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始まりの日 二日目

魔導師の街、ウィザードの双剣士の少年アルトル。親友で魔導師の少年アハトに連れられ、街から少し離れた草原に来ていた。

いつものように、お遊びの模擬戦をやっていると、街に近づく地響き。

異変に気付いた時には大変な事に!

アルトルとアハトの実力が試される!

 いつも模擬戦をしている草原に来ると、アハトが空を見上げていた。特に気にすることもなくほおっておくと、耳元でパチンっと何かが弾けた。

 思わず耳を押さえてアハトのほうを見ると、白い石がついてる杖を構えていた。だんだんその石が透明に変わっていくところ見ると、あの音はアハトの魔術だっていうことだ。

「いきなり何しやがる」

「ツッコんでくれてもイイだろうが!」

 つまりこいつは逆ギレで攻撃したってことか。そうかそうか。なら文句はないな。

「覚悟しやがれ!」

 腰から双剣を抜いた。蒼白の刀身を見ると、アハトは慌てた様子で杖で受け止めた。少しよろけて後ろに数歩下がった。その不安定な足を自分の足で引っかけると、簡単にこけてしまった。

 けど、逃げ足は速いもんで捕まえようとしたら、もう手の届かないところまで逃げていた。もう一度体制を崩しに行こうとすると、アハトの杖の石、《マナ石》が今度は赤に変わった。炎魔術だ。

 魔導師たちは必ずマナ石を持っている。魔術を使うときに自分の魔力を増幅させる為の必須アイテムだ。持ち方は人それぞれで、杖が一番無難だ。けど、それだけじゃ術は発動しない。もう一つ、《文字》が必要だ。マナ石から出る光で術に関わる単語を書く必要がある。一つ二つは下級魔術。三つ四つは中級魔術。五つ六つは上級魔術とレベルが上がる。

 アハトは今は中級魔術までしか使えない。そんなに怖くないはずだ。

「って、ウソだろ!?」

 あいつは五つ目の文字を書いていた。いつの間に上級魔術なんか覚えたんだか。

「この前までのオレだと思うな…よ!」

 勢いよく魔術を発動したのはいいけど、ポンッと音を立てただけで何も起こらなかった。後天的な魔術かと思って警戒してたけど、そんな心配をよそにマナ石は透明に戻ってしまった。

 その場の空気が静まった。ハッとしてアハトの前まで行って、呆然としていたところに剣を突きつけると、降参してくれた。

「にしても、あそこで失敗するとは…」

「オレも驚いた。思わず動き止まっちゃったし」

「あ~あ、今日も負けか。いつになったら勝てるんだろ」

 愚痴のように文句を言いながら、その場に倒れこんだ。オレも双剣を腰の鞘に直してその場に座った。アハトをなんとなく見てみたら、目を見開いて固まっていた。

「お、おい。どうしたんだよ」

「……赤い」

 それだけを言って、空を指差した。それにつられて見上げると…。

「…赤い……」

 おかしい。護り樹の光はいつも明るく柔らかい水色だ。なのに、今は緋色に近い赤になっている。何かが起きたんだ。オレたちの、この街の護り樹に。

 頭で考えるよりも、体が動いていた。素早く立ち上がると、いつも以上にスピードを出して護り樹の根元にある館まで急いだ。その後ろをアハトがついて来てる事もわからなかった。


 館の前には見知った顔ぶれがたくさんあった。その中に街の中心人物のリガサムさんがいた。

「リガサムさん!どうなって…」

「アルトルか!どうしたもこうしたも、中に子供が入り込んでしまってな。二人大人が入って連れ戻そうとしたんだが…」

 そこで言葉を濁して目を泳がせた。

「まだ子供たちも戻って来てないのかよ」

 周りの人たちも心配そうに護り樹を眺めていた。こんな姿の護り樹を見るのだって初めてだし、中に人が入り込んで戻ってこれない事も初めてだ。入れたとしても、大体すぐに戻って来れる距離までしかなかったはずだ。昔入ったことがあるから。

「どうしたものか…」

「……オレが行くよ」

 そう言うとリガサムさんはこっちを見てきた。

「本気か?」

「ああ。こんな護り樹見たことないからさ、剣使えるオレが行ったほうがいいだろ」

 そう言って、返事も聞かずに近づいていくと、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、肩で息を整えてるアハトがいた。

「ま、まて…お、オレも行く」

「…無理するなよ?」

「お前が全力疾走するからだろ!追いかけるこっちの身にもなれよ!」

 必死になってる姿に少し笑えて、アハトの方を見た。

「二人なら大丈夫だろ」

「そうね」

 次々に賛成の言葉を投げかけてくれる事に少し驚いた。

 目を丸くしたままアハトと顔を合わせると、アハトも同じ顔だった。軽く笑ってどちらからともなく、片手でハイタッチをして赤く染まる護り樹の中に入っていった。

はい。短いです。

アルトルは今回、アハトの名前を一切口にしてません。

すべて心の中で済んじゃいました。

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