表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死身のチキン 〜ミイラだった最強の吸血鬼は現代社会でささやかな幸せを手に入れたい〜  作者: 甲野 莉絵
同居人を目指して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/62

37話 続・招かれざる客2

 俺が洗いざらい全てを話す間、フィンリーはほとんど何も言わず聞いていた。


「なるほど、それでこの家に転がり込んだと言う訳ね」


「はい。それで……蒼への疑いは晴れますか?」


 フィンリーが答える前に蒼が頭を下げる。


「今まで嘘を吐いていて申し訳ありませんでした。ですが、彼は人の弱さを理解している心優しい吸血鬼です。どうか見逃していただけませんか?」


 蒼、ありがとう。今後どうなるか全然予想は付かないけど、俺も誠心誠意頭を下げよう。


「そう、でも嘘を吐かれてアタシとても残念だわ。血の匂いが苦手な吸血鬼なんて居る訳ないでしょう!」


「そう言われても……。話した通り生臭い匂いを生理的に受け付けない体質なんです」


「だったら証拠を見せてみなさい。その人工血液とやらをね!」


「今日は無いんです。あれは研究段階だからそう何本も家には置いておけないそうなんですよ。そうだろ?」


「ええ、明日来てくださればお見せ出来ますよ」


 蒼も援護射撃してくれてるけどマズイぞ、話してる俺でもかなり嘘っぽく聞こえるくらいだ。


「そう……それならアタシがここでカタをつけてあげる!」


 フィンリーはそう言うとスッと立ち上がり、銀の短剣を抜いた。クソッやっぱりこうなるのかよ! 俺の気持ちに勘づいてるから、碌に反撃出来ない事を見越して、蒼が居るここでそれを抜いたのか?


 ソファーから飛び退き、窓の近くへ駆け寄る。一か八かで外へ逃げるか? いや、日光の下では碌に動けずフィンリーにあっさり捕まってお終いだ。


「さあ、見てなさい!」


 フィンリーは目を爛々と輝かせ銀の短剣を振り上げると、あろう事か自分自身の腕を切り付けた。パックリと開いた傷口から血がドクドクと流れ出て、ブワッと血生臭い匂いが部屋の中に充満する。


「なんて事してくれ──ゲッホ、ゴホッ!」


 久々に嗅いだ濃い血の匂いに咽せて何も言えない。咽せる度に体が勝手に息を吸うから、否応なしに悪臭を吸い込む事になる。息を止めて超特急で換気扇を点け、悪臭の元を断つためフィンリーの腕をガシッと掴む。


「ほら来たわぁ〜、やっぱり本能には逆らえないのねぇ?」


「馬鹿な事言ってないで、早く自分で傷口をくっ付けるようにふさげ!」


 鍋つかみをはめた手で、フィンリーが持つ銀の短剣を取り上げ、蒼に渡す。それから人差し指と中指にたっぷり唾を付けフィンリーの傷口に塗り付けた。みるみるうちに傷口が塞がってゆく。


「お前は馬鹿か!? ……じゃなかった、2度とこんな意味の無い真似はしないでください」


「吸血鬼の唾液に傷口を塞ぐ効果があると知ってたけど、不死の王にやって貰えるなんてぇ〜」


 何だよ、反省してないだろ? 俺が血の匂いで寄って来る事を身をもって証明しようとするなんて、すごい仕事熱心だと思うけど、到底理解出来ない。手を2度洗いして戻って来ると、蒼がちょっとむすっとしてた。


「どうして私が包丁で指を切った時は普通に絆創膏を巻くだけだったの? あの後、地味にヒリヒリして痛かったんだけど」


 えっ、ええ〜、確かに傷の治りはかなり早いけど唾って汚くないか? 俺に付けられて嬉しいのか? 蒼って時々ズレてるよな。


「えっ、アオイさん不死の王の前で指を切ってたの? それでしゃぶりつかないって、本当に血の匂いが苦手なのねぇ。初めはアオイさんが不死の王の餌で、催眠術を掛けられているのかと思ってたのよ」


 餌ってなんだよ、餌って。レイラじゃないんだぞ。フィンリーはそんな俺を見てにまっと笑う。


「そっかぁ〜、唾なんてつけたら『貴女は俺の──」


「わっ、わぁぁぁっーー!! ちょっと黙っててください! そうだっ、フィンリーさんが欲しそうな情報を提供しますよ! レイラ コリンズって知ってますか?」


「ええ、300年くらい前に退治されたこの国最後の純血の吸血鬼よねぇ? あっ、貴方が居るから正確には違うかしら? 貴方の婚約者だったと言う話もるけど、本当なの?」


 流石ヴァンパイアハンターだ。レイラが俺の婚約者だったと言う、あまり知られてないであろう事まで知っててなんか怖い。


「そうです。そのレイラがハロウィンのイベントで人を襲う計画を立ててると聞きました」


「はぁ!? ちょっと待って、レイラ コリンズは死んでいないと言うの? なんて事なの……冗談とかじゃないわよね?」


「冗談じゃないですよ。レイラの元部下の吸血鬼から聞いたんですから。フィンリーさんに聖水を掛けられて半殺しにされた日に」


 そうだ、フィンリーが来なければもっと情報を聞けたかもしれないのに。


「あら、ごめんなさい。そんな恨みがましい目で見ないでちょうだい。そう言えばかなり聖水を掛けたはずだけど、どうして貴方は生きてられたのかしら? 普通ならあれだけ濡らせば、2回くらいは死んでるはずなのに不思議だわぁ〜」


「そんなの俺が知ってる訳ないじゃないですか」


 本当は心当たりがあるけど、誰がお前になんて教えてやるもんか。ふーんだ。


「あらあら隠し事? 可愛い反応してくれるじゃない~。いいわ、貴方無害そうだからどうして聖水を浴びても平気か教えてくれたら、アオイさんに催眠術が効かない理由を教えてあげる」


 な、なんで吸血鬼の俺が知らない事をヴァンパイアハンターのお前が知ってるんだよ? でも、実際問題気になってたしな。うーん、それくらいなら教えても俺に実害は無いか? その条件で乗ってやろうじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ