千紗とすず
「お待たせしました!すみません、部活が長引いちゃって…」
「平気よ。座って。」
色葉すずさんはバスケ部。
きっと片付けでもしていたのね。
「先輩は何にします?」
「私は先に頼んであるの。私から誘ったんだし、ここは奢るわ。好きなものを頼んでいいわよ。」
「本当ですか!?やったー!」
すずさんは満面の笑みで喜んだ。
なんていうか…素直な子って感じね…
メニューを見ているすずさんの顔はとても楽しそうだ。
コロコロ変わる表情が愛らしいというか…
後輩というより妹って感じね…
「すみません!イチゴのパンケーキ生クリーム増しとメロンソーダお願いします!」
すずさんは真っ直ぐ手を上げて店員さんを呼び、ハキハキとした声で注文をした。
メロンソーダに生クリーム増し…
さ、砂糖の塊…甘いものフェスティバル…
すずさん恐るべしだわ…
「千紗先輩は何頼んだんですか?」
「私は紅茶を頼んだわ。」
「え!?ここのパンケーキ美味しいんですよ!?食べないんですか!?」
「…流石に夕飯前に食べられないわよ。貴方こそよく食べれるわね。」
「甘いものは別腹ですよ!」
満面の笑みでそういうすずさんが恐ろしく思えた。
凄いわ…こんな細身なのに…
太らない体質なのかしら?
それとも運動しているから?
「それで話って何ですか?」
「私の話は後でいいわ。長くなるもの。先にちりについて聞いていいわよ。」
「え!?いいんですか!?」
すずさんは先ほどよりもっと輝かしい笑顔を見せた。
ちりのことになるとこんな顔をするのね。
分かり易すぎる態度に笑いそうになったが、必死に堪えた。
「あの!ちりちゃんっていつも何してるんですか!?」
「何って…教室では本を読んでることが多いわね…後は委員会の仕事。」
「そうなんだぁ…勉強はどんな感じなんですか!?」
「授業はいつも寝てるわよ。」
「そっか!私とお揃いだ!」
…それはお揃いと言っていいのか?
私から見たちりは真面目だけどどこか不真面目。
校則は絶対守るくせに授業中寝たり、学校行事をサボりたがる。
友達になって二週間だけど彼女についてはまだよく分かっていない。
ちりについては入学時から知っていた。
高校からこの学園に通い始めた私でも知っているほど彼女は目立つ生徒だった。
でも今じゃすっかり目立つことを嫌い、人を避けている。
もちろん何故ああなったのか気になる。
でも私はそれ以上に気になることがある。
「はぁ…ありがとうございます!ちりちゃんのことを沢山知れて良かったです!次は千紗先輩の番ですね!」
「…貴方とちりについて聞かせて欲しいの。」
「…へ?」
「ちりは貴方たちを避けている理由がよくわからないの…どんな理由で貴方たちはちりを追いかけているの?ちりは貴方たちのこと話してくれないから…」
私が知りたいのはちりと双子の恋模様。
どんな告白をされたのか、ちりのどこが好きなのかetc…
私はすずさんの言葉をじっと待った。




