ちりと茉鈴 2
「し、失礼し…」
「ちょっと茉鈴!どういうことよ!?」
礼儀正しく戸を開けようとしたらんを無視し、乱暴に戸を開け生徒会室に突入した。
目的の茉鈴は会長席でのんびりと漫画を読んでいた。
…こいつ、会長舐めてるだろ。
「やっほー、ちーちゃん。」
「やっほーじゃねぇよ!テメェ何勝手に人の名前使ってるんだよ!」
「別にいいじゃーん、減るもんじゃないし。」
「減るわ!私のメンタルとか知名度とか!」
「知名度は増えるよー。」
「折角減ってきてるのに増やしたないんだよ!」
疲れる…どっかの双子の相手より疲れる…!
こっちが全力で噛みついてるのに茉鈴はそれをひらりと鮮やかにかわしてくる。
「いいじゃん、元生徒会長候補なんだからー。」
「うるさい!私はもう生徒会とは無関係の人間なの!」
「無関係ではないでしょ、千紗の友達でしょ?そして千紗は私の幼馴染。ほら、関係あるー。」
「なんだその遠い親戚みたいな繋がりは!」
「細かいことは気にしない気にしない。」
「細かくねぇよ!」
茉鈴はニヤニヤしながら私を見ている。
おちょくっているんだ、私を。
変わらない、コイツは本当に変わらない。
中学の時と全然変わらない。
「今すぐ取り消して、推薦責任者。」
「無理無理。もう期限すぎちゃった。」
「生徒会長でしょ?そのくらいどうにかしなさいよ。」
「やーだ!」
必死に睨みをきかせるも茉鈴には効果がない。
のほほんとした顔で私をひらりと交わしてくる。
疲れる….本当に疲れる…!
「第一なんで私なの?」
「君ほどの適任者はいないよ、元中学生徒かいちょー?」
「だからそれ以上言うなって…」
「あ、あの茉鈴先輩…!私別の方に頼むのでちりちゃんはなしにして…」
「ダメ。これは借りだから。」
「は…?」
茉鈴はニヤッとした顔で話を続けた。
「中3の冬、どっかのかいちょーさんは仕事をぜーんぶ放り投げてやめちゃったから副かいちょーの私はたーいへんだったの。」
「うっ…」
それはその通りだ…
あの時の私の行動は全ての責任を茉鈴に押し付けたことに変わりはない。
「じゃあ私の言うこと聞いてくれるよね?」
「…」
嫌だ…責任者なんて絶対にやりたくないっ!
でも茉鈴に迷惑をかけたのは事実だし…
茉鈴は悩む私をじっーと見つめたままニコニコ笑っている。
コイツ…楽しんでやがる…!
「…そこまで悩むならいいよ、やらなくて。」
「えっ!?いいの!?」
「ただし!なんで生徒会辞めたの?それだけ教えて。」
「…」
「なんで黙るの?私には知る権利があると思うけど?」
「…いいよ、教えてあげる。ただしらん、あんたは帰って。」
「へ…?」
ポカンとした顔のらんには悪いけど、そんな大勢に聞かれていい話じゃない。
出来ることなら、誰にも知られたくない話。
「ごめんね、らんらん。責任者は私も探しておくから。」
「い、いえ!先輩の手を煩わせるわけにはいきません!生徒会になる以上、自分のことは自分でやりますので!」
「らんらんは偉いなぁ。じゃまた明日ー。」
「はい、花澤先輩もさようなら。」
少しだけ歪な笑顔を残し、らんは帰った。
静まりかえった生徒会室には私と茉鈴の2人だけ。
懐かしいな、この感じ。
…とても懐かしむ空気じゃないけど。
「では聞かせてもらおーか?」
「いいよ…」
緊迫が走るのを感じているのはきっと私だけじゃない。
茉鈴の顔にも真剣さが帯びているもの。
「私の家族、昔からバラバラだったの。」
母親の怒鳴り声、父親の舌打ち…それが私の当たり前景色だった。




