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財力のある大人になりたい 4

「満足か?」


「まぁーね、これだけ食べれば3日はキャベツでもつな。」


「だからやめろって。いつか倒れるぞ?」


「…」


「やめろよ?」


「…約束はできない。」


「はぁ…お前の家この辺か?」


「次右曲がって。」


「へーい。」


満腹満足な私は車内で睡魔と戦いながらお兄ちゃんと話していた。


出来ることなら寝たいが、それは運転してくれているお兄ちゃんに失礼なので我慢我慢。


あ、でも家に帰ったら勉強しなきゃ…


それに掃除機かけて、明日の準備して…


いや、掃除機は明日でいいや。


帰ったら寝よう、うん。


あ、でもその前に。


「お兄ちゃん。」


「なんだ?」


「お母さんの連絡先教えて。」


「…分かった。」


お兄ちゃんはそう言った後、特に理由を聞かなかった。


五分程、エンジン音だけが鳴り響く車内で過ごした。


お喋り大好きなお兄ちゃんが黙るなんて珍しい。


…黙りたくもなるか、急にあんなこと言ったら。


お母さんのこと、許したい訳じゃない。


お母さんと、家族に戻りたい訳じゃない。


ただ、自分の感情を犠牲にしてまであの人にこだわるのがバカらしくなった。


今日お兄ちゃんと話して確信した。


私は、自分のしたいように生きる。


大嫌いな元家族の力を借りることになっても。


「ほい、着いたぞ。」


「ありがとう。」


「…お前さ、引越せよ?こんなボロアパート…セキュリティとか平気なのか?」


「大丈夫でしょ。」


「お前一応女子高生なんだから気を付けろよ?最近物騒な事件多いからな。」


「はいはーい。」


気のない返事をした私は助手席の扉を開け、車を出た。


少し冷たい夜風が私の頬をくすぐる。


もうすぐ夏だと言うのに、夜はまだ寒い。


帰ったらすぐにお風呂に入ろう。


「じゃまたな。戸締りちゃんとしろよ?」


「…うん、お兄ちゃん。一つだけお願いしていい?」


「何?」


「またご飯食べに行こうね。」


「お前がもやし生活をやめたら考えてやる。」


「…じゃあ二度と行けないね。」


「やめろよな!?体に悪いからな!?」


「はいはい…じゃあまたね。」


半ドアにならないよう、思いっきり扉を閉める。


お兄ちゃんは私が部屋に入るまで、出発しなかった。


話している時も、ずっと私を心配してくれていた。


それがなんだか、くすぐったいような…変な気持ちになってくる。


私、お兄ちゃんがいてくれてよかった。


今日改めてそう思えたよ。


窓から見えた満月はいつも以上に丸く、いつも以上に綺麗に輝いているように感じた。

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