隣のカラー 2
「じゃあホームルーム始めるぞー。」
眠そうな林田が教卓に立ち、六限目のホームルームが始まった。
そんな中、ちりはまだ山下さんの様子を伺っていた。
そうなんです、まだお礼を言えてないんです!
ああぁぁぁ!自分が嫌になる!お礼くらいさっさと言えや!
山下さんはいつも通り背筋をピンと伸ばし、真っ直ぐ前を見ていた。
「今日は委員会を決めるぞー。」
ちりはハッとした。
そうだった…今日はこれのために来たのだった。
学級委員と体育委員を回避するために…!
忘れもしない、去年の委員会決めの日…
風邪をひいて学校を休んだ私は、体育委員会に勝手に加入させられていたという悪夢…
この学園の中で一番辛い委員会は学級委員、その次が体育委員。
忘れもしない…去年の体育祭、全校生徒の前で準備運動をさせられたこと…
体育の授業での雑用の日々…
あんなの体育科の奴隷でしかない!
だから今日だけは休むわけにはいかなかった!!
あんな思いはもう二度としたくないから!!
「立候補は誰かいるかー?」
林田の間抜けな声が教室ないに響いた。
勿論、学級委員長なんて誰がなるものか。
クラス全員がそう思い、林田の声を無視する…と思っていた。
「はい。私やります。」
ちりは右の方から手が上がるのを見た。
間違いない、山下さんが手を挙げたのだ。
い、意外…まぁ見た目は学級委員長ぽいけど…
学級委員なんて担任の奴隷でしかないのに…山下さん凄いな…
ちりは山下さんに尊敬と感謝の目線を送っていた。
中等部の時、学級委員長をくじ引きで決めるということも味わってきたちりにとっては立候補者がいることはとてもありがたいことだった。
よし、あとは体育委員さえ回避すれば大丈夫だ!
一番いいのは図書委員なって、昼休みを図書室でのほほんと過ごせることだ。
「お、じゃあ委員長は山下でいいな。次は副委員長決めるぞー。」
うん、これなら大丈夫。
何故なら去年副委員長をやっていた子がいるからだ。
きっと、彼女が立候補してくれるだろう。
と思っていたが、クラスメイトは誰一人として手を挙げなかった。
「何だ?誰もいないのか?川崎はどうだ?去年やってただろ?」
「嫌です。やりません。」
そう言ったクラスメイトは山下さんを見ていた。
多分朝のことがネックになっているのだ。
私的には山下さんは救世主だけど、他の人ならマイナスのイメージしか持たないだろう。
マジかぁ…副委員長やらないのか…これは予想外だった…
まぁくじ引きとかジャンケンになっても負けなければいいこと…
「先生、誰もいないなら指名してもいいですか?」
「おーいいぞーさっさと決まるなら何でもいいぞー」
山下さんは手を上げながら席を立ち、そう提案した。
え!?し、指名!?
その提案にクラス中がざわめき出した。
まぁ、私は指名されないだろう。
ぼっちだもの。前に立つような人じゃないもんな。
ちりは謎の安心感を持っていたが…
「副委員長は花澤ちりさんにお願いします。」
「え、は…わ、私っ!?」
山下さんはくるっとちりの方を向き、そう言った。
は、はぁ!?何で私なの!?
山下さんの意図がわからない…
ちりの頭はまたパニックに陥った。
最近私、パニックになりすぎじゃない!?
「お、じゃあ副委員長は花澤に決定だな!」
林田がパンっと手を叩き、そう言った。
え、え!?これで決定しちゃうの!?
ちりは何か言おうと思ったが、林田の発言とクラスのちりに向ける安堵の目線から言葉を飲み込んでしまった。
「次は体育委員会から決めるぞー!あとは学級委員の二人、よろしくな!」
林田ぁぁぁ!!
お前は本当に許さないからな!
何の反抗も出来ないちりはあくびをしながら教卓から降りる林田を全力で睨みつけた。




