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ちりと元家族 2

「ただい…」


「いい加減にしてよ!」


「それはこっちのセリフだよ!」


家から帰ってくると2人は久しぶりに喧嘩をしていた。


廊下の扉からこっそりと覗く2人の姿はもう私の好きな家族ではなかった。


2人が離婚することを知ったのは昨日の話だった。


昨日の晩ご飯は地獄だった。


久しぶりに家族が全員揃った日だった。


私1人だけ、浮かれていた。


実際は淡々と離婚について言われただけ。


詳しくは決まっていないが春までには離婚すると淡々と言われた後はただ静かにご飯を食べるだけだった。


原因は性格の不一致、よくある話だ。


淡々と話す2人の話を私は聞いていなかった。


ううん、聞いていられなかった。


淡い希望がへし折られ、目の前が真っ暗になった。


私が好きだった家族にはもう戻れない。


「少しくらい家族に協力しなさいよ!」


「してるだろ!」


そんな晩ご飯の翌日、2人はまた衝突していた。


見ていられなくなった私はその場から立ち去ろうとした。


あの言葉が、聞こえるまで。


「貴方がちりを引き取りなさいよ!」


「お前母親だろ!?お前が育てろよ!」


耳を疑った。


体中の体温が一気に冷め、昨日よりも感じる絶望。


全身から力が抜け、その場に立っていられなくなった。


「年頃の女の子なんて俺には無理だよ、育てられない。」


「私だって無理よ!私はアンタと別れて人生やり直すんだから!」


「母親だろ!?そんな言い方するな!」


「貴方だって父親の自覚あるの!?」


やめて。やめてよ。


もうこれ以上、貴方たちに失望させないでよ。


2人は大好きだったもう戻れない家族ですらなかった。


もう私の家族では無い。


こんなの、ただの他人以下の存在だ。


「…ち、ちり!?いつからいたのよ!」


「あっ…今のは…その…」


やっと私に気づいた2人は急に慌て出した。


何を慌てることがあるのだろう。


慌てるということは今の発言は問題があると少しは思ってたのかな。


少しでも、私聞かれたまずいって思ってたのかな?


少しでも、私を大切に思ってたのかな?


はぁ…そんなの、どうでもいっか。


私は家族を大切にしてるつもりだった。


家事を手伝ったり、勉強や部活をがんばったり、2人が笑ってくれるように沢山話しかけたり、家庭では笑顔を絶やさないようにした。


それでも私は…2人にとっていらない存在なんだね。


なんか…私ってすごく滑稽。


「ち、ちり…?」


「私も…貴方たちみたいな親はいらない。」


「す、すまないちり!そんなつもりでは…」


「私、1人でいる。これから先何があっても、ずっと。家族なんていらない。」


言葉にするとスッキリした。


あの日から私は全ての関わりが怖くなった。


自分が大切にしても、相手は大切にしているとは限らない。


私がどれだけ愛情を与えても、相手が同じ量の愛情を返してくれるとは限らない。


天秤は決して均衡を保ってはくれない。


ああ、人間って面倒くさいね。





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