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球技大会前日

「よし…やれることは全部やれた。後は明日全力で取り組むのみよ!」

「「「おおーー!」」」


自分でもらしくないと思うが、すっかりこのチームのリーダー的存在となってしまった。

だってこの勝負は負けられないから。


たかが球技大会だがやれることは全部やった。

ソフトボール部の子に練習メニューを聞いたり、それぞれに合うポジションを考えたり、練習時間外も自主練をした。


…うん、我ながらバカだと思うわ。

たかが球技大会で。


でも私には絶対に負けられない理由がある…

私の優雅な昼休みを取り戻すためだもの…このくらい屁でもないわ!


「ちり、今日はもう帰るの?」


片付けも終わり、制服に着替え帰ろうとしたところを山下さんに引き止められた。


「うん。明日は本番だから。早く帰って疲れを取らないと。山下さんも今日は九時には寝てよね!」

「そんな小学生じゃないんだから…」

「いいから!今日くらい早く寝ろ!」

「は、はい…」


山下さんに念を押し、早足で教室を出た。

…山下さん、若干ひいてたな。

でも寝不足で実力が発揮できないなんて絶対ダメ。

今までの努力が全て無駄になるもの。


「花澤先輩、お久しぶりです!」

「げ…」


はやく帰ってカツ丼でも食って寝ようと思った矢先、校門で今二番目に会いたくないヤツに出会ってしまった…

ヤツはニコニコしながら私に近づいてきた。


「途中までご一緒してもよろしいですか?」

「断っても付いてくるでしょ、あんたは…」

「勿論です。先輩は私のことよくわかってますね!」

「はいはい…私今日急いでるから。」

「わかりました。」


私は早足で歩き出すが、らんも食らいつくように私の少し後ろを歩いている。

すずと違い、らんはそんなに体力がないのだろう。

まぁらんのことは今どうでもいい…

今考えるべきは明日のことのみ。


「あ、そういえばうちのバカすずと勝負してるんですよね?花澤先輩の昼休みをかけて。」

「うん。絶対負けない。」

「はい、頑張って下さい!」


自分の姉は応援しないんかい。

まぁ確かに今回の勝負にはらんは関係ないもんなぁ。


…ん、待てよ?

この勝負に勝ってもらんは私を追い回すってこと!?


「おい、らん。」

「ちょっ…どうしたんですか?急に立ち止まって…」


らんは急に止まった私にぶつかったらしい。

痛そうに鼻を抑えている。


「今回の勝負内容、すずから聞いたか?」

「はい…すずが勝ったら週一でお昼ご飯一緒に食べる。花澤先輩が勝ったらすずはもうお昼休みに押しかけるのをやめるんですよね?」

「…もし私が勝ったら、あんたも押しかけるのやめる?」

「やめるわけないじゃないですか。」


こ、こいつ…!

ニコニコしながら私が今一番恐れていたことを言いやがった…!


「何で!?」

「何でって…すずと花澤先輩の勝負に私は関係ないですよね?」

「そ、そうだけど…」

「大体、私はそんなギャンブル性のあることしたくないんです。やるなら確実に、これが私の戦略です!」


はぁ…じゃあもし勝ったとしてもらんの魔の手からは逃げられないってことか…


先程まであんなに燃え上がっていた闘志が冷めていくのを感じる。

今まで何のために頑張ってきたんだろう…


ていうか何故私はこんな簡単なことに気づかなかったのか…

馬鹿すぎんだろ、私…

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