16話
「………あ、おはようございます!ルーナさん!アリスさん!」
次の日、結局いつものように三人で固まって寝て、御者さんに言われた時間の三十分前に、一階へ降りると昨日の店員が仕事をしていた。
「あら、おはようミイナ」
「おはようございます、ミイナさん」
この子達、いつの間に名前で呼び合うほど仲良くなったのかしら。ミイナと呼ばれた店員に振った手には、昨日、俺があげた結婚指輪が左手の薬指に嵌められている。
それに目敏く気付いた店員が、ピキーン!と目を光らせると二人に食いついて。
「そ、その指輪はやはりーーーー!」
「えぇ、彼から貰ったの……綺麗でしょ?」
「えへへ、似合いますか?」
「きゃー!!お二人共美しいです!綺麗ですー!」
当然だろ、俺が二人のために一生懸命選んで、特殊な魔法効果が付与されたのを送ったんだから、似合って当然だろ。
と、俺が二人の影に隠れてフンっ!とドヤ顔するが、まぁぶっちゃけこんなとこで油を売っている時間もないんですがね。
「二人共、時間が無いからお喋りはその辺にしとこう」
「そうね、残念だけれど時間が無いものね……」
「ミイナさん、またここに泊まりに来ますから、お話しましょう?」
「分かりました!その時は値引きさせてもらいますね!」
と、宿屋の娘の特権を充分に濫用し、またお越しくださーい!という声を背に宿屋を出た。
朝早いのに既に屋台を開いているお店から適当に朝ごはんを買い、パクパクと食べながら歩いているとーーー
「ーーーーっ!?」
感じる魔法の発動予兆。それは横にいた二人も気づいたようで、アリスは急いで串を放り投げ、抜剣し、ルーナも急いで杖を構える。
「斬ります!」
「いや!大丈夫だ!魔法なら俺の専売特許!アリスは術者を見逃さないようにしてくれ!ルーナは拘束の方を!」
「任せなさい!」
「了解しました!」
そして次の瞬間に、街中で堂々と俺らに対して放たれる魔法。幸い、朝早くだったので人通りは少ないことが良かった。
「魔法ならーーーー」
俺は二人の前に躍り出て、速力重視で放たれた魔法に向かって手を伸ばす。
そして、魔法が俺の手に触れた瞬間、その魔法は消え去る。
「ーーー俺とは相性が良すぎるんだ。残念だった」
神童の体質である、完全魔法無効化&吸収。魔法を伝えた神に愛されている俺は全ての魔法の効果を無効化し、その無効化した魔力を自身に吸収するというなんというイカレ具合。
「ーーー追います!」
そして、アリスがやね上にいる驚いた術者を確保しようと足に力を入れ地面を踏みしめると、地面が陥没し、一気に15メルト程ある屋根まで一直線にジャンプ。
アリス自身は気づいていないかもしれないが、アリスの宝石に俺が込めた魔法は、アリスのよりずっと強力な身体強化と、俺の魔力。
俺ーーー神童の魔力は、自信が発動している魔法を強化する性質と、俺ほどではないがほとんどの魔法を無効化&吸収してくれる。だからついでにその吸収した魔力を使って自動で防御魔法を展開するように弄っておいた。
「ーーー縛り上げなさい」
そして、隣では魔力を練り上げたルーナが魔法を発動させ、術者を拘束。ルーナの宝石には魔法発動速度超短縮と同じように俺の魔力が込められている。
魔法で縛り上げられ、身動きが取れない術者にアリスが一直線で向かっていく。
「……逃げるな」
そして、術者から見える魔法発動のオーラ。あれはテレポートか。発動までの時間が短いことから、失敗し時ように、事前に座標を決めていたか……抜かりない奴だ。
「すいませーん!逃げられましたー!!」
と、屋根上で俺に告げるアリス。隣でルーナもそこそこやるのねと呟いたが………まぁ問題ない。
「アリスー、追いかけるからこっちおいでー」
「あ、はい!」
と、ぴょーんと飛んだアリス。両手を広げ抱きしめて受け止めてください!というのがヒシヒシと伝わってくるので、しっかりと抱きしめて受け止める。
「よし、追いかけるぞ。ルーナも俺に抱きつけ」
「遠慮なく!」
と、ルーナもしっかりと抱きついたので、先程の術者の魔力を探す。アイツの魔力を既に覚えた。世界のどこにいようが、俺に目をつけられたからには生きて帰れると思うなド畜生が。
発動速度からして、行けたとしてもこの街の外くらいまで。どうせ今頃ルーナの拘束魔法で動けないから助けてー!とか言ってるだろうから、そいつらもまとめてついでに殺るか。
「そんじゃ殺るぞ。転移」
しゅん、と視界が変わると、森の中に出て、話し声が聞こえてくる。
「任務失敗した。俺は魔法で動けないから応援に来てくれ……あぁ、分かったそれじゃ」
と、しっかりと応援を呼んだのを見てから、俺達はそこで動けなくなっている術者の前に姿を現す。
「っ!な、なぜターゲットがここにーーー」
「うっせぇ、死ね」




