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財力のある大人になりたい

「…」


「そ、そんなに怒るなって。」


「怒ってないし…。」


「何食べたい?好きなもの食べていいぞ!にいちゃんおごるから!」


「は?これ以上私から時間奪いたいの?」


「う…」


女子生徒たちの視線は私が兄の車に乗り込むまで続いた。


目立ってしまった…ものすごく目立ってしまった…!


車に乗り込んでも起こり続ける兄より、今は私の方が怒っている状況だ。


「大体、学校まで何の用なの?」


「お前電話番号変えたろ?だから学校まで来たんだよ。」


「だからって待ち伏せしなくてもいいでしょ!?女子校に男が現れるなんてはらぺこゴキブリの前に餌ばらまいてるもんだからね!」


「女の子をゴキブリに例えるのやめたほうがいいと思うぞ。」


「お兄ちゃんみたいな顔しか取り柄のない男でも女子校の生徒は群がるんだからね!」


「にいちゃん悲しくて死ぬぞ!」


「ちゃんと前見て運転して!」


「あ、すまん…」


お兄ちゃんが運転する車の助手席に乗るのってなんか変な気分。


私の思い出の中のお兄ちゃんは馬鹿な少年だった。


テストで赤点取ったり、校長室の窓割ったり、階段から落ちて骨折したり、女子校に忍び込もうとしたり…


うん…そんなお兄ちゃんが車を運転してるなんて成長を感じる。


その反面、いつ事故を起こすのか冷や冷やしている。


ああ…遺書でも書いておけばよかった…!


「仕方ないな…取り敢えずお前の家送るよ、住所教えろよ。」


「え…ではこの車は今どこへ向かって運転していたのですか…?」


「…地平線の果て?」


「そんな答え求めてないから!」


まさかノープランで運転しているとは思わなかった….!


やはり馬鹿だ、私の兄は馬鹿すぎる。


「いいよ、ここで下ろして。駅すぐそこだし。」


「そんな訳にはいかないだろ。なら飯でも食いに行こうぜ。」


「いいって。」


「母さんから聞いた。仕送り殆ど使ってないんだろ。心配してたぞ。」


「…関係ないじゃん。」


まさかお母さんがお兄ちゃんにまで連絡しているとは思わなかった。


あの人はどこまで本気で、どこまで愚かなんだろう。


私の心配をする権利はあの人にはないのに。


「あるよ。お前のことだ、どーせお金無くなったらもやし生活とかしてるんだろ?」


「…お兄ちゃんのそういうとこホント嫌い。」


本当にこの人は馬鹿のくせに私のことよくわかりすぎてる。


「図星かよ。流石にいちゃんだな!」


「ドヤ顔しなくていいから運転に集中して下さい。」


「とにかく飯食いに行こうぜ!俺腹減ったんだよー…独身の寂しきにいちゃんと飯を食ってくれよー!」


「何食べるかによる。」


「焼肉とかどう?あ、寿司がいいか?それともー…」


「な、何でもいいです…!お兄様…!」


しゃ、社会人凄い…!


何でもない日に焼肉とか食べれるんだ…!


…やっぱり私就職しようかな。




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