表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Days  作者: 藤井 真尋
8/8

ACT.8『姫の憂鬱2』


「雄平…?」


掴まれた腕がじんじん痛む。

信号はとっくに赤に変わってしまい、車が行き交っている。

雄平の突然の行動に、内心ものすごく戸惑っていた。

一言も声が出ない。


そんな私をじっと見ている。

が、呆れた様に溜め息をつくと、私の腕から手を離した。


「…マジ説教な」


「は?」


なに、よく分からない。

雄平が何を言いたいのか。


「お前は慶の彼女だろ?」


「…なに突然」


「違うの?」



“違わない”そう言いたいのに、なぜかその一言が喉につっかえて出てこない。

雄平と目を合わせてられなくて、俯いた。

理由なんてとっくに分かってる。


「じゃあ俺が代わりに言ってやる」


さっきよりも優しい声が頭に響いた。


「お前は慶の彼女だよ」


情けなかった、自分が。

ものすごく。


「だから、もっとわがままになれ。わがままって言っても、お前の場合、彼女が普通にしてもいい事我慢してるからね、わがままって言えるか分かんないけど」


だけど、それと同じくらい温かいものがぐっと込み上げてきて、胸が苦しかった。


「…てか、聞いてる?」


雄平のその言葉で慌てて顔を上げた。


「ご、ごめん。聞いてるよ」


雄平は“あ、涙目”と、私の顔を指差して笑った。

いつもなら絶対言い返すのに、そんな気になれなくて、口から出た言葉は、

「ありがとう雄平」


このタイミングかよ、と、雄平はまた笑った。


そう、理由なんてとっくに分かってる。

『彼女』という名ばかりの、形だけの存在。

実際は、つきあう前とほとんど何も変わっていない。


会いたいって言えない。

好きって言えない。


身体の繋がりも、心の繋がりも、なにもない。


こわかった。

慶にどう思われるのか。

やっと側にいれる理由を手にした幸せが、私を臆病にしていた。

でも、もうそれは終わりにしないと。


姫の憂鬱は、もう終わり。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ