10話
「ふぁ……」
あー、眠い。いつもより眠れなかったからすっごい眠い。
現在俺は、馬車の乗組所に来ていて、ディルクロッド領まで行く馬車を探している。
えーっと、ディルクロッド領ディルクロッド領………お、あったあった。後20分後出発な。よし。
無事に見つけたので、受付のところに行き、馬車に乗るための券を貰わなければならない。金なら、昨日の貴族からの報酬を少しくすねてきたので、多分大丈夫だ。
「すいません、ディルクロッド領まで行く馬車の券を」
「かしこまりました。お連れ様も一緒ですか?」
「えぇ、彼と一緒で大丈夫よ」
「お金ってどれくらいですか?」
「そうですね、この二人も一緒でーーーーーん?」
なんかものすごい違和感感じた。具体的に言うならば、今この瞬間に聞こえないはずの二人の声が聞こえた。
「かしこまりました。三人分で金貨一枚と銀貨二枚になります」
「はい、これで大丈夫かしら?」
と、隣にいる見慣れた赤髪の少女が金貨一枚と銀貨二枚払い、もう片方の隣にいた金髪の少女が三人分の券を貰った。
「…………え?」
それは、昨日別れたはずのルーナとアリスだった。
………あれ、なんでいるすか?
会えて嬉しいはずなのに、何故か最初に思ったのがこれだった。感動の再会もクソもない。
「あら、私たちがいるのがそんなに不思議?」
と、不思議そうにルーナ達を見ていた俺に、不満げな表情を見せる。
「いや、だって……」
アリスとルーナは、詳しいことは教えてくれなかったが、勇者から離れられない理由があったはずだ。
「大丈夫です、ティルファさん。その離れられない理由は既に解決済みですから」
「解決………?」
………ダメだ。寝起きのせいで二人の言葉をイマイチ理解できん。
「……すまん、今日寝不足でいまいちまだ頭が起きてないんだ。だから要点だけ簡潔に頼む」
「………ほんとですね、ティルファさん、隈が物凄いです」
と、アリスが俺の顔を覗き込んでくる。ドキッ!と心臓が跳ねて、昨日二人の気持ちを自覚した今となっては正直嬉しいけど恥ずかしいんだが………。
「そう、それなら結果だけ言うわ」
「私たち、ティルファさんに着いていくことにしました」
と、ルーナは少し微笑んで、アリスは満面の笑顔でそう言った。
「………いいのか?」
違う。俺が言いたいのはそんな言葉じゃない。
「いいのよ。これは私たちが決めたことなんだから」
「……俺は勇者よりイケメンじゃないぞ」
「何言ってるんですか。あんな本性クズ野郎よりもカッコイイですよ、ティルファさんは」
「……俺じゃ二人を守りきれないかもしれないぞ」
「それこそ愚問ね。昨日あのクズを拘束したティルファの腕、疑う余地はないわ」
「………俺じゃーーーー」
「くどいわよ」
俺自身が俺を否定する言葉を続ける前に、ルーナがバッサリとぶち切る。
「私達があなたと一緒にいたいと言っているの。ティルファは黙って、私たちが着いてくるのを嬉しがってればいいのよ」
「ルーナちゃんの言う通りです!それとも、ティルファさんは私たちが着いてくるのを嫌がりますか……?」
と、不安げに聞いてくるアリス。
「………そんなわけない」
答えは当然否。
知ってるか?二人とも。俺ってさ、二人がそばにいないと、どうしようもなく寂しくて、眠れなくなるほどにーーー二人のことが好きなんだ。
「……昨日言えなかったけど、今言うよ。ルーナ、アリス、こんな俺だけど、これからも先、着いてきてくれるか?」
と、俺が手を伸ばすと、直ぐに二人が俺の手を握ってくれた。
「もちろんよ。私の隣はあなた以外考えられない。ずっと着いていくわ」
「私もです。ずっと、ティルファさんのお側にいます」
「………ありがとう」
二人の手から伝わる熱が、じんわりと心を暖かくする。それをじっくりと感じていると、グイッ!と俺の手が引っ張られる。
「ほらティルファ!グズグズしていると置いていくわよ!」
「ティルファさん!寝る時は普通の枕と膝枕、どっちがいいですか?」
もちろん、膝枕でお願いします!
拝啓、愛する姉さんへ。
今思っていることは姉さんには届かないかもしれませんが、大事で、大切な仲間が、二人ほど追加されました。




