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15.作戦会議

 

 


 師匠と呼ばれる男、

 ドゥオモ・ロインは不老だ。


 イシュタール王国の長い歴史のうち、ドゥオモはその約半分の時を生きてきたらしい。

 

 王国随一の大魔法士と謳われる彼だが、意外にも魔力量はそれほど多く無い。しかし、長く生きてきたからこそ経験値が高く、造詣も深いのだ。ありとあらゆる場面に慣れているお陰で、瞬時に魔法陣を選択し、しかもそれを短時間で描ける。つまり、『迷いが無い』というのが彼にとって一番の強みと言えるだろう。




 たった今、国境軍の宿舎で弁舌を振るっているのはそのドゥオモ本人で、内容の重さとは裏腹に口調は驚くほど軽い。もしかすると、聞き手の緊張を解す為に敢えてそうしているのかもしれないが、残念ながらその意を酌む者はおらず、場の雰囲気は最悪。それでも彼は挫けない。不老の男は不屈のハートの持ち主でもあるのだ。


「ほっほっほ、さすがワシの愛弟子。ノノが連れて来ただけあって、モモちゃんはとんでもない子じゃったのう」


 そんな切り口で始まった、異世界人の説明。


 最初は笑いながら聞いていたクロノスゾネスとニールニアロウだったが、その表情は徐々に強張っていく。先に聞いていたはずのアーサーヴェルトですら、険しい表情を崩さず。この3人を見ているだけでも、話の深刻さが伝わってくる。


 

 ──高橋モモの固有魔法である『吸収』。


 それは相手の魔法を全てコピーし、

 魔力すらも写し取ってしまうのだという。


 …そう、全て。

 属性は勿論、固有魔法も吸い取るのだ。


「いやあ、ノノがのう、いち早くモモちゃんの固有魔法が発現したことに気付いてのう。まあ、ヤツはワシから学んだ鑑定術を使い、毎日あの子を調べておったから当然なのじゃが」


 聞けば聞くほど、驚きの能力だった。


 信じられないことに、ただ、同じ空間にいるだけで相手の魔力を写し取ることが可能だと。それも、相手にまったく気付かせず、本人ですら無意識に。そして唯一無二であるはずの固有魔法でさえも、容易く己のものにしてしまうらしい。


「はいはい、ここからが重要じゃ。よ~く聞くんじゃぞ、お前達。モモちゃんが他人の魔力をこの調子でコピーしまくってくれれば、魔導具なんぞ無くとも、新たに異世界人を召喚出来るかもしれんのじゃ。この国に現存する魔法士は57人。全員の魔力をコピーしたモモちゃんと、コピー元の本人が集えば、本来の魔力量の2倍使えるということなるからのう」


 しかし、ここで懸念事項が生まれることに。


 魔法とは、体内を循環した魔力を放出する際に叶えられるもので、魔法を頻繁に使えばその分、魔力も減ってしまう。属性魔法を生活に使用する程度であれば、消費は少ないだろうが、固有魔法の種類によっては大量に消費することも考えられると。


「だからモモちゃんには悪いが、固有魔法は写し取れないということにしておく。あのコが新たに固有魔法を取得するたびに、その使用は出来ないよう暗示をかけておいたのじゃが、面倒なことにイチイチ昏倒してしまうようになってのう。次に魔力持ちの人間が彼女の前に現れた時には、また倒れるはずじゃから、傍にいる者は対応を頼むぞ」


 そして、次に告げられたのは以前も話題に出た王都での事件。


 王太子であるコンスタンティン殿下、

 宰相の息子であるルイ・バーンズ、

 騎士団長の息子であるキース・シュベリウム。


 この3人がひとりの男爵令嬢に夢中となり、揃って婚約破棄を行なったのだが、どうやらこれは魅了が使用された疑いが濃厚との意見が出てきた。下位貴族には魔法が使えないので、魔導具を使った可能性が高いという方向で現在調査中とのことだ。


 ここでアーサーヴェルトが朗々と発言する。


「もし、男爵令嬢が魔導具を使用していたならば、そんな希少なものを男爵家が入手出来るとは考え難い。丁度コンスタンティン殿下から従弟である俺宛に連絡が有って、彼女の背後には敵国の間者がいるかもしれないから、国境の守りを固めろと」


 2人分の掠れた返事が聞こえたが、アーサーヴェルトの話は尚も続く。

 

「そして、先の話にも出た、ルイ・バーンズとキース・シュベリウム。彼等は婚約破棄後、一人息子にも関わらず廃嫡され、その後は王命によりこちらへ向かっているとのことだ。頑張って戦力となるよう鍛え上げて欲しい」



 

 …こんな会議が繰り広げられていた頃、

 モモはひたすら芋を切っていたのであった。


 頑張れ、モモ!負けるな、モモ!

 また男子が増えるらしいぞ!

 

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