表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/72

14.始まってもいない恋

 

 

 魔法と言っても、一般的に『属性』と呼ばれる四大元素魔法のみコピー可能らしく。固有魔法はさすがに無理なのだそうで。


 ちなみに、四大の内訳は水、火、空気(風)、地(土)で、会議室には土以外の属性を持つ人が揃っていたのだという。そこで無意識にコピーを開始した私は、身体に負担がかかり過ぎた挙句、鼻血を出して倒れたのだろうと。


 そこまで聞いて、ニーニのお腹がグウウと豪快に鳴ったことにより、話は一旦終了となった。


 早くご飯を作らないと。


 クロさんとニーニに手伝って貰うつもりだったのに、師匠から大事な話があるとかで、その代わりノノくんがアシスタントに入ってくれることに。


 おうふ、ラブラブクッキングだわ。






「じゃあ、そのお肉をどんどん揚げてくれる?」

「えっ、ああ」


「あっ、高い位置から入れちゃダメ!油が飛ぶよ」

「わ、分かってるって」


 傍若無人なノノくんが、油ごときにビビってる。

 んまあ、なんて可愛いのかしら!


 ──早速、別宅という名の私専用住居で調理しているのだが。いやあ、何が驚いたって、正にマンションなんですけど。そう、一戸建てではなく、集合住宅なのだ。


「このマンション、私の他に誰が住むの?」

「うおっ、あちッ、ああん?俺だけど」


「ノノくんが?」

「そりゃそうだろ。こっちの世界に連れて来た責任が有るからな。過去の例を鑑みて、最低限の暮らしを保障し、安全に暮らせるようにと暫くの間は俺が細部に渡ってフォローするつもりだ」


 好き!

 まるでどこかの労基職員みたいなことを言ってるけど、でも好き!


「こ、ここってお風呂もついてるんだったよね」

「あー、もう、なんでこんなに油が飛ぶんだよッ。くそ、シールド!…って、ああ、村の仮住まいみたく、盥に湯を溜めて洗う感じのな。あ、でも、モモさんは水魔法が使えるようになったから、自前のシャワーが出せるはず。後で練習してみような」


 えへへ、と笑いながら私は包丁をトトトッと素早く動かす。唐揚げとポテトフライは、絶対に若い男子のハートをキャッチするはずだ。どれもこれも味付けは塩オンリーだけど、素材の味が活きるからソレはソレで美味しいに違いない。


 フライ用の芋を大量に切り終えた私は、意を決してノノくんに質問する。


「あのさ、ノノくんの魔法って、なに属性?」

「なんだよ、いきなり」


「いや、参考として聞いておきたいなあと思って」

「属性は、無い」


「は?」

「ウチは7代前に落ち人がいる家系で、特殊なんだ。だから属性という概念が無い」


 へ?じゃ、じゃあ、じゃあ…。


「えと、ノノくんは攻撃魔法を持たないの?」

「ああ、どちらかと言えば防御に特化しているな。固有魔法も『空間』で、戦闘時には役立たずだ」


 頭の中が真っ白になって。

 それからすぐに混乱した。


 ということは、男性側には攻撃魔法がゼロで、女性側だけ火だの水だの風だのをどっさり持っていると。この場合、戦闘能力の高い子供が生まれる確率は半分だよね?だったら…って、ううん、きっと無理だ。わざわざ異世界から召喚しておいて、そんな賭けみたいなことをするはずがない。


 ノノくんの立ち位置から考えても、私とどうこうなろうなんて思わないだろうし。あー、そっかあ。やっと両想いの人が見つかったのに、こんなに呆気なく終わってしまうのか。


「ノノくん、あのね」

「なに?」


 声は刺々しいのに、その目は柔らかく笑っている。それはまるで私のことが好きだと囁いているかの如く、とても優しい。


「へへっ、何でも無い」

「なんだよ、気持ち悪いヤツだな」

 

 まだ始まってもいないうちに、

 終わってしまった恋。


 ──私は自由で、だけどとても不自由なようだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ