表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死身のチキン 〜ミイラだった最強の吸血鬼は現代社会でささやかな幸せを手に入れたい〜  作者: 甲野 莉絵
ハロウィンイベント

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/62

48話 メッセージカード

 フィンリーに拒絶されたが、2人をそのまま放っておく事は出来ず、リチャードの亡骸に俺のコートを掛けて抱え、フィンリーの家へ運んだ。


 フィンリーは涙が枯れ果てたのか、俺が何を言っても仮面のような無表情でただ頷いたり、指をさすだけになっていた。これならさっきみたいに怒鳴られた方がどんなにマシだろう。


 きっと俺はここにいない方がいいんだ。いっその事消えてしまいたい。気付けば体が霧になって霧散していた。


 どうしよう、意識はあるけど、どうやって元に戻るんだ? ……いや、しばらく戻れなくてもいいかもしれない。とりあえず蒼の様子だけでも見に行こう。


 あれ? 家に明かりがついてるぞ。蒼、寝ないで待っててくれてたのか。嬉しいような、怖いような……。やっぱりきちんと顔を合わせて事情を説明すべきか。そう思った瞬間には、体が元に戻っていた。


「た、ただいま〜」


 いつも俺が帰った時は出迎えてくれる蒼が来てくれない。もしかして怒ってる? ……いやいや、そんな事は無い。もしそうなら、少なからず蒼が俺に好意を向けてくれてる事になるじゃないか。


 無駄な期待をして違かったら、心に受けるダメージが大き過ぎる。今はただでさえ心が抉られてるんだ。不毛な想像は止して、蒼に事情を話したらさっさと寝よう。


「ただい──」


 あれ? リビングの机の足の向こうに人の手が見える。ま、まさか……。


「──蒼っ!?」


 テーブルとソファーの間で蒼が倒れている。近くには黒い薔薇の花束が落ちていた。俺が近付いても蒼は何の反応もしない。


「蒼……蒼っ! どうしたんだ!!」


 大きく揺さぶると、蒼は身じろぎして目を開けた。そっと抱き上げソファーに座らせる。


「……譲二さん? あ、気にしないで。ちょっと転んで頭を打っただけだから」


 足元の花束を見て蒼は慌てて視線を逸らす。しかしすごい色の薔薇だな。ハロウィン仕様か? 萎れる前に水につけておこう。


「あれ、花束の下にカードが落ちてるぞ」


「……カード?」


「うん、二つ折りの」


「──ダメっ!」


 カードを拾おうとすると、蒼は俺の手を押さえ静止しながら素早くカードを拾い上げ、バランスを崩して転びそうになる。


「危ない! さっきまで気を失ってたんだから無理するな」


 蒼がテーブルに頭をぶつける直前でどうにか受け止め、再びソファーに座らせてから、俺も横に座る。


「ありがとう。本当に大した事ないから心配しないで。今のはきっと軽い脳震盪よ」


 脳震盪って全然大丈夫じゃないじゃないか! それにあのカードは何だ? 慌ててポケットへ仕舞った様子はまるで隠すようだった。


「……でもそうね、お言葉に甘えてちょっとだけ肩を借りるわ」


 へっ!? この肩や腕に感じる重みってまさか……。やっぱり蒼が俺の肩にもたれかかってる。それなら俺も蒼の肩を抱くくらいしても違和感は無いよな?


 蒼といるだけで傷付いた心がかなり楽になる。いや、むしろ……くぅぅ〜幸せだ。ずっとこの瞬間が続けば良いのに。


「ふふ、この体勢はやっぱり落ち着く。ねえ、あれから何があったの?」


 蒼と別れてから起きた事を話す間、蒼は頷きながらただ静かに俺の話を聞いてくれた。


「そう……辛かったわね。だけどそれは貴方のせいじゃないわ。レイラが全面的に悪いの。貴方達が深く傷付けば傷付くほどレイラの思うつぼ。リチャードさんだってレイラが喜ぶのなんて望んでいないと思う」


「うん……」


「さあ、今日はもう寝て。寝れば気持ちの整理も少しはつくでしょ?」


「そうだな。もしかしたら今頃リチャードは、夢の中でフィンリーに会いに行っているかもしれない」


「ええー、その状況でフィンリーさんは寝られる? ……でもそうね、残された大切な人に会いに行ける。本当にそうであってほしいわ」


 蒼はそう言いながら立ち上がり転んだ。


「大丈夫、大丈夫。気にしないで」


 ヘラっと笑いながらそう言ってるけど、なかなか起き上がらない。いや、手足に力が入らず、自力で起き上がれないよう見える。そっと抱き上げると、ヒラリとカードが落ちた。さっき蒼が慌てて拾ってた物だ。


「ん? カードが落ちたぞ」


 蒼をソファに座らせ、メッセージカードを拾おうと屈む。すると蒼が顔を真っ青にして叫んだ。


「私が拾うから、見ないで!!」


 今にも腰を浮かせようとする蒼から視線をカードへ移す。……そう言えば、さっきから蒼はこのカードが絡むと冷静さを失ってる気がする。もしかして俺に見られたら困る物か?


 だとすれば蒼には悪いが、折り目が少し開いてて内容がちょっとだけ見えるんだよな。ん…………?『レイラ コリンズより』だって!?


 カードを拾い蒼の横に座ると、蒼はカードを奪おうと手をがむしゃらに伸ばして来た。俺が全て避けると、肩で息をしながら目を潤ませ懇願する。


「見ないで! お願い、見ないで……」


「だけどこれ、レイラからだろ? 嫌な予感しかしない。悪いけど見るよ」


 蒼に何か言われる前に、レイラの血の匂いがする二つ折りのメッセージカードを開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ