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不死身のチキン 〜ミイラになった最強の吸血鬼は現代社会でささやかな幸せを手に入れたい〜  作者: 甲野 莉絵
秘密の居候生活

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12話 吸血鬼はカメラに写るのか

「これからどうしよう。きっと今頃ダリブン大学では俺がいなくなったって大騒ぎだ」


「ええ、文化財が無くなったとなれば、まずは警察に連絡が行くわね……。ま、私はひとまず安心かな。今日研究助手をする日では無かったから。だけど貴方は……」


 アオイが俺をじっと見る。そんなに見つめられたら緊張しちゃうな〜。


「間違い無く行方を追われるんじゃない? 私は未だに半信半疑だけど、館長さんはヴァンパイアハンターで、貴方は吸血鬼なんでしょ?」


「え……だけどフィンリーだって俺が吸血鬼かどうかは、半信半疑だったみたいだよ……?」


「そこで今日の出来事よ。生きているのではないかと疑っていた、吸血鬼のミイラが忽然と姿を消した。しかも家宝のブローチも一緒に。これはもう私が館長さんの立場だったら、貴方を全力で追うわね」


 その事について予想はしてたけど、あえて考えないようにしてた。だって考えちゃったら逃げようなんて思えない。覚悟はしてた事だけど、俺の喉から声にならない悲鳴が漏れる。


「ヒェッッ……。大学なら何処かに監視カメラがあるはずだよな? もし研究室の中にあったら、俺がアオイを襲うところがバッチリ写ってる」


 アオイの顔からもサァッと血の気が引く。


「た、確かに。だけど貴方は良いわ、吸血鬼なんだからカメラに写らない可能性があるでしょ。私は……私は、何処に監視カメラがあったとしても写ってしまうから、文化財のミイラを盗んだ犯人だと疑われる可能性があるわ」


 そっか、俺は防犯カメラに写らない可能性があるもんな。……って待てよ、防犯カメラ映像ってきっと遡って見るよな? もし俺が写って無かったら、そこにあったはずの物が写って無いって事になるだろ。そしたら俺が吸血鬼だってバレるじゃん!


「お、お、俺だって監視カメラに写らなかったら、吸血鬼だってフィンリーにバレる!」


 頭を抱える俺の肩をアオイがポンと叩く。


「ねえ、貴方の能力で監視カメラの映像を何とかする事って出来ないの? 吸血鬼なんでしょ?」


「何とかって?」


「データを消したり、改ざんしたり、遠隔操作で監視カメラ自体を壊したり……」


 俺の頭の中に世界を股にかける、凄腕エージェントの映画が思い浮かんだ。確かに身体能力だけなら、あれ以上の事が余裕で出来るだろう。


 でも日中は満足に動けないし、例えハイテク機器を使えても、能力で干渉できるかと言えば話は別だ。出来る事と言えば、ダリブン大学に忍び込んで、物理的に壊す事くらいだ。そんなの直ぐに足がつきそうで怖すぎる。


「……無理」


「もう、使えない吸血鬼ね」


「お、俺にだって得意不得意があるんだぞ!」


 アオイは俺をじっと見て考える様な素振りを見せる。


「まぁ貴方の得意分野とやらには今後期待するとして……」


 うっ、考えてから言われると、より一層情け無い奴だって突き付けられてる様で辛い。分かってたけど、真顔で言われると心にグサっと来るな……。しょんぼりする俺の肩をアオイが再びポンと叩いた。


「出頭しましょう。そうすれば罪は軽く済むはずっ!」


「嫌だ。それだと俺がフィンリーに退治されちゃう!」


「貴方は尊い犠牲に──」


「ならないよ?」


 アオイの為にはその方が良いって分かってる。だけど俺はそんな奇特な性格ではない。やっぱり自由でいたいんだ。


 それに……この数時間で人と会話する楽しさを思い出してしまった。それを忘れて平穏な展示物ライフを送る事なんてもう出来そうに無い。


 アオイに頼んでばかりで情け無いけど、向き直って頭を下げた。


「俺は長い間ずっと孤独だった。人間とは寿命が違うから仕方がない事だって諦めてたんだ。でもアオイと出会って人との関わりを楽しく感じたんだよ。お願いだフィンリーに言わないで、出来たらここに置いてほしい」


 そうは言っても望みは薄いだろうな……。誰だって自分が逮捕されるかもしれないのに、俺みたいな化け物を匿おうなんて思わない。


 だからここで断られたとしても、アオイの俺への心象が悪くならないように無理強いはしない。そうすればフィンリーと対話出来る可能性だってある。


 一瞬実力行使も考えた。どういう訳かアオイに催眠術は効かないけど、力で捻じ伏せる事は簡単なはずだ。だけどそんな事をしたら俺は本当の化け物になっちゃう。それに間違い無く危険な吸血鬼として追われるから、逃げて逃げて逃げまくるしかなくなる。


 でも出来る事ならアオイのところに置いて欲しいな。ひとりは寂しいから……。さっきまでの普通に会話をして、たまにふざけ合うあの感じが、俺の望んでた幸せに近い気がする。


 俺は恐る恐る顔を上げる。アオイが何か言い掛けたそのときスマホが鳴った。ディスプレイに表示された名前を見てアオイの表情が強張る。小さく息を整えて電話を取った。


「はい佐藤です。ええ、えっ!? 無くなった? あのミイラがですか?」


 アオイが大袈裟に驚いたふりをしながらちらっと俺を見る。電話がかかって来ただけでこんなに不安になるなんて。さっきのお願いについて返事を貰ってないし……。


「今ですか? 家に居ます。……監視カメラ? あ、はい分かりました。あっ、あの!」


 アオイが再び俺を見た。言いようの無い胸のざわつきを感じる。一瞬の間をとても長く感じた。


「私からも、教授にお話ししておきたい事がありまして……」

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