カタクリの先へ 4
「何する?何する!?」
「な、なんで…?」
「ん?なんでって…らんちゃん、寂しそうだったから。楽しいことしよう?」
「う、うん…」
まだ表情が晴れないらんに気づいたちりはらんの隣に座り、らんの目を見ながら優しく話し始めた。
「私ね、すずちゃんと遊ぶのも好きだけどらんちゃんと遊ぶのも同じくらい好きだよ?」
「ほ、本当に…?」
「うん!最近らんちゃんとは遊んでないけどね。それでも私はすずちゃんのこともらんちゃんのことも大好き。」
「あ、ありがとう…」
らんはまた不思議な気持ちになっていた。
調子が狂うというか…ちりちゃんと話していると何だか違う自分になったみたい…
「らんちゃんはすずちゃんと一緒にいることにこだわりすぎてるんだと思うよ。」
「だ、だって…らんはすずと一緒にいたいんだもん…すずと一緒だと楽しいんだもん…」
「大丈夫、二人は双子だもん。何があってもずっと一緒だよ?」
「ほ、本当に…?」
「もちろん。だかららんちゃんはそのままのらんちゃんでいればいいの。そしてもっと他の人に興味を持ったら考え方も変わるよ。」
「他に…?」
「そう!だから私とも遊ぼうよ!」
普段の大人っぽいちりとは違う、子供っぽい無邪気な笑顔をちりは見せた。
らんはドキッとした。
「うん…遊ぶ!」
そしてらんもちりと同じような無邪気な笑顔を見せた。
それからの時間はあっという間だった。
トランプして、テレビゲームをして、お菓子を食べて…
遊んでいると、お母さんとすずがちりちゃんの家に私を迎えに来た。
ちりちゃんが私を見つけたときにお母さんに連絡してくれたらしい。
お母さんもすずも心配そうな顔をして私を見てた。
後から聞いた話だけど、お母さんは血眼になって私を探し、すずは玄関でじっと私の帰りを待っててくれたらしい。
二人の顔を見ると安心したせいか大泣きしてしまった。
そして二人も私の顔を見て、泣き出した。
あの時は本当にちりちゃんの家族に迷惑をかけたと思う…
私はお母さんもすずも大好き。
大切な家族、お姉ちゃんだから。
「ねぇ、らんちゃんはどうして私があの公園にいるってわかったの?」
引っ越しをする一週間前、すずが友達と遊ぶ約束をした日に私はちりちゃんと二人でトランプをしていた。
「あー…あの時のことね。まぁ遠くには行ってないだろうと思ってたし、すずちゃんがらんちゃんはこの公園で遊ぶのが好きって言ってたの覚えてたから。」
「後もう一つ、習い事あったんじゃなかったの?」
「んー別に休んだから大丈夫。」
「え!?ご、ごめん!」
「いいのいいの。らんちゃんが無事で何よりですから。」
家族はもちろん大好き。
でもそれ以上に私はちりちゃんのことも大好きになっていた。
私の話を聞いてくれたちりちゃん。
私のことを理解しようとしてくれたちりちゃん。
私を大事にしてくれたちりちゃん。
私にとってちりちゃんはお風呂みたい。
一緒にいるとあったかくて、ぽかぽかして、私を優しく包み込んでくれる。
いつかもう一度ここに戻ってきたときに、私はちりちゃんに好きになってもらいたい。
少しでも、ちりちゃんに近付きたい。
だから私はちりちゃんに好かれる努力をしてきたの。
容姿に気を使ったり、勉強をがんばったり、頼れる大人っぽい子になれるように努力した。
昨日はすずに引っ張られて興奮しすぎちゃったけど…
あ、もちろん今でもすずのことは大好きだよ?
でもちりちゃんのこととなると絶対に引けない。
それくらい私にとってちりちゃんは大切な存在なの。




