ACT.7『姫の憂鬱』
ACT.8『姫の憂鬱』
一人、取り残されるお姫様。
そんな話し、聞いた事がない。
「じゃあね」
「ん、またな。気をつけて帰れよ」
「うん。バイバイ」
無理矢理笑顔を作って、軽く手をふる。
我が儘は言っちゃいけない。
雄平にも軽く言葉をかけると、慶は行ってしまった。
隣りに立ってる雄平の視線が痛い。
だけど、気づかないフリをして、夜の闇に消えていく慶の後ろ姿を、私はずっと見ていた。
「もうちょっと一緒にいたいとかさ――」
「へっ?」
突然口を開いた雄平につられて、反応してしまった。
「いや、だからさ。もうちょっと一緒にいたい、とか言っても良かったんじゃないの?」
それが出来たら苦労はしてないよ。
「言えたら言ってますー」
透のバイト先をでた店の前。
“彼氏”を見送った後、私と雄平は特に予定もなく、ぶらぶらと歩きだした。
「俺で悪かったな」
「え?」
雄平はいつも唐突だから困る。
「横にいるのが俺でさ」
「なんで雄平が謝るのよ、…なに、私そんなに惨め?!」
悲惨な…というか、変な顔になってたんだと思う。
私を見るなり笑いだした。
失礼な奴。
だから腕をぶってやった。
「イテッ!いや、惨めとかそんなんじゃないし。ただ、我慢はよくねえぞ」
「我慢なんかしてないよ。…多分」
「どっちだよ」
雄平の苦笑いにうまく返せなかった。曖昧に笑った表情を向けるのに精一杯。
ほんとはもっと一緒にいたかった。
この後誘ってくれるんじゃないかって期待してた。
気合い入れて緩く巻いた髪も、新しく買ったワンピースも、なんだか今はむなしいだけ。
自分だけを見てくれる事を、どこかで期待しる自分に気づかされる。
「雄平、慶ってさぁ…」
「ん?」
「冷たいよね」
雄平はなにも答えない。
ただ、隣りで真っ直ぐ前を見て歩いている。
「でも、優しいの。冷めてる雰囲気は変わらないんだけど…肝心なとこで優しいから」
「うん、根はそういう奴だな。
ちょっと歪んでるけど」
「歪んでる?」
雄平はまた何も答えない。
そのままあまり会話もなく、二人は夜の街を歩く。
大きな交差点に出ると、ちょうど信号が青に変わった。
雄平とはここでお別れ。
「じゃあ私こっちだし、またね」
雄平に手をふって信号を渡る。
――はずだった。
渡ろうとした瞬間、雄平に右腕を掴まれ後ろに引き寄せられた。
おもいっきり油断していた私の身体は勢いよく雄平にぶつかった。
「ちょ…!なに!?」
振り返って見上げた雄平の顔は、こわいくらい真剣だった。
遅くなりました。
言い訳はしません。
読んでる方、ごめんなさい。更新頑張ります!!