ちりVSすず
「球技大会についてです。練習は今日の放課後から出来ます。三年生は練習日は月、水、金曜日。バスケは体育館、ソフトボールは指定された場所の校庭でお願いします。各自で話し合って練習メニューを決めてください。」
副委員長になってはじめてのホームールームは球技大会の種目決め。
と、いってもほとんど山下さんが仕切ってくれたから私は板書してただけだけど…
球技大会。この学園での行われる新学年初めての行事だ。
主な目的はクラスの親睦を深めること…らしい。
そのせいかこの学園の球技大会は少しめんどくさいのだ。
種目はバスケとソフトボールでこの二つの部活動に所属している人は同種目に参加は不可。
その他の人は好きな種目を選べる。(人数制限あり)
放課後の練習は週三で行われ、強制参加。
練習がある日の部活動は禁止とされる。
つまり、非常に面倒くさい行事なのだ。
てなわけで私は比較的サボれるソフトボールを選択した。
上手く半々に分かれることができ、平和的に種目決めが出来た。
うん、そこまではいい。
だけど問題が一つある。
「練習は私とちりが仕切ります。まずは各自で準備運動をお願いします。私と花澤さんは体育科から道具を借りてきます。」
「「「はーい。」」」
クラスの半分が千紗とちりを囲む形でグラウンドに集まった。
テキパキと仕切る千紗に対し、クラスメイトは面倒くさそうに返事をした。
まぁそりゃそうだよねぇ…面倒くさいよなぁ…球技大会…
しかもソフトボールなんてサボりたい奴らの集団だもんなぁー。(ちりの偏見です。ソフトボールプレイヤーを侮辱してるわけではありません。)
「ちり、遅い。早くしないと道具全部取られるわよ?」
「へいへーい。」
私だってサボりたいよ?
でも副委員長という名の雑用のせいでこのチームの副キャプテンになってしまったのですよ…はは…
ちりはスタスタと早足で歩く千紗の一歩後ろをため息まじりで歩いていた。
もちろん、このチームのキャプテンは山下さん。
本来は体育委員が適任なんだが、うちのクラスの体育委員は二人ともソフトボール部なので自動的にこの球技大会はバスケ参加になる。
つーわけで私達が仕切るハメになっているのだ、本当に帰りたい。
「あとさ、なんで名前呼び?」
「友達なら名前で呼ぶものでしょ?」
千紗は歩く速度を変えず、後ろから聞こえるちりのだるそうな声にさらりと答えた。
相変わらずメガネをかけた千紗はクールだ。
「いや友達になる気ないんですけど。」
「ちりは友達いないでしょ?ならいいじゃない。お弁当一緒に食べれるわよ?」
「結構です。」
「じゃあ私に何して欲しい?」
「副委員長から解任して欲しい。」
「それは無理よ。私とちりの接点がなくなる。」
「私は早く無くして欲しいです。」
ちりと千紗は体育科に着くまでずっと喋り続けた。
まぁ喋り続けてたっていっても、ただ淡々と言い合いを続けていただけなんだけどね…
「失礼します。ソフトボールの道具を借りにきました。」
「はーい、テキトーにとってけー。」
千紗がノックから礼まで完璧な態度で体育科に入ると、先生はあくび混じりの声で返した。
あの先生、多分寝てたな…
「これよね?」
「うん。てか重くね?」
二人は【ソフトボールセット 1クラス1つまで】と書かれたカゴを手にとり、クラスメイトが待つグラウンドへ向かった。
多分クラスメイトは準備運動なんかロクにせず、ぺちゃくちゃお喋りに花を咲かせてるんだろうなぁ…
はぁ…なんか腹立ってくる…
「あっ!ちりちゃーん!」
「…げ。」
そんなちりの前にもっと腹の立つ出来事が起こった。
「すず…」
「ちりちゃん!久しぶり!元気!?あのね、私これから球技大会の練習で…」
ハイテンションで今にも飛びついてきそうな勢いで話すすずをちりは重いカゴを持ちながら、適当な相槌を打って聞いた。
内心帰りたいと思いながら。




