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10.モモからの提案

 

 頑張ろう。

 って、何を?

 

 そもそも私は恋愛方面に疎い。

 初恋だって、散々だったし。

 

 あれは忘れもしない、中2の春のこと。仲良しグループのなかで初カレが出来た子がいて、そこから初恋はいつだったかという話題になり、それで漸く気付いたのだ。


 あ、もしかして私、

 委員長のことが好きだったかも…と。

 

 しかもその委員長って、

 小3の時に同じクラスだった男の子だからねっ。


 当時の私は副委員長だったから、共に行動する機会が多く。彼は穏やかな上に言葉遣いも丁寧で、ヤンチャでおバカな他の男子とは一線を画していたように思う。


 それ故に、女子からの人気がハンパなかった。


 ハンパなさ過ぎて、嫉妬にかられた女子から陰口を叩かれた私は、心がポッキリ折れてしまう。


 今まで知らなかっただけで私は皆んなから嫌われているんじゃないか、これまで良かれと思ってしてきた行為がもしかして#有難__ありがた__#迷惑だったのではないか。…そんな疑念にかられ、自分で自分がどんどん嫌いになっていき。

 

「でもね、ある日ふとこう思ったんですよ」

「へ?あ、なんかいきなり語るね、モモ嬢」


 語らいでか!


 打ち解けるには、まずお互いを知ること!

 これ基本ね。

 

 

 ──超能力者じゃあるまいし、無言のままで分かり合えるなんて有り得ない。例えば、自分が悪者だと思っていた人が、実はその人から見れば自分が悪者だったりするかもしれないのよ。全てを分かり合うことは難しいけど、分かり合おうと努力することは、止めちゃいけないわ。不思議よね、相手を知ると、自分のことも知ることが出来るの。


 …って、お母さんが言っていたもの!


「ニーニ、話はまだ続きますよ。人間って、いろんな要素が集まって成り立っていると思うのです」

「はあ、要素ねえ…」


「そうです。例えば、優しい、陽気、世話好き、几帳面、セッカチ…それらをひっくるめて1人の人間が出来上がっているとします。で、大抵の人は、相手の全部が嫌いなのではなくて、どれか1つの要素が嫌いになってしまうのではないかと」

「なるほど」


 ちなみに私とニーニは、村の仮住まいで野菜を袋に詰めている最中だったりする。


「ぎゃ、この菜っ葉、青虫がついてる!えいっ、えいっ、って、あと、そう、まだまだ話しますよ」

「はいはい、気が済むまでどうぞ」


「多種多様な人間がいますからね。世話好きな部分を鬱陶しいと思ったり、几帳面なところが息苦しいと感じたり。逆にそこが良いと言う人もいるのかもしれない。だから、その人の全部が嫌いなのではなくて、ひと部分だけが好きになれない…なんてことがあるのは当然なのです」

「ふんふん、それで」


 青虫を外へ逃がしてから、私はギュウギュウと野菜を入れた麻袋の紐を縛った。


「多分、それは相性の問題で。だからそんなに落ち込むことも無いのかな、なんて」

「そっか。って、なぜ今その話を?」


 意を決して私は伝えてみる。鼻血を出して倒れた際に、3人の会話を聞いてしまったことを。人間には相性というものが有るので、どうしても私が嫌ならば無理をしなくていいですよ、と。先ほど話に出た、魔力の多い彼ならば私が嫌では無いみたいなので、そちらと頑張ってみますよ、と。


 とっても良い提案だと思ったのに、

 あら、どうしたのかしら?


「あのう、ニーニ?何か言ってくださいよ」

「くっ…う、あれ、聞いてた…のか」


 私がコクコク頷くと、目の前のその人は何やらブツブツ呟き始める。なのでなんとなく気まずくなり、ムリヤリ初恋話に戻してみた。


「そ、それで委員長の話ですけど。あの、とにかく心が折れたせいで私は、彼に近づかないようにして、そのまま疎遠になってしまったんですね。でも、14歳の時に改めて振り返ってみれば、好きになった人は彼しか浮かばなかったって、そんなの切なくないですか?」


 おやおや?相槌すら打ってくれなくなったわ。

 

「お~い、ニーニ、起きてますか?えっと、もっと自分をしっかり持って、次こそは好きになった人と…ううん、正確には、誰かを好きになった自分ときちんと向き合っていこうと思う所存です。えへへ、頑張るぞ!オー!」


 上手に話を纏めたつもりだったのに。

 なぜかその後もニーニは、無言のままだった。

 

 

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