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いざ球技大会!

「ちり、やる気満々ね。」

「あったりまえよ!」

「準備運動は開会式でやるわよ。」

「念には念を入れておくのよ。もし試合中にアキレス腱が切れたらどうするのよ。」


本日は晴天。

絶好の球技大会日和って感じだ。


五月の太陽は春の陽気なんて微塵も感じさせないほど熱く私たちを照らしている。

開会式開始十分前、私のやる気は満ち溢れている。


我が学園の球技大会は一日かけて行う。

朝はグラウンド集合。

開会式終了後は体育館とグラウンドで全学年ミックスのトーナメント開始だ。


我ら三年A組の初戦の相手は二年C組。

ふっ…下級生か…

悪いがぶちのめさせてもらうぜ…


「ちり、顔が怖いわ。」

「へ?」

「完全に悪い顔をしてたわ。」


こんな日にも眼鏡をかけている山下さんは私を冷ややかな目で見ている。


「いや、メガネとったアンタよりはマシだと思う。」

「それは否定できないわね。」

「あ、自覚あったんだ。」


意外だな…自覚してるなら直せばいいのに。

やっぱりコイツは二重人格なのかもしれない…


…いや今はそんなことどうでもいいんだよ!

球技大会ですよ!いよいよ球技大会なんですよ!


今日で私の今後の高校生活が決まると言っても過言ではない…!


「あ!ちりちゃーん!」

「すず!待ちなさいって!」


グラウンドの隅から本日の敵である2名の声が聞こえてきた。

すずは私に手を振りながらこちらへ向かって走り出した。

らんもすずに続き、こちらへ向かってきた。


「ちりちゃん!ちりちゃん!」

「うるさい、今日はお前は敵だ。」


すずは私に近づいてくるなり、私に抱きつこうとして来た。

勿論私は華麗に交わしたけど。


こうしてみるとすずは犬みたいだ。

嬉しくて全力で振られているしっぽが見えるもの。


「はぁ…はぁ…すず!日焼け止めまだ塗ってないでしょ!」

「えー面倒くさい…」

「ちゃんと塗りなさい!アンタいつも日焼けして痛い思いしてるでしょ!?」

「面倒くさいー!」


らんは私たちに駆け寄ると、息切れ混じりですずに説教をし出した。

そんならんに対してすずはブーブー文句を言っている。


こうしてみると双子というよりオカンと息子だな。

らんは面倒見がいいな…というより世話焼きなのか?

一応姉はすずのはずなんだけどなぁ…


「あ、千紗先輩もおはようございます!」

「おはようすずさん。らんさんの言う通り日焼け止めはしっかり塗った方がいいわよ。」

「えぇー千紗先輩まで!?」


…ん?

コイツら面識あったの?

二人が普通に話している光景に違和感を抱いた私は二人を交互に見た。

な、何でそんな昔からの友人のように話してんの…?


わ、わからん…コイツら接点ないだろ…?

ハッ…!もしかしてこれが陽キャのコミニケーション能力なのか!?


「とにかくもう集合だからクラス戻ろ?」

「えぇー!?まだちりちゃんとお話ししたい!」

「ご迷惑おかけしてすみません。ほら!戻るよ!」

「ひ、引っ張らないでよ!分かったから!…ちりちゃん!」


らんに連行されかけたすずは私を指差した。


「絶対負けないから!」

「ふっ…こっちのセリフだよ。コテンパンにしてやるわ。」

「ルールは勝った試合数が多い方が勝ち!」

「分かってるわ。」

「絶対負けないからね!」


そう言い残し、二人は自分たちのクラスの輪に戻っていった。


「白熱してるわね…どれだけ昼休みが好きなのよ。」

「アンタ私が昼休み大好き人間だと思って…え?」

「何よ?」

「私、アンタに勝負のこと教えてないよね?」

「あ。」

「あじゃないわよ!何で知ってるの!?」


なのに何故コイツは勝負の内容を知ってるの?

怪しすぎる…

私は山下さんに詰め寄ったが、山下さんは顔色ひとつ変えない。


「あ、私担任に呼ばれてるから。」

「嘘をつくな!」


逃げ出そうとした山下さんの右手を瞬時に掴み、逃げられないよう捕獲した。


「何で勝負のことを知ってるの!?答えなさい!」

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