていると。

「…………離せ……殺すんは俺だけで充分やろ…」

「!」

 ダミヤが呻くようにそう言った。

「……まぁ、僕はともかくローエンは快楽犯じゃない」

「…………!」

「頼むなら僕じゃなくて向こうじゃないかな?彼女は女の子だから希望があるかも」

「………」

「ね?ローエン」

 グラナートは振り向いてローエンに言った。

「…………さーね」

 ローエンはため息を吐いて、彼女の右手へと目を向ける。

(………指にタコ。銃を扱い慣れてる証拠だ)

 そしてなおこちらを睨み付けている目を見た。ローエンはへら、と表情を緩める。

「そーんな怖い顔したら可愛い顔が台無しよ?」

「………」

「あ、そーか、喋れないんだった」

 と、ぱ、とローエンは彼女の口から手を離す。すると、アナスタシアは大きく息を吸うと、言った。

「………貴方みたいな軽い男は嫌いです」

「……あらら」

 やれやれとローエンは肩を竦めた。

「つまらない子だな」

「貴方みたいな犯罪者とつるむなんて、気が知れません」

「…………」

 ローエンの目が、一瞬冷たくなる。しかしすぐに、元の柔らかい表情に戻る。しかし、先程とは少し、オーラが違う。

「………そうだね、でも俺は俺で、彼女達は彼女達で、そこには身分も何も無い。俺はそこではただの一人の男だ」

「…………」

「俺は確かに殺し屋だけど、誰でも見境なく襲いはしないし、彼女達に危害を加えやしないし、むしろ加えた奴を俺は絶対に許さない」

 細められた紫がかった黒の瞳に、アナスタシアは僅かに硬直する。深淵の闇のような、その瞳へ吸い込まれてしまいそうに思えた。

「……どうして殺し屋を?」

「…………気になる?」

 ふふ、とローエンは笑う。

「そんな大層な理由は無いよ。………ただ昔から、喧嘩ばかりしてただけ」

「……」

「なら君はどうして警官になんかなったりしたんだい?こんな危ない事もたくさんあるのに」

「!」

「俺がもっと凶悪な人間だったなら、君は今既に死んでいたかもしれない」

「…………!」

 悪魔のような囁きに、アナスタシアは瞬きすら出来ない。離れているのに、その闇のような瞳がとても近くに思えた。

「セリン‼︎」

「…………!」

 ダミヤの声に、アナスタシアはハッと我に返った。ぎっ、と彼女がローエンを睨み付けると、彼はつまらなさそうな顔をする。

「………折角傷付けないでいてあげようと思ったのに」

「……⁈……どういう意味ですか!」

「すっかり元気だ、もう効かないね」

 はぁ、とため息を吐くと、ローエンは笑う。

「でも、君は運がいい」

「?」

 次の瞬間、ひゅ、とローエンがアナスタシアの上から消えた。訳が分からず、アナスタシアは動く事も忘れてしまった。

 グラナートも僅かに遅れて動き出した。アナスタシアの頭上、先で悲鳴が上がる。

「う、うわあああああっ‼︎」

「逃げろアーチボルト‼︎」

 ダミヤが体を少し起こして叫ぶ。そして、痛みに顔をしかめた。

 エリオットはローエンと、グラナートがこちらへ向かって来るのを見て、思わず目を瞑って手にした銃を撃った。勿論のこと手応えは無い。………しかし、彼が襲われる事もなかった。

「…………?………⁇」

「エリオット!後ろ!」

「!」

 アナスタシアに言われてエリオットが振り向くと、二人が背を向けて走っていた。

「………追いま…」

「待て」

 立ち上がり、追跡しようとしたアナスタシアを、ダミヤは呼び止める。

「班長!」

「……深追いはやめとき、第一俺が勝手にした事や」

「ですが!」

「チャンスは今だけちゃう、それに、どう見たって今はこっちの方が不利や」

 いてて、と呻きながらダミヤは立ち上がった。

「!………オルグレン班長、血が…………」

「大した事ない、肋骨がいくらかイッただけや………」

 と、ダミヤは刀を鞘に納め、アナスタシアの方へ歩いて来る。

「………すまん、今度はちゃんと作戦立ててやろか」

「……は、班長がご無事で良かったです…………」

 エリオットがへにゃりと座り込んだ。

「…………お前、撃つならちゃんと目ェ開けんかい」

「………す、すみません……」

「下手したら俺やセリンにも当たっててんで」

「!」

「…………まぁ、どうやら上手い具合にリッパーのがはじいたらしいけどな」

「………え?」

「……多分、ハナっから奴ら、俺らをる気なんて無かったんや」

 と、ダミヤは頰を掻いてそう言うと、苦笑した。

「参ったなぁ、してやられたわ」

「……もう、勝手に行かないで下さいよ」

 アナスタシアが言う。

「…………あぁ、すまん」

 はぁ、とダミヤはため息を吐くと、歩き出す。

「………いってて」

「…………大丈夫ですか?」

「…まだコレの処理もせなあかん」

 と、彼は足元の死体を指差した。

「………………これは班長が?」

「ちゃう」

 なんでやねん、とそう言ってダミヤは、携帯を出した。

「あとは処理班に任せるさかい、お前らはゆっくり休んどき」

「怪我してるのは班長の方ですよ!」

「………せやけど」

「貸して下さい!後は私達でなんとかします」

 と、アナスタシアがダミヤの手から携帯を奪い取る。

「……怒らんでもええやろ」

「怒ってません!」

「…………」

 彼女の剣幕に何も言い返せず、ダミヤは空いた手を降ろした。

「………分かった。………後は任せる」

 と、ヒラリと手を振ってダミヤは歩き出した。

「……気ぃつけや」

「だ、大丈夫です!僕もいますから!」

「…………なぁんかなぁ」

 エリオットが力強く言うも、ダミヤは深いため息を吐いた。


#13 END


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