訪れの鈴蘭 3
第三回花澤ちり脳内会議:議題【傷つけた双子の対処法】
ちり1・3『はぁぁぁぁ…』
ちり2『おい、この会議開かれすぎじゃねぇか?』
ちり4『うーん…まあ仕方なくね?さっきシリアスな感じで終わったからここで笑いどころつくんなきゃ。』
ちり2『やめろ。裏話をするな。』
ちり3『何であんなこと言っちゃったんだろ…絶対傷つけたよね…もう自分嫌い…私なんていないほうがいいんだ…ちょっくら死んでくるわ…』
ちり2『死ぬな、生きろ。』
ちり1『もうこんな会議やめよーよぉ…こんなことしたってロクなこと起こらないよ…はぁぁ…やってらんないっすよぉ…』
ちり2『お前は議長だろ!この状況にツッコむのがお前の仕事だろ!?何で私がツッコミにまわらなきゃいけないんだよ!?』
ちり1『へへー…ツッコミ頑張ってねぇ〜』
ちり2『お前は酔っ払いか!?未成年だぞ!コンプライアンス違反だぞ!』
ちり4『もう帰っていーい?』
ちり2『ダメに決まってるだろ!まだ何も解決してないから!』
ちり5『もしかして皆んな元気ない?走れば元気出るよ!?』
ちり2『お前は私の頭から出て行け!』
ダメだ…私の脳腐ってる…
やっぱりちょっくら死んだほうが良いかも…
「おい、花澤!何ぼっーとしてるんだ!」
恒例の脳内会議中に教卓から怒鳴り声が飛んできた。
あ、やべ。授業中だった。
畜生…よりにもよって授業態度にうるさい林田の授業だったかぁ…
林田。古典教師。ハゲ。チビ。バツイチ。恐らく四十代後半。
世界中のモテない男の成分集めて作られたのが多分コイツ。
「すいませーん。」
ちりは反省ゼロの声で先生に向かって謝った。
確かに授業中にぼっーとしてた私も悪いけど、先生の授業がつまんないからぼっーとしちゃうんだもん。
少しくらい面白い授業をする努力をしてほしいものだ。
「花澤だけじゃない!このクラスは授業中に寝てる生徒も多いぞ!」
先生の言葉は正しかった。
現に今もクラスの三分の一の生徒が夢の中だ。
…じゃあ何で私だけ名指しで注意したんだよっ!
寝てる奴らを起こせよ!私なんて起きてるだけまだましだろ!?
嫌い!こいつのこういうところホント嫌い!
「お前ら今年受験生だろ…内部進学の者も十二月に行われる選抜テストで良い点取らないと希望の学部に行けないかもしれないぞー。内申点も含まれるからちゃんとしろよー」
ニヤニヤしながら脅してくる林田先生に、起きているクラスメイト全員が殺意を抱いた。
そんなんだからお前はバレンタインにチョコ一つも貰えないんだよ!
「じゃあ授業再開すんぞー」
はぁ…受験、ねぇ…
ちりは進路について何一つ考えていなかった。
進学するか、就職するか、それすら決まっていない。
…いやいや今考えるべきなのはすずとらんについてだ。
私があんな事言うなんて想像もしていなかっただろうな…
きっと幻滅したろうな…
昔の私ならきっとあんな事言わなかった。
もっと優しい言葉をかけていた。
…でもあんなこと言った以上、もうすずらんは私に関わらないだろう。
そう考えるとすこしホッとした。
傷つけたことに罪悪感を持っているのは確かだが、二人と関わりたくないのも事実だ。
友達なんて、恋人なんて、ぼっちの私にはいらないもの。
「花澤!しっかり話を聞け!」
「…はーい。」
(何でまた私だけが注意されるんだよ!)
イライラしたちりは握っていたシャープペンシルを強く握りしめた。
…後でタバスコ買ってこよ。
アイツの頭皮に塗りまくってやる!