第18話 歴史を感じるな!
ヒトヤン達、五人は文化部が活動している『別館』の前に来ている。
どよ~~~~~ん……
「なっ、何だ? この思わず『どよ~ん』って言いたくなるような『別館』は!?」
ケシケシが『別館』に向かって大きな声で叫んでいる。
「ふん、だからお前は『二流』なんだよ! お前にはこの『レトロ感』が分からない様だな!?」
「なっ、何が『レトロ感』だっ!! ただ古臭い建物ってだけじゃねぇか!!」
「オイ、ゲキゲキ? 『レトロ』って、簡単に出来て美味しいアレの事か!?」
「へっ? 『レトロ』が美味しいアレだと?」
「ヒトヤン!! お前が行っているのは恐らく『レトルト』の事だよっ!!」
三人が大騒ぎしている中、ロミロミも少し驚いた声で太一郎に質問をする。
「ホ、ホント古い建物よねぇ……。ねぇ、太一郎君? この『別館』は結構古い建物だと思うんだけど、いつ頃建てられたものなの?」
「えっ? ああ、そうだね。皆が引いちゃうのもよく分かるよ。実はこの『別館』が『名染伊太学園』創立時の『本館』なんだよ」
「え――――――っ!? そうだったの? 全然知らなかったわ……」
「この建物は『大正時代』に建てられたものらしくて、僕のお爺ちゃんで、この学園の『創立者』の『名染伊太助が『教師』を辞めて、借金をしてこの古い建物を購入したのが始まりらしいよ』
「ほぉぉぉ!! そうなんや!? タイタイの爺ちゃん、めちゃくちゃカッコエエやん!!」
「そっ、そっかなぁ……?」
「そやで!! だってタイタイの爺ちゃんアレやろ? 教師を辞めてまで、この学園を創ったんやろ? そこまでして『学校』を創ったんやからな!! 絶対なんか目標があったんやと思うし、めっちゃカッコエエやん!!」
「有難う、丘司那一志君……だったかな?」
「へ? そ..、そうですけど……あっ!?」
「あっ!? おっ、お父様!!」
「 「 「 がっ、学園長!!?? 」 」 」
「バカモン!! 太一郎!! 学園内では『学園長』と呼べとアレだけ言っただろっ!!」
「スッ、スミマセン、おとう、いえ、学園長……」
「まぁ、そんな事より丘司那君……。君は聞いてた通りの子だね?」
「えっ? どんな風に聞いてたんですか?」
「君はどんな事に対しても前向きな発想で、人を褒めるのが上手だとね……」
「そうですかねぇ? でも俺は基本的に人の悪口を言うのは嫌いやし、聞くのも嫌ですね」
「フフフ……本当に君は……ティ部向きの子だな……」
「えっ? 学園長、今何て言いました?」
「いや、何でもない。気にしないでくれたまえ……」
「はぁ、ところで学園長は、何でこんな所にいてはるんですか?」
「ん? 私か? そうだね。日頃は『別館』には来る用事は無いのだが、入学式の日だけは此処に来るようにしているのだよ……」
「えっ? 何でなんですか?」
「此処はね、私が青春時代を過ごした思い出の場所でね。毎年、入学式の時には『初心』に戻る為に此処に足を運んでいるのだよ……」
「へぇぇぇぇ、そうなんですかぁ……って……ん!?」
「そう、私は『名染伊太学園の一期生』なんだよ」
「 「 「 えっ、え――――――っ!? 」 」 」
学園長が学園の一期生だという事を知り、全員驚いた。
「ハッハッハッハ!! 別にそんなに驚く事でもないだろう? 私の父が創った学園なんだからね。息子の私がこの学園に通う事はあり得る話じゃないかね?」
「い、言われてみればそうですね。ハッハッハッハ!!」
「本当に君は面白い子だ。これからの学園がとても楽しみだよ」
「おっ、俺も楽しみにしてますよ! だってワザワザ大阪から来たんですからね。楽しませてもらわんと、東京まで来た意味あらへんですもん……」
「ところで君達は今から『文化部』の見学に行くんだね?」
「 「 「 はい、そうです!! 」 」 」
「そうか、そうか。うちの学園の『文化部』はとてもユニークな部が多いから、十分に見学をして、そして自分に合った部に入部するのだよ?」
「 「 「 はい、分りました!! 」 」 」
こうして、ヒトヤン達五人は名染伊学園長と別れ『文化部』が活動している『別館』へ入って行くのであった。