茉鈴とちり
何故生徒会に入ったのかって?
うーん…分からない。
ぼっーとしている間に決まったことだもん。
今年度の中学生徒会役員は立候補者が一人しかいないらしく、候補者を募っていたらしい。
まぁ成り行きでなってしまった、ということだ。
「中学生徒会長になりました、三年C組花澤ちりです。よろしくお願いします。」
壇上に立ったちーちゃんは凛々しくて、とてもかっこよかった。
仕事も早く、誰からも慕われ、カリスマ性というものがある人だった。
これは噂だが、ファンクラブもあったらしい。
「茉鈴、これ手伝ってくれる?」
「う、うん…」
昔の私はよく下を向いていた。
常にぼっーとしている、変わっている子と言われ、友達が少なかった。
そんな私でも普通に接してくれたのがちーちゃんだった。
「えっ!茉鈴そんなに食べるの!?」
「うん、お腹空いてるから。」
ぺろっと牛丼の特盛りを食べても、仕事が遅くても、ぼっーとしていても、マイペースでも、ちーちゃんは私から離れなかった。
私とちーちゃんは三年間同じクラスになったことはなかった。
それでも、仲の良い友達だと思っていた。
だけどある日事件は起こった。
中学三年生の冬、ちーちゃんは何も言わずに生徒会を辞めた。
通常そのまま高等部に進級する私たちは高校生になると同時に高校生徒会に所属することになる。
勿論断ることもできるが、ちーちゃんは何も言わずに辞めた。
何度か理由を聞こうとちーちゃんのクラスを尋ねたこともあった。
でも、怖くて話しかけられなかった。
だってそこにいたのは私の知ってるちーちゃんじゃなかったから。
教室の隅でずっと本を読み続けるちーちゃんの目は真っ黒で、寂しそうで、とっても遠く感じた。
…
…
「武藤先輩、花澤先輩と知り合いだったんですか?」
「あー…」
作業を一通り終えると、生徒会に入りたいと言ってくれているらんちゃんが興味津々な顔をして聞いてきた。
「昔、友達だったんだー。」
「昔ってことは今は違うんですか?」
…どうなんだろう。
私にとってちーちゃんは大切な友達だった。
現に今私が生徒会長をやれているのはちーちゃんが何度も丁寧に生徒会の仕事を教えてくれたからだ。
「す、すみません…立ち入ったことを聞いてしまって…」
「あっいいの、いいの。気にしないで。」
あーあ…後輩に気を使わせてしまった。
反省反省。
「私は花澤先輩と幼馴染なんです。先輩が小学五年生の時まで家が隣同士だったんです。」
「へぇー、そうなんだぁ。」
ああ、この子のことだったのか。
一度聞いたことがある。
妹のように可愛がっていた双子の幼馴染がいると。
「ちーちゃんってさ、昔はどんな子だった?」
「昔、ですか…もっと明るかったですよ?私たちともよく遊んでくれて、面倒見の良いお姉ちゃんみたいな感じですかね…」
そうなのか…今のちーちゃんが本当のチーちゃんかと思ったが、そうではないみたい。
ああ、謎は深まるばかりだ。
「あ、昔ってわけではないんでますが、花澤先輩のご両親離婚されたらしいですよ。」
「え?」
「確か三年前の冬って言ってました。」
三年前の冬….
もしかして、その離婚に何か原因があるの?




