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隣のカラー

鳴り続ける目覚まし時計を止め、ちりはいつも通り六時半に目を覚ました。

カーテンからこぼれる朝日がちりの目を覚ましていく。


あ…今日も学校行かなきゃ…

学校…がっこう…学校!?

ちりはすっかり忘れていた昨日のクラスで起きたことを思い出し、顔が青ざめていった。

私は昨日…クラスメイトから走って逃げるという奇行をしてしまった…




第四回花澤ちり脳内会議(サミット):議題【今後の学校生活】


ちり1「はぁ…何故あの時私はあんなことをしてしまったのでしょう…」

ちり3「い、虐められる…責められる…殺される…」

ちり4「あっはは!みんなネガティブすぎだってー!」

ちり2「その通りだ!過ぎたことを悔やんでもしかたねぇ…今後どうするか考えろや!」

ちり1「そうね…その通りだわ。今後の対策を練りましょう!」

ちり3「ううっ…学校なんか行きたくない…休んじゃおうよぉ…!」

ちり4「それなーそれが一番いいよねー」

ちり2「いいのかよ…出席日数足りなくて留年になるぞ?」

ちり1「それはダメよ!留年だけは!学費がないことくらい私ならわかってるはずでしょ!?」

ちり2・3・4「………」

ちり1「とにかく何か言われたら謝るしかないわ…体調不良とか適当な理由をつけて。」

ちり2「それに、気を使ってクラスの奴らが何も言ってこない可能性だってある。そしたらいつも通り振る舞えばいいだけだ。」

ちり3「でも…取り敢えず今日は休みませんか…?私…吐きそうなんです…」

ちり1「それはダメよ…だって今日のホームルームの内容…まさか覚えてないなんて言わせないわよ…?」

ちり2・3・4「あっ…!」


そ、そうだったぁ…

あれのある日に休む訳にはいかない…

去年痛い目にあったじゃないか…

ああ…憂鬱だ…




電車に揺られて三十分、駅から歩いて十分。

学園についたちりは教室のドアの前で立ち止まっていた。

大丈夫…何か声かけられたら適当にあしらうんだ…

よしっ!いくぞ!


ちりは頬を両手で軽く叩き、覚悟を決めて教室のドアを開いた。

しかし、クラスメイトたちはおしゃべりに夢中でちりが登校してきたことなど気付きもしなかった。


よ、よかった…このまま席についておとなしくしてよう…

と、ホッとした瞬間だった。


「あ、花澤さん!おはよう!」

「へ、あっ…お、おはよー…」


いつもは私のことなど気にも留めていない後ろの席の子から急に挨拶をされた。

な、なんなんだよ…!いつもは挨拶なんてしてないじゃん…!


「あのさ、昨日はどうしたの?てかあの双子何者?やっぱり花澤さんの彼女なの?」

「え、あ…それは誤解で…」

「あっ!花澤さん!おっはよー!昨日のこと聞かせてよ!」

「あ、あの、だからあれは誤解で…」

「えー何?昨日何があったの?」

「実はね、花澤さん…」


後ろの席の子がちりに話しかけたのをきっかけに、他のクラスメイト達もちりの周りに集まってきてしまった。

きっと皆んなちりが登校してきたことに気づいていて、話しかけるタイミングを見計らっていたのだろう。

しかも最悪なことに昨日の出来事を知らない子達まで集まってしまっている…


ちりは誤解を解こうと話そうとするが、周りの声が煩く、勝手に盛り上がっているため、ちりの声が届くことはなかった。


ど、どどうしよ…

このままじゃ誤解も解けずに、二股野郎で走って逃げた奇行野郎扱いされる…!!


「貴方達!煩い!少しは静かにしたらどう!?」


突然誰かが立ち上がり、大声を張り上げた。

その声は慌てるちりと騒がしいクラスメイト達を一瞬にして沈めた。

声の主はちりの右隣の席の子だった。


「あ、山下さん…」

「もうすぐショートホームルームが始まるわ。さっさと自分の席につきなさい。」

「う、うん…ごめん…」


彼女はメガネ越しでクラスメイト達を睨みつけ、叱責した。

美人だが少しキツい顔をしてる彼女の睨みはとても怖く、ちりは鳥肌が立った。


多分クラスメイト達も恐怖を感じたのか、すぐにちりから離れ、自分の席に戻っていった。


あれ…もしかして助けられた…?

チラッと隣の席を確認すると、彼女はもう自分の席につき、本を読み始めていた。


とても姿勢が良く、長い髪がよく似合あう彼女はドラマに出てくる文学少女そのものだった。


あ、お礼言わなきゃ…!

なんかよくわかんないけど助けてもらったし!


…でもなんで声かけよう。

名前は確か…えーっと…山下さんだ。

今声かけた方がいいよね?

でも本読んでるし、邪魔しちゃ悪いよね。

でもしばらくしてからお礼言うのも変じゃない?なんで今更って思われそう。

でも邪魔するのもなぁ…嫌われるかもしれないし…


「お、今日は皆んなちゃんと席ついてるな。じゃショートホームルーム始めんぞー。」


いつの間にか教卓にいた林田を見て、ちりはハッとした。

ヤバイ…また悩み過ぎて自分の世界に入り込んでた…


念のため隣を確認すると、山下さんは既に本をしまい、林田の話をしっかりと聞き込んでいた。


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