いざ球技大会! 2
「なるほど…」
山下さんは全て話してくれた。
昨日の放課後のこと、どんな話をしたか。
こいつ…ヤバイな…
よくほぼ初対面の人とカフェに行けるな…
山下さんクラスではいつも一人だからこっち側の人間だと思ってたけど…
もしかして意外と陽キャなのか…!?
…な、なんか裏切られた気分。
「嗅ぎ回るようなことをしたのは申し訳ないと思ってるわ。」
「いや別にいいんだけどさ。」
山下さんも罪悪感を感じたのか、素直に謝ってくれた。
いやそこじゃないんだよ、山下さん。
嗅ぎ回っていたことは正直どうでもいい。
「今回の勝負…手を抜いたら承知しないからね…」
「うっ…し、しないわよ…そんなこと…」
「目を晒すな!ちゃんと私の目を見て言え!」
私は眉間にシワを寄せ、山下さんに詰め寄った。
私の敗北は山下さんにとって得しかない。
だとしたら私が負けるように仕向ける可能性は十分にありえる。
「まぁ…ちょーとくらい手抜いてやろうと思ってたけど…」
「思ってたんかい!」
「でも流石にそれは…友達に対して失礼かなって…」
「え?」
山下さんから出た意外な言葉に私は動揺した。
「ちり一生懸命だし…協力しないのは友達としてどうかと思ったの。」
「や、山下さん…」
「まぁ…負けて欲しい気持ちもあるんだけど…」
あるのかい…
ちょこーーっとだけ感動してたのに…
でもこれは山下さん、目が真剣だ。
たぶん…嘘ついてるわけではないんだろう…
山下さんは申し訳なさそうに俯いたまま、私の言葉を待っていた。
「はぁ…まぁいいよ。ちゃんとやるならいいわよ。」
「や、やるわよ!学級委員としてちりの友達として、クラスに貢献するわ!」
ムキになった山下さんは普段見たことない表情で私に楯突いた。
こんな山下さん、初めて見たかも。
「まぁ…私と山下さんは友達じゃないんですけどね。」
「え、そう言うこと今言う?」
「だって事実だし。私友達欲しくないもの。」
「だから今言わなくてもよくない?」
「でも…私山下さんのこと少し誤解してたかも。」
「は?」
私の中の山下さんは二重人格者で自分の利益のために私と友達になりたいのかと思ってた。
コソコソと私のこと(私のことというより私と双子のことだけど)嗅ぎ回るし、メガネとったら別人格のヤツが現れるんだもの。
「千紗は思ったより友達思いのいいヤツね。」
友達になりたいとは思わないけど、話し相手くらいにならなってもいい。
それが今の私の精一杯の人との距離感。
「何それ…ちりは私のこと一体どう思ってたのよ。」
「二重人格者。」
「違うから。私は私だから。」
「だってメガネとったら人格変わるじゃん…」
「はぁ…これはスイッチみたいなものよ。オタクバレ防止のために心がけてるの。」
はぁ…本当に意味わからないヤツ…
二重人格に気付いてないだけじゃないのか…?
「ほらそろそろ開会式が始まるわ。学級委員が遅れるなんて洒落にならないわ。」
そう言うと千紗は集合場所に走り出した。
いつも無表情の千紗だが、私にはすこし微笑んでるように見えた。
「ちょっと待ってよ!」
私も千紗に遅れないよう、試合の体力を温存しつつ走り出した。




