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カタクリの先へ

「じゃあ帰りましょ!先輩と二人で帰れるの嬉しいなぁ!」


満開の笑顔を見せるらんの横をちりは警戒心マックスで歩いていた。

昇降口を抜け、校門を出た後も、ちりはらんの様子を伺っていた。


「先輩はなんの委員会に入ったんですか?」

「が、学級委員ですわよ…」

「なんか意外ですね。先輩前に出るのとか嫌いそうなのに。」

「き、嫌いですけど仕方ないじゃないですか…」

「…先輩どうしたんですか?さっきから話し方が変ですけど…」


心配そうな顔してそう言ったらんのほうが変だとちりは思った。

私はまだコイツの二重人格説を疑ってないからな!

ちりはらんに警戒しまくっていた。

そして警戒しまくるあまりに言葉遣いがおかしくなっていたのだ。


「いや…おかしいのはそちらではありませんか…?」

「あ、もしかして急に敬語使ったこと?」


らんはそう言いながらちりに子供らしい無邪気な笑顔を見せた。

その笑顔は昨日見たらんそのものだった。


「そうだよ!なんで?あんたまさか二重人格なの!?」

「だってちりちゃんは一応先輩でしょ?」

「一応ってなんだよ。ちゃんと先輩だからな。」

「昨日は興奮しちゃったのと、すずにつられてあんな感じになっちゃったけど、私はすずより常識があるのでちり先輩には敬語を使わせていただきます。」


らんはそう言い終わると、また上品に微笑んだ。

うーん…なんかよく分からないけどすずみたいに追われたりしないならいいや。


「じゃあさ、私らんはもちろんすずとも付き合う気ないの。いい加減関わらないでくれる?」

「それは無理ですね。だって私はちり先輩のことが大好きですから!」


らんはドヤ顔を決めてちりにそう宣言した。

…コイツもダメか、話が通じない。

付き合う気がないって日本語が分からないのか?


「まぁすずには諦めるよう言っておきますね。」

「いや出来ればあんたにも諦めて欲しいんですけど…」

「…思ったんですけど、なんでダメなんですか?私たちのこと、嫌いじゃないんですよね?」

「うん。まぁ嫌いじゃないよ?妹みたいに可愛がってたし。」


その気持ちには一切嘘がなかった。

確かにちりは人と関わりたくない人間だ。

だけどすずとらんのことを嫌いになどなっていない。

ただ関わりたくないだけ。

それがすずだからとからんだからとかではなく、ちりはどんな人間でも関わりたくないのだ。


「でも私嫌なの。友達とか、家族とか、恋人とか…そういう関係性が嫌いなの。」


ちりはらんの目の目を見ずに、真っ直ぐ前を見ながら嘘偽りない気持ちを告げた。

まだ生徒の多い通学路でらんはこぼれ落ちそうな涙をグッと堪えた。


(ここで泣いたら目立っちゃう…ちりちゃんに迷惑だけはかけたくない…)


らんはちりの言葉がショックだった。

付き合う気がない、という言葉よりショックだった。


(だってちりちゃんと…もう友達ですら居られないってことなんでしょ…?)


「…ちりちゃん、変わったね。」

「うん。私にも色々あったんだよ。」


らんはそっとちりの横顔を見た。

ちりの目はどこか寂しそうでずっと遠くを見ているように感じた。

そんなちりを見て、何故からんは笑っていた。


「それでも私は、ずっとちりちゃんが好き。大好き。」

「…はぁ!?」


ちりは笑ったらんの顔を見て困惑した。

本当に意味がわらからん…コイツらなんなの…?

私の何に惹かれてそんなことが言えるの!?

自分がモテる原因が全く分からない。


「…一応聞くけど、あんたは何がきっかけで私を好きになったの?」


はぁ…結構ひどいこと言ってるつもりなのに…メンタル強すぎるだろ…

呆れているちりは念のためらんに聞いてみた。


「えっとね…あれは私が小学三年生の頃…」


はぁ…まだまだ帰れなさそうだな…


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