表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Days  作者: 藤井 真尋
2/8

ACT.2『電話、そして訪問者』

ACT.2『電話、そして訪問者』






全ての関係に名前がつく世の中。




いつの間にか眠ってしまったみたいだった。

部屋の中が薄暗くなっている。

ベットの上で横になったまま、近くにあった携帯を手に取り時間を確認する。

「五時かあ…」


ちょうど二時間程眠ったことになる。

部屋の掃除で久々に身体を動かしたせいだろうか。

今日は、あるはずだった二限目の講義が休講になった。

あいた時間を家の掃除に使うなんて色気がない。我ながらそう思う。


起きる気がしなかった。もう一度携帯に目をやる。

メールが一件受信されていた。

由香子からだ。


内容は―――…慶のこと。

今日、あいつと会う約束しといて良かった。

そう思った。


由香子にメールを返すと、両腕をぐっと上にあげ大きく伸びをする。


あと三十分程で慶が来る。

差し入れの一つでも無かったらしばいてやろう。うん。

ベットから起き上がると、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し喉に流し込む。

身体が潤っていくのが分かる。


部屋の電気をつけ、カーテンを閉めた。

慶が来る前にシャワーでも浴びよう。

眠気も飛んで身体もスッキリするはずだ。

面倒なことは今は忘れよう。



上の服を肩まで脱いだちょうどその時、携帯の着信音が鳴った。

めんどくさかったのでそのまま携帯を取った。

「はい、もしもし」

「あー透?今って大丈夫?」

雄平からだった。


「めずらしい…雄平からかかってくるなんて」

「だろうな」


雄平の苦笑いが目に浮かぶ。

携帯をほとんど使わない雄平は、友達の中でも貴重な存在だと思う。

というより、この現代の中においてめずらしいかな。

『会いたいと思えば会えるし、相手のこと考えてたら偶然会ったりするんだよ。

お前らはその小さな機械に頼ってるから、第六感が鈍るんだ』

前に雄平が言っていたことをふと思いだした。

雄平はちょっと変わってる。

「で、どうしたの?」

「え、あー…」

「――…由香子?」


少しの沈黙のあと、

「うん、まあ。さっきまで一緒だったけど、

…あいつ最近さ微妙に元気なくね?」


…鋭いなあ。


「そうかなあ〜」

「由香子のことだし…お前なんか知ってんのかな〜って」


「さあ、なにもないと思うよ〜。心配しすぎなんじゃない?」


…知ってるけど。

何となく、言えなかった。

「…そっか。分かった。急に悪かったな、ありがと」

「本人に聞けばいいのに。元気なくね?って」


「そんな彼氏でもないのに聞けるかよ」

「いや、普通友達でも聞くけど…」

おかしくて笑ってしまった。


「俺は不器用なんだよ」

「知ってる」

“黙れ。じゃあな”そう言って雄平は電話を切った。

なんて簡潔な内容。

小さくため息をつく。


てか、中途半端に服ぬいでるこの格好をなんとかしなきゃ。

風邪ひいたら困るし。


「お前、風邪ひくよ」


――――…ん?


声がした方に振り返った。

「別に俺はそのまんまでもいいけど」


口角をふっとあげてこっちを見ている慶がいた。

あまりの驚きに声が出ない。


“あ、合鍵か。”

なんて冷静にあたまの中で考えてる自分がいたりして。


――…いやいやいやいや…これは……


手に持っていた携帯が床に落ちた。


そしてようやく声が出た。

とっても大きな声が。




ねえ、慶。ぶっ殺すよ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ