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不死身のチキン 〜ミイラだった最強の吸血鬼は現代社会でささやかな幸せを手に入れたい〜  作者: 甲野 莉絵
同居人を目指して

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33話 追撃

「あら? 貴方、アオイさんのお友達じゃない。こんな場所に居たら危ないわよ」


 俺達の姿を見て、フィンリーがにこやかに手を振りながらこっちに向かって来る。その後ろにはもう1人、ぴょこぴょこ跳ねた茶髪に、青い目をした20歳前後くらいの青年がいた。たぶんあいつもヴァンパイアハンターだ。


 後ろは突き当たりで前にはヴァンパイアハンターが2人。逃げる事自体は簡単だけど、ここで全力で走ったり屋根に飛び乗ったりしたら変に目立つ。下手したら吸血鬼だとバレるかもしれない。どうにかやり過ごすしか無さそうだ。


「出たな、腐れヴァンパイアハンターめ!」


 ……ヤバい、俺がフィンリーに気を取られてる間に、吸血鬼の男はすっかり臨戦体制になってた。フィンリーも髪を束ねながら応じる。


「あら、もう吸血鬼に襲われてたのね? 気付かなくてごめんなさい。待ってて、直ぐに助けるから。行くわよっ、リチャード!」


「おうっ!」


「ちょっ……待っ……」


 3人とも好戦的過ぎないか? まぁいっか、3人が戦いに気を取られてる隙に逃げればいいんだ。ついでにあそこで棒立ちしてる女性も連れてこう。


 万が一にでも戦いに巻き込まれたら可哀想だからな。女性の肩を掴んだその時、吸血鬼の男が振り返り笑顔で叫んだ。


「ジョージ様は今のうちにお逃げください! ヴァンパイアハンターの相手などで、純血の吸血鬼である貴方様の手を煩わせる訳にはまいりません。ここは私にお任せを」


 ん? 俺の名前を呼んだ? ……いやいや、きっと聞き間違いだ。だがそれを聞いたフィンリーは目を輝かせ、吸血鬼の男に膝蹴りをくらわせ馬乗りになる。


「あら、あらぁ! 『ジョージ様』って、貴方が不死の王だったのね!? 待ってて、こんな奴直ぐに片付けてそっちへ行くから!!」 


 終わった……しっかり顔を見らてるうえに、吸血鬼の男がご丁寧に紹介してくれちゃった以上、誤魔化す事も出来ない。何処に住んでるかバレるのも時間の問題だろう。


 クソッ! あの吸血鬼が余計な事を言ったせいで蒼と一緒にいられなくなりそうだ。俺より弱い癖に何が『お逃げください』だ。守ってくれなんてひと言も頼んでない。


 本当に腹が立つ。俺はただ蒼の側で、ひっそりと大人しく生きていたいだけなのだが、そのようなささやかな幸せすら許されないのか? 本当に邪魔な奴等だ。


「……ヒッ!」


 その時、肩を掴んでいた女性が掠れた声で悲鳴をあげた。その声を聞き、リチャードと呼ばれていたヴァンパイアハンターが、俺に拳銃を向ける。フィンリーは俺を見て恍惚の表情を浮かべ、焼け爛れた吸血鬼の男にトドメをさした。


「あらぁ美しくって怖い顔。それでこそ不死の王って感じよ。今まではやっぱり猫を被ってたのね? その眼光の鋭さ、ゾクゾクしちゃうわぁ。とても退治のしがいがありそう。だけどその前に人質を離しなさい!」


 フィンリーが銀の短剣を構え直して何か言っている。だが俺には短剣の刀身に写った自分の顔を見たショックの方が大きかった。眉間に深い皺を寄せ、赤くなりかけた目を吊り上げ、歯軋りをしている。まるで獣のような本当に怖い顔だった。


 嘘だ!! 俺の心は人間なんだ、俺がこんな表情をする訳がない! これは生粋の吸血鬼が怒りを顕にした表情だ。普段はうっすらとしか自分の姿が見れないのにこう言う時に限って、何故か目に飛び込んで来る。


「これ以上は人を襲わせない! 早く人質を離しなさい!!」


「違うっ!! 俺は……」


 でもあんな顔を見られたからには、もう何を言っても信じてもらえないよな……。ショックがあまりに大き過ぎたせいか、リチャードが銃の引き金を引いた事に気付くのが一瞬遅れた。


 嘘だろ!? 俺はまだ女性の肩を掴んだままだし、こんな街中で銃をぶっ放すのか? そう思い咄嗟に女性を背後に庇ったが、俺の足下が濡れただけだった。もしかしてあの拳銃は水圧が強い水鉄砲なのか? 


「早く人質を離せ! 次は撃つぞ」


 リチャードは鋭い声を上げ、俺の顔の辺りへ向けて拳銃を構え直す。女性を渡すのはやぶさかではない。でもその後、大人しく投降しても俺は絶対に退治されるだろう。こうなったら逃げるが勝ちだ! 女性を離すと同時に強く地面を蹴る。


「待ちなさいっ!」


 フィンリーが撃った水鉄砲の水が足に掛かる。


「──くっ!!」


 何だこれ、冷たいと思ったけど濡れたところが焼けるように痛い。どうにか屋根に飛び乗る事は出来たが、水鉄砲で撃たれた箇所が痛んで踏ん張れず、転んでしまった。その隙にフィンリーとリチャードが容赦無く追撃して来る。


 どうにか痛みを堪えてその場を離れたが、服や髪がびちょびちょに濡れてるせいか、回復しては火傷するの繰り返しで、身体中の焼けるような痛みが治らない。


 手の甲も腕も爛れたようになってるし、ぐっちょり濡れた袖口を掴んだ手のひらまで赤くなってる。何だこれ、硫酸とかの薬品系か? でも服は全然溶けてない。


 考えてみれば相手はヴァンパイアハンターだ。もしかしてこれは聖水か? そうか、だから人質がいても撃てたんだ。


 だとしたら早く帰って聖水まみれの服を脱がないと、いつまでも痛いままだ。それにこれからの身の振り方を考えないと。

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