第3話 お前、凄いやん!
「なっ、何だよ、お前!? 何か文句あるのかよっ!?」
タケシは只ならぬオーラを漂わせているヒトヤンに少し焦りながらも突っかかってきた。
「一つ聞きたいんやけどなぁ……? 一体、アイツはどこから四人分のバックを持ちながら歩いてきたんや?」
タケシはヒトヤンからの予想外な質問に戸惑いながらも、こう答えた。
「きょ、京都駅からに決まってるじゃねぇかっ!!」
「なっ、何やて~っ!? きょっ、京都駅からやて―――っ!?」
ヒトヤンの驚きの声はタケシに更に焦りの気持ちを与えたが、ヒトヤンに対して敵意を抱いているタケシは焦りの気持ちを抑えながらヒトヤンに言い返す。
「だ、だから、何だってんだよっ!?」
ヒトヤンはうつむき、少し間を置いてからスクッと顔を上げてタケシにこう答えた。
「いや~っ!! アイツ、凄いな~っ!! 京都駅から四人分のバックを持ってここまで来たんやろっ!? 凄いわ!! 凄すぎるわっ!! なぁ、ロミロミ達もそう思わへんかっ!?」
急に『ロミロミ』と呼ばれ、それが自分の事だとは直ぐに気付けなかったヒロミだが、ヒトヤンの視線が自分に向けてだったので、やっぱり私の事? と思いながら、慌てて返事をする。
「えっ!? ああ、そうね。私もタイチロウ君は……す、凄いと思うわ!! ねっ、みんな!?」
ヒロミの問いかけに他の女子三名も慌てて同調しだした。
「そっ、そうよね!! わ、私もタイチロウ君、力持ちで凄いと思うわ!!」
「うん、私もそう思うわ!!」
「私も同じ凄いと思う」
まさかの展開にタケシや他の男子三名は開いた口が塞がらない状態であったが、ヒトヤンの友人で『コメコメ』と呼ばれている彼は最初からそうなる事が分かっていた様な表情でニヤリとしていた。
「フッ、やっぱりそういう展開になってまうか……」
コメコメがそう呟くのと同時にヒトヤンは『タイチロウ』の所に駆け寄り、満面の笑顔でこう言った。
「お前、凄いな~っ!! 大した奴やわ~っ!! 京都駅からココまで、結構な距離あるのに、ようココまで一人で四人分もの荷物を運んできたな~っ!! 俺、お前の事、めっちゃ尊敬するわ~っ!!」
急に見知らぬ少年が自分の所に駆け寄って来て、いきなり『凄い』だの、『尊敬』するだのと、今まで誰にも言われた事の無い『誉め言葉』を言われて戸惑うタイチロウだったが、不思議と嫌な気分にはならない自分がいた。
生まれて初めて赤の他人に褒められたのだから……
「きっ、君は誰なんだいっ!? 急に僕なんかに話しかけてきてさぁ。地元の人なのかい? それとも僕達と同じ『修学旅行生』なのかい??」
タイチロウは目を丸くしながら、ヒトヤンにそう問いかけた。
しかし、ヒトヤンはあまり人の話を最後まで聞かない悪い癖があるので、すぐさまタイチロウに話かけ出した。
「まぁ、そんな事はどうでもいいやん! それよりも俺はお前が『根性』があって『力持ち』で何一つ文句も言わん、『心の広さ』『優しさ』に感動したから、お前の同級生達に、お前の凄さをめっちゃ伝えたくなったんや!!」
タイチロウは見知らぬ少年にまさかの『誉め言葉攻撃』を喰らい、少しめまいがしそうになったが、なんとか心を落ち着かせながらこう問いかけた。
「こ、これは、何かの『ドッキリ』か何かなの…?」




