いざ球技大会! 6
「二人ともどうしたの!?早くしろって先生が言ってたよ。」
「ごめんなさい。すぐに再開させるわ。」
千紗はクールにそう言うとバッターボックスに入った。
ふ、不安しかない…
練習から千紗のプレーは見ていたが、とてもじゃないが上手いとは言えない。
ハッキリ言おう、千紗は運動音痴だ。
それでもこの練習期間で何とか上達したのでレギュラーとして球技大会に参加している状態。
失礼だが、そんな千紗が塁に出れるとは到底思えない…
「ツーボール、ツーストライク!」
ああ…終わった…
ピッチャーマウンドでドヤ顔を決めるすずに私は絶望した。
…今日はこの寂しさを埋めるために焼肉食べ放題でも行こう、うん。
敗北を覚悟し、試合から目を逸らした時だった。
コツンッ。
バットとボールが接触した音が聞こえた。
打った…音じゃない…?
再び試合に目を向けると、そこでは信じられないことが起こっていた。
「山下さんすごい!セーフじゃん!」
「バンドなんか練習してないのに…すごいね!」
なんと千紗はサード方向にバントを決め、一塁に出塁をしたのだ。
ち、千紗ーー!
思わず彼女に駆け寄りそうになった。
よくやった…!よくやってくれたよ、千紗!
嬉しすぎて叫び出しそうになるくらい私は嬉しい!
しかしツーストライクでバント…
あいつ、ギャンブラー過ぎるだろ…!
【花澤ちりの説明コーナー】
ツーストライク時にバントを行い、ファールになることをスリーバンド失敗と言う。
スリーバント失敗になるとワンアウト扱いになるのでツーストライク時にバントをすることは危険。
以上!
「次は花澤さんだね…」
「ここで打てたら勝てるかもね…」
「花澤さん!頑張ってね!」
チームメイトからの声援を背中で受けてすっかり手に馴染んだバットを握り、私はバッターボックスへ向かった。
風も良好、私の気持ちも良好。
大丈夫、今の私ならイケる…!
バッターボックスに立つと、真剣な目つきで私を見つめるすずが目に入った。
ふっ…確かにすず、君は強い….
だがしかし…私はお前の上を行く!!
「おいピッチャー、時間ないからさっさと投げろー。」
空気を全く読めない審判が注意を投げかけた。
…今そういう雰囲気じゃないじゃん!空気読めよ!バカ!
「あ、すみませーん。」
全く悪びれない様子のすずはそう言うと投球モーションに入った。
打つ打つ打つ打つ打つ打つ…!
自己暗示を唱えながら、バッドを握る力をさらに加える。
ど真ん中、ストライクのボール!
相変わらずスピードは速いけど…今の私ならきっと打てる!
カッキーン!
思いっきり振ったバットは打球をとらえ、高く飛んだ。
打球は伸びる伸びる伸びる…!
これはいっただろ!!
そう確信させた打球は事前に設置されていたホームランコーンを超した。
「よっしゃぁぁぁぁ!!!」
私は周りから引かれるレベルの雄叫びを上げた。
勝った…勝ったのだ…!
報われた!私の放課後の全てが報われた!!
長かった…ここまで長かった…!
思い返せばあれは二週間前…勝負を受けた日から始まった…
「花澤、さっさと走れ。ホームまで戻ってきて始めて一点だからな。」
…だから今感傷に浸ってたじゃん!
何なの!?絶望的に空気読めないな、審判!




