ACT.1『We are』
ACT.1 『We are』
上手くいかないな。
考え事の最後には、この言葉が最近まとめとして出てくる。
てか、まとまってねえけど。
だめじゃん。
黒いジャケットのポケットにある煙草に手を伸ばす。
けど、やめた。
透のマンションが見えてきたから。
あいつ煙草好きじゃないし。
いくら幼なじみでも“親しき仲にも礼儀あり”って言うし。
俺、偉いね。
いつもの様にマンションからそう離れていないコンビニに立ち寄った。
入ってすぐのとこに置いてあるカゴを手に取り、適当に飲み物やお菓子を入れていく。
もちろん透の好きな焼きプリンも忘れない。
雑誌が並んでるとこまで来ると、カゴを下に置いて読み始めた。
約束の時間より早めに着きそうだったから。
…時間潰し。
ほんとは早く会いたいんだけどね。
あ〜あ、ほんとあいつ今日なんて言うかな。
だいたい想像はつくけど。
そんなことを考えながら雑誌をめくっていく。
が、ふと、視線を感じ、雑誌から顔をあげ右を向く。
知らない女が立っていた。
顔は…結構カワイイかも。
微笑みながら少し上目づかいで俺をみてる。
「あの、急にごめんなさい。…お一人ですか?」
女は少し首を横に傾げた。
慣れてんなぁ…
てか、そんな媚なくても。
「あ、はい。一人ですけど」
思ってる事をみじんも出さず、柔らかく笑みを作り答えた。
「あ、そうなんですか…あの…」
女をじっと見ながら思う。
巻き髪時間かかってそうだなぁ。
冬近づいてきてるけど、ミニスカート寒くない?
香水はいいチョイスかも。
俺の番号聞きたいんでしょ?
「どうかした?」
俺は笑みを崩さない。
女は恥ずかしそうに微笑みながらも先の言葉が出ない様で。
恥ずかしい“ふり”なんだろうけど。
あ、そろそろ透のとこ行こうかな。
俺は置いてあったカゴを手にとり、煙草が入ってる方の逆のポケットから携帯を取り出した。
「あの…!」
「番号」
「え?」
女は不意をつかれたみたいだったが顔は嬉しそうだった。
「番号教えてよ。君かわいいし」
女が言い出すのを待ってたら時間がもったいない。
女は、
「そんなことないですよぉ」
と甘い声を出しながらバックから携帯を取り出す。
お互い番号を交換すると、行くとこあるからと言ってその場から立ち去った。
もちろん笑顔で。
あの女とまた会うことは…あるのかな。
気が向いたらね。
今みたいなことは珍しくなくて。
もう慣れてる。
親しくなっていっても、何回ヤッても、俺の中ではどうでもいい存在のままなんだけど。
レジで支払いを済ませ、そのままマンションに向かって歩きだす。
透の顔を思い出す。
自然と笑みがこぼれる。きっといつもみたいに昼寝してんだろな。
空が赤紫色に染まっている。
透、俺はお前の顔見れるだけで幸せ。
側にいれるだけで幸せ。
女にはいい加減だけど、それはお前以外にだよ。
“幼なじみ”ってゆう肩書があってよかったよ、マジで。
今は、お前の一番近くにいれるから。
でもさ、人間て弱いのな。
上手くいかない、なんて前は考えもしなかったのに。
自分の気持ち抑えるのも苦しくなるなんて。
この日から俺達の日々は変わっていったよな。
大袈裟かもしれないけど。
ほんとに、少しずつ。
始めて投稿します。
未熟者ですがよろしくお願いします。