表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死身のチキン 〜ミイラだった最強の吸血鬼は現代社会でささやかな幸せを手に入れたい〜  作者: 甲野 莉絵
ハロウィンイベント

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/62

43話 仮装コンテスト

「こんばんは〜。テプンルバー仮装コンテストのお時間で〜す。皆さん、震え上がる準備はできていますか〜?」


 テントの外からは司会役の女性が軽快なトークで会場を盛り上げる声や、ハロウィンをイメージした恐ろしげなBGMが聞こえる。


 薄暗い控え室代わりのテントの中に集まった出場者達は、みんな由緒正しき化け物の仮装をしてた。楽しむ感じの日本の仮装コンテストとは違って、お化け屋敷として入場料を取れそうなクオリティだ。


 遠吠えの練習をする狼男に、のそのそ歩くフランケンシュタイン、魔女は何かブツブツ呟いてるし、骸骨は崩れ落ちる練習をしてる。ミイラ男はアワアワしながら解けた包帯を集めてて、少し親近感が湧くな。


 それと、俺以外にも吸血鬼の仮装をしている人が居た。その人は映画の中とかでよく見るイメージだ。血糊が垂れた口元でこっちを見てニカッと笑う。歯まで血糊で染まってて怖い……。でも俺の牙より立派で逆に不自然さを感じた。


 みんなやっぱり優勝を狙ってるのか、気合い入りまくりでギョロリと他の出場者を見るもんだから、迫力がとんでもない。本物の吸血鬼の俺が1番ビビってるくらいだ。


 ドキドキしてるうちに最初の出場者が呼ばれて出て行った。俺だって負けてらんないな。吸血鬼の人に握手とアドバイスを求めてみた。


「こんばんは、凄い迫力ですね……。俺も血糊とかやっておいた方がいいんでしょうか?」


「おお同志よ、ありがとう。もしかしてこのコンテストは初参加かい?」


「はい」


「1回しか言わないから良く聞けよ。このコンテストは審査員がつける点と、観客の盛り上がりで採点される。舞台に上がる時が観客へのアピールタイムだ。あんな風に」


 テントから外を覗くと、狼男が遠吠えを上げ、わっと歓声があがった。


「僕達は吸血鬼だから司会者に噛み付いてアピール出来ればいいんだが、あいにく司会者は舞台から少し離れた審査員席にいるからな。おまけにここの観客は仮装を見慣れているからシビアだ。僕らはこの牙を見せなければ、ただのアンティークファッションの顔色が悪い人間という評価しか受けられない」


 テントから出て行く魔女を見送りながら、思わず自前の立派な牙に触れる。この体になって初めて牙が生えてて良かったと思えた。


「そしたらあの魔女の人とかも大変そうですね」


「いや、彼女は去年の優勝者だ。手持ち花火を上手く使ってアピールしていたが……。うーん今年の煙玉は失敗だな」


 煙が多過ぎて魔女の人の姿がイマイチ見えない。俺の目でも見えにくいんだから、人間の目じゃステージの上は何も見えないだろうな。もくもくする舞台を見ながら頷いてると、スタッフが顔を覗かせた。


「エントリーナンバー5のジョージケリー3.5世さぁーん、スタンバイをお願いしゃーっす」


 えっ、次俺だったのか? こんなもくもくの中でやる訳無いよな? もしそうなら負け確定じゃん……。


「じゃー、ここで司会者のアナウンスがあるまで待っててください。ご自分のアピールが終わったら解散っす」


 スタッフはメモを見ながらそれだけ言うと去って行った。この煙についての説明は無いのか? どうしよう、こんなもくもくした中でステージに上がっても、人間の目だと碌に見えないぞ。


 ん? 人間の目だと見えない……そうだ! この煙に乗じてステージの端にあるポールの上に立ってみるか。あれくらいの高さなら飛び乗れそうだ。


 そしていい具合に煙が晴れたら、あそこから飛び降りてステージに立とう。蒼のため、久々に城へ行くためにも目立たなきゃ。ちょっと風が吹いて来てる、善は急げだ。


「続いてはエントリーナンバー5番、ジョージケリー3.5世さんの登場です! ……準備に時間がかかっているのでしょうか? ジョージケリー3.5世さん?」


 会場がざわついてる。ちょうど煙が薄れて、さっきまで俺が立ってた場所に誰も居ないのが、司会者や観客にも見えたらしい。ここで何か吸血鬼っぽい痛い事を言えば絶対目を引く。


「──今宵の食糧はどの者にしようか。どれ、もう少し近付いてじっくり吟味するとしよう」


 どうだ? これならいい具合に痛いから盛り上がるよな? うおっ、スポットライトが眩しい。それなら──。


 元祖ジョージになりきって腕を組み、片手を顎に当てる。歯を見せながら悪役じみたニヤリ笑いを浮かべ、偉そうにしてっと。おお、すごい注目と歓声を浴びてる。ちょっと快感。


 腕を組んだままポールを蹴って飛び降り、片足で着地する。あとは勿体ぶって観客を見回してから鼻で笑い、尊大な雰囲気でステージの真ん中まで無駄にゆっくり歩けば──。


 へへへ〜大成功。耳が痛いくらいの歓声だ。審査員席に居るフィンリーの目が点になってる。どうだ、驚いたか! 俺だっていつもチキンな訳じゃないんだからな?


「圧巻の登場でしたね! ダークホース現るです。エントリーナンバー5番ジョージケリー3.5世さん、ありがとうございました〜」


 ステージから下りると、途端にどっと恥ずかしさが押し寄せて来た。うぅ、あんな事やんなきゃよかった。自分の痛過ぎる言動を思い出すだけで、恥ずかしくて震えが走るんだけど……。は、早く着替えよう。足早に歩いてると、蒼がかけ寄って来た。


「今まで騙されていたわ。本当の貴方は別人──いえ、別吸血鬼だったのね? なーんて、お疲れ様。迫真の演技だったわ」


「うぅ〜、あんな厨二っぽい事を言っちゃって、穴があったら入りたい……」


 蒼に見られてるのは分かってたけど、面と向かってアレの感想を言われた恥ずかしさで、膝の力が抜け、しゃがみ込む。顔が熱い、火が出そう。


「ええ……そんな、泣くほど?」


 えっ……俺泣いてるのか? ヤバい、恥ずかしさが限界突破しそうだ。


「泣いてない。赤いカラコンが痛いんだ。もう外す……。それにこの格好は落ち着かないから着替えたい」


「はいはい、パブに戻りましょうか」


「うん……」


 パブに戻り化粧を落として、カラコンを付け替え、着替えてから外に出た。もう仮装コンテストは終わったかな? まあ審査結果は1週間後に出るらしいから、緊張する事なくデートの続きを楽しめるぞ。


「次はどこ行っ──」


 蒼の方を向いた瞬間、心臓が跳ねた。蒼の向こう側、人混みの奥にいる人形のような姿の女と目が合うと、女はこちらへ来いと言った風に顎をしゃくる。……レイラだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ