表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルフウェイ・ストーリー  作者: 魑魅魍魎
3/4

流石にショボすぎやしないか?

書きためている分が少ないので、この後から遅筆になります。

「マコト!おい!大丈夫か?起きろってマコト!」

「・・・・芳しいパクチーの香りがしますけど、ここはどうやら現実ですか・・・?」


頬に周期的な衝撃を感じて俺は目を開ける。

目の前には、先ほど文字通り"真っ二つ"になったはずのイツキさんの顔が、

さらっさらの黒髪ポニーテールをお供に引っ提げて存在している。パクチーの香りはイツキさんの両手から漂っているようだ。


どうやら、先ほどの白い空間から"龍の巣"に戻されたらしい。

ミサの言っていたことは本当のようで、確かにイツキさんが生きて動いて喋っている。

そこだけは感謝をしなければならないのが癪なことだ。


「お、やっと起きたか!店の中で気を失って倒れてたみたいで、

 目を覚ましたら目の前にマコトが倒れてたから死ぬほどびっくりしてな!!!」

「死ぬほどびっくりで済ませるより救急車呼ぶ方が先なんじゃないですかね」

「いやいや、最初は動揺しすぎてな・・・ドッキリなんじゃないかと思って平手打ちで起こそうとしてしまった」


なるほど、さっきの衝撃といい、顔周辺が痛い事といい、真実はそういう事か。

ていうかイツキさん、ドッキリだとしても容赦なさすぎでしょう。


「目立った傷も無かったし、そう思うのも無理はないだろ?」


まぁ、自分も真っ二つになって顔見知りの少年も真っ二つにされてる現実なんて普通はあり得ないからな。


「それでも目を覚まさないから、本当に死んでるんじゃないかと思って声をかけ続けていたと、そういうわけですか」

「そういう事。ドッキリだとしたら悪趣味だが、何か起きたんだったら後味悪すぎるだろ」


それはごもっともだ。

マコトはまだ少々ミサの言った通りに体が上手く動かせず、イツキの肩を借りて座席に座らせてもらう。


「それにしても、イツキさんが倒れるなんて、珍しいですね。何かあったんですか?」


俺は、無知を装ってイツキさんが真っ二つになった事を覚えているかどうかを探ってみる。


「ううーん、それがな、記憶があいまいなんだよ。休業中だってのに白いフードを被った変な客が来て、

 私を呼びつけたところまでは覚えてるんだけど・・・・」

「そいつに何かされたんですかね」

「かなぁ?わからんが、別に盗られたものもないようなんだ。強盗の類ってわけじゃなさそうだし」

「・・・正体が良く分からないってのは、怖いですね」


どうやら肝心の自分の死亡シーンについては何も覚えていないようだ。

俺はそれ以上の会話は無益と判断し、話題の転換を図る。


「そういえばイツキさん、お願いがあるんですが」

「なんだ?もうドッキリには引っかかってやらんぞ?」

「違います。少し手伝ってほしい事があるんです」


そう言って俺のリクエストを伝えると、イツキさんは怪訝な顔をしながらも準備を始めてくれた。

あの緑髪の少女、ミサが言っていた能力についての検証を始めなければいけないのだ。

あいつが最後に言っていたのが本当だとして、せっかく身につけた能力の意味が分からないのでは生き返った意味が半減する。


――――――――――――――――――――――――――――――――

『「中間」を司るようだね、君のチカラは』


消えかけたミサが最後に言い放ったのはそんな一言だった。


はっ?どういうこと?


脳内の疑問が顔全体に広がり口から漏れ出ていたのだろうか、そんなマコトを見てミサはニヤリと付け加えた。


『そんなことを言われても、私の頭に浮かんできた単語がそんなものなんだからしょうがないだろう。

 空を飛ぶとか、物を分解できるとか、電気磁気を操る力とか、非現実的な物を壊してしまうとか、魔術とか。そんな具体的なものじゃなくて。

 力を与えた張本人である僕を以てしても、キミの力は「中間」「真ん中」としか表現できない、曖昧模糊なもののようだ』



いやいやそんな。そんな抽象的な事言われてもワシ困りまんがな。

使い方がわからんだろうそんな能力!


『まっ、せいぜい頑張る事だねェ』


あっ、一気に光になって逃げやがった、ちくしょうめ。


――――――――――――――――――――――――――――――――


あいつの言ってた"中間"ってのはどういうことなのか理解するため、

俺はイツキさんに「まだ茹でていない麺」を数百グラムと秤を持ってきてもらった。


「こんなもんをどうするつもりなんだ?食べ物を粗末にしたら許さんぞ」

「多分粗末にはならないんで、安心してください。

 イツキさん、ちょっと一人前の分量を量りで測ってもらえますか?」

「おう、いいけどそんなもんはかってどうするんだ・・・・

 うーん・・・これくらいかな。茹でる前で丁度200gだ」

「ありがとうございます。次にちょっと向こうを向いてもらっていいですか?」

これから俺が能力を発揮するとして、何か視覚的に変化がある事を目撃されると、説明が面倒だ。

いっそのこと最初から見てもらわないほうが良い。

「面倒だなぁ・・・・。一体何をする気なんだ・・・・」

「いいからいいから」


そして俺は、自分の能力を試してみることにした。

『「中間」を司る能力』か・・・

自分の魂の在り方が能力に反映されるってミサは言ってたが、俺はそんな大層な人生は送っていない。

どうせそんな人生を反映したしょぼい能力なんじゃないか。

こういうわけわかんねー時は身近にある物でを使って

総当たりで能力を試していくのが意外と近道だったりするんだ。

とりあえず思いついたものを試してみてからでも遅くはない。


能力を発揮する方法は誰に教わったわけでもないが、マコトはなんとなく感覚的に理解していた。

恐らくはミサを取り込んだ時にそういう事も刷り込まれているのだろう。

臍の辺りに力を入れ、両手に液体を流すようなイメージを練り、麺の塊を握る。


すると、両手が青く光りだし、マコトの中を静電気にも似た衝撃が駆け抜ける。

突然の事に驚きつつも、マコトは続いて、手の中で青く光る麺を二つに分け、一方を秤に乗せる。

秤が示した数値は・・・・100g。

そしてもう一つも測ってみると・・・・100g。


うん?なんだ?マジで半分を丁度測れるだけの能力かコレ?


マコトの能力が一つ露わになった瞬間だった。


「おーい、もういいのか?もう振り返って大丈夫か?」

「イヤ、もうちょっと待ってくださいイツキさん、すぐ終わりますから」



流石に重量を半分に分けられるだけの能力だとしたらショボすぎる。

それって能力じゃなくてもう一般人の特技じゃないか。


マコトはすがるように自分の中の能力の可能性を見出そうとする。

麺を一本手に取ってみる。

両手に力をこめ、能力を発動させる。マコトは両手で麺をちぎった。


そして目の前で2本になった麺を並べてみる。

長さは・・・・等しい。


おお、どうやら俺の能力は「長さを半分に分ける」ことも出来るようだ!やったね!!


ってふざけんなよ!流石にショボすぎじゃねーか!

なんとか他に応用する方法はないものか・・・・


何度も実験を繰り返す。

「いい加減に振り返らせてくれ」

と、イツキさんがしびれを切らすまで実験を繰り返したが、結局大した事は出来なかった。


現時点での能力は、「物の重さや長さをちょうど半分に分けられる」だけの能力だという厳しい現実に、

俺は打ちひしがれつつも、「スタッフが後でおいしくいただきました」を地で行くべく

実験に使った麺で作った汁無し担々麺を頬張るのだった。


感想等、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ