第15話 同じクラスだな!
【名染伊太学園 入学式】
「で、あるからして……」
「クックックック……。あの学園長、よくアニメで言ってる入学式の時のセリフを言ってるで!! 『で、あるからして』やって。クックックック……」
「ヒッ、ヒトヤン、静かにしろよ。 聞こえてるぞ……」
ギロッ!!
学園長である『名染伊太郎』がヒトヤンとケシケシの方を鋭い目つきで睨んでいる。
「こらっ、二人共!! 学園長に睨まれているわよ」
ロミロミが小声で二人に学園長に睨まれているのを教えようとしているが、二人は聞こえていない様子である。
「ゴホンッ……」
名染伊学園長は咳を一度してから再び話し出す。
「今年は、いや今年もだね。今年も全国から多くの元気のある生徒達が名染伊太学園に入学してくれたみたいで私はとても嬉しく思います。この学園は『勉学』は勿論の事、『部活動』にも力を入れていますので、皆さん是非、『運動部』でも『文化部』でも構いませんので『部活動』にも励んでくださいね……」
「ほぉぉ、『部活』かぁ……。ケシケシは中学では何か部活に入ってたんか?」
「ヒッ、ヒトヤン、俺に話しかけるなよ!! おっ、俺はサッカー部だよ!! もう話しかけるなよ!!」
「へぇ、サッカー部かぁ……。ケシケシ、めっちゃカッコイイやん!!」
「だから俺に話しかけるなって!!」
「こらっ!! そこの君、静かにしないかっ!!」
「オイオイオイッ!? 入学早々、何で俺だけが怒られなくちゃいけないんだよ……」
ケシケシは顔を真っ赤にしながら学園長の方に向きなおした。
「ところでロミロミは中学で何部やったん?」
「えっ、私?」
ロミロミはまさか自分も式の途中でヒトヤンに話しかけられるとは思っていなかったので少し焦った表情をしながら小声で答える。
「私は『新体操部』よ……」
「なっ、何やて――――――っ!? 新体操やって!?」
「こらっ!! そこの君も静かにしないかっ!!」
「だから声が大きいって、ヒトヤン……」
「新体操ってアレやろ? あのレオタードっていうピチピチのやつを着て踊ったりするんやろ?」
「そ、そうだけど、なんかヒトヤンの言い方、イヤラシイわね……」
ロミロミはケシケシとは違う理由で顔を赤くしながら前に向きなおした。
そっかぁ……。皆、中学でも『部活』頑張ってたんやなぁ……
それに比べて俺とコメコメは中学三年間ずっと『帰宅部』やったもんなぁ……
【入学式終了後の教室にて】
ヒトヤン達は教室で担任が来るのを待っていた。
「しっかし不思議やなぁ?」
「何がだよ、ヒトヤン?」
「だって、この学園は全国から集まってるんやろ?」
「そうだけど、それがどうしたんだよ?」
「全国から約五百人くらいが入学してて、何で俺とケシケシとロミロミとタイタイの四人が同じクラスになれたんや!? おかしいやろ? 不思議やと思わんかぁ、ケシケシ?」
ヒトヤンの言う通りである。
ヒトヤン達、一年生は今年、全国から推薦枠及び一般入試合わせて約五百人という大勢の生徒が入学していている。
そしてヒトヤン達一年生は十四クラスまである。
それなのにこの四人が同じクラスになるのは普通に考えて『奇跡的』な事であった。
但し、この奇跡的な事を簡単にできる方法が一つだけあるが、それを知っているのはタイタイこと『名染伊太一郎』だけであった。
「お父様、有難う……」
「ん? タイタイ、何か言ったかぁ?」
「えっ? な、何も言ってないよ!!」
「でも良かったじゃん。知り合いがクラスに三人もいてくれると、私はとても助かるわ。女友達は皆、違うクラスになっちゃったけどさ……」
「俺も中学の時の連れは皆、違うクラスになっちまったよ。まさかよりによってこの四人が同じクラスになるだなんて……」
「そんな喜ぶなや、ケシケシ~」
「よっ、喜んでねぇよっ!!」
「よしっ!! ナイス突っ込みや!! グーやで」
「いちいち俺の突っ込みを褒めるなっ!!」
「あぁぁこれから一年間、賑やかな学園生活になりそうね。フフフ……」
ロミロミは心の中で自分はこの学園を選んだ事に満足そうな顔をして二人のやり取りを眺めていた。