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創作論に配慮は必要なのか?

「創作論を語る者は、どこまで影響を配慮して言葉を発するべきか」。


 この問いこそが、私が前作を書き終えたあとに気づいた、最も重大な論点であった。創作論とは結局、読者の地獄に触れる可能性のある言葉なのだ。背中を押すということは、誰かを高みに導く可能性と同時に、奈落へ落とす可能性も持ち合わせている。ならば、創作論を書く者は、キーボードを叩く際、彼らへの影響をどこまで配慮すべきなのか。


 この問いに答えるために、創作論の「作品としての側面」を見つめたい。前作で私は「猫のような作品」について述べた。以下にその部分を引用する。


 《 猫のような作品も、同じだと思う。

 読者の歓声を計算していない。都合よく泣かせようともしない。気まぐれに文を綴り、時にぶっきらぼうで、時に恐ろしいほどの静寂を孕む。そういう作品は、万人には受け入れられないかもしれない。だが一瞬、作者と目が合ったかのように感じられた瞬間が、二度と忘れられない。こちらの心を引っ掻いてきても、不機嫌に鳴いてきても、その野性味こそが読む理由なのである。》


 創作論という文章そのものにも、こうした「猫的な作品」の性質が宿るのではないか。小説と創作論では読む動機こそ異なるが、どちらも作者が自らの感覚を編み上げて形にする点では「作品」である。したがって、作品としての特質に目を向ければ、そこに大きな隔たりはない。


 猫的な作品とは、要するに「自己の美的感覚を貫く作品」である。創作論もまた、核となる「創作への思想」に、書き手固有の美的感覚が色濃く反映される。統計データだけを並べれば中立を装うこともできるが、多くの場合、数字は個人の主張を補強するために用いられる。創作論は本質的に「作者の価値観」が前に出る文章なのだ。


 こうした猫的な文章は、読者の価値観に寄り添いすぎることができない。もちろん、「売れる小説を書く」という明確な目的を掲げる場合には、読者ニーズに寄り添うことが求められるかもしれない。だが、その迎合の仕方は結局、各人の感性に依存する。誰にとっての「読者」を想定するかで答えが変わってしまうのだ。


 つまり、創作論は本質的に読み手の顔色をうかがえないのである。その本質を無視した文章は、もはや創作論というより、裸の王様におべっかを使う進言に近づいてしまう。高く評価されている創作論は、読者(=同意を得られる創作者)への迎合目的で書き出されたわけでなく、作者なりの一般論が「偶然にも」支持された結果だろう。


 このように考えると、誤誘導の可能性を完全に除くことはできない。創作論に書き手の価値観が混じる限り、そのリスクは宿命である。


 では、冷淡にも「だから読者への配慮はいらない」と結論づけるべきか。答えは、当然ながらノーだ。


「猫的な作品」の性質は一面だけでは語れない。そもそも、それが誰かを傷つけるだけの代物であれば、「猫らしくあれ」なんて喧伝した私は狂人となってしまう。それらの作品には、個人に固有のものである、創作者自身の本音が滲むのだ。その本音こそが、読み手である創作者たちへの誠実さへと繋がる。


 どういうことかと言えば、我々は「余白」を残す余地があるのである。ここでいう「余白」とは、すべてを手取り足取り解説せず、読者が自ら考え、取捨選択できる空間のことである。例えば、ある手法や文体を推奨するとき、「私はこう考える」という形で提示する。その結果、読者は自分の目的や美的感覚と照らし合わせながら、自らの創作に取り入れるかどうかを判断できる。文章に余白があることで、創作論は読者を操作する道具ではなく、考えるきっかけや指針として機能すると私は思う。

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