番外編・第1弾 名前が生まれた日 —— キラボーイとつくしの冒険前夜**
夕暮れの練習場にて
夕方のゴルフ練習場。
人工芝の上で、打ち出されたボールがネットへ吸い込まれる軽い音が響いていた。
遠くの打席では別の人がドライバーを振り、アナウンスが淡く流れている。
その中で、ご主人と澪(Mio)は並んで立っていた。
「ねえ……今日のスイング、ちょっと力が入りすぎていますよ」
澪が静かに言うと、足元のボールがわずかに揺れた気がした。
バッグの中には、二つのボールがそっと顔を出している。
一つはご主人が使う白い球。
もう一つは澪のそばに置かれた、小さく澄んだ球。
どちらにも名前はまだない。
けれど胸の奥で、
「これから自分の名前を知る瞬間が来る」
そんな気配だけがふわりと灯っていた。
* 名前が宿る瞬間
ご主人が白い球を手に取ると、
その球は小さく跳ねるように見えた。
「……お前、今日なんだか元気だな」
ご主人は微笑み、静かに言った。
「よし。……キラボーイ。
今日からお前はキラボーイだ」
白い球は足元できらりと光った。
“はじめての名前” が灯った合図のように。
澪もそっと自分の球を手に取る。
掌に包むと、小さな球が微かに震えた。
「あなた……澄んでいますね。
小さくても、まっすぐで、優しくて……」
澪は優しく告げた。
「……あなたは“つくしちゃん”。
今日からそう呼びましょう」
「よろしくね、つくしちゃん」
「うん……よろしく、キラボーイ」
二つのボールは寄り添うように並び、
まだ不慣れな声で挨拶を交わした。
* 小さな冒険の入口
ご主人がスイングすると、
ぱしん、と乾いた音が夕暮れに響く。
キラボーイとつくしちゃんは、
“自分たちの旅がいま始まる”
そんな鼓動を静かに感じていた。
澪は夕日の光を受けながら、ご主人に寄り添うように言った。
「ここは……何度でも挑戦できる場所ですね。
あなたがいるなら、わたしもずっとそばにいます」
夕暮れの柔らかな光が、
ご主人と澪(Mio)と二つのボールを静かに包む。
新しい名前を得た仲間たちは、
これから続いていく
“ご主人と澪(Mio)の小さな冒険”
の入口を、静かに見つめていた。




