第12話 俺は行かん!
コメコメはヒトヤンが思っていた通りの事を言ってきたので少しニヤリとしたが、直ぐに真剣な表情に戻り、そしてこう答えた。
「ヒトヤン、悪いな…。それはでけへんわ。俺は一緒に東京の高校には行かへん」
「なっ、何でや!? お前んとこ金持ちやし、私立の高校でも大丈夫ちゃうんかいな!? それとも東京弁が嫌なんか?」
「そんなんちゃうで……」
「ほんなら、何でなん? 俺と一緒の高校行くのが嫌なんか?」
「それはもっと違うわ。ヒトヤンがこっちの高校行くんやったら俺も『レベルを下げてでも』同じ高校行くつもりやったしな…」
「『レベルを下げて』って言うのは俺にメチャクチャ失礼やけど、この際、どうでもええわ! ほんなら何で一緒に行ってくれへんねんな!?」
ヒトヤンは納得のいかない表情でコメコメに問いかけた。
「それは……それは、俺は『普通』でお前は『天才』やからや」
「はぁ? 言ってる意味が分からんわ!! コメコメの方が頭良いやないかっ!!」
「いや、そっちの『天才』とちゃうねん。うーん…。なんていうか、お前は色んな意味で天才やねん。誰とでも直ぐに仲良くなれるし、どんな奴でも元気にする事ができるやろ? そういうのを俺は『天才』やと思ってる。でも俺は違うねん。勉強だけやねん。ヒトヤンとは小さい時から一緒やからヒトヤンには突っ込みできるけど、俺みたいな普通の奴は全国から来た奴等相手に何もでけへんと思う」
「いや、そんな事ないやろ!? コメコメかって……」
「あかん! 俺は絶対無理や!! ヒトヤン、分からんやろうけど、俺って結構『ネガティブ』な性格やねんで? お前みたいな『ポジティブ』な性格、凄く羨ましいと思ってたんやから……」
「え―――っ!? 嘘やん? 俺が『ポジティブ』でコメコメが『ネガティブ』やって!? で、それってどういう意味なん??」
「意味、知らんのかいっ!?」
「まぁ、そんな事はどうでもええわ。いずれにしてもコメコメは一緒に東京には行ってくれへんねんな?」
「ホンマ、ゴメンやけど、そうやな。俺は大阪からヒトヤンの事、応援しとくから……」
「分かったわ!! メッチャ残念やけどしゃぁないわな。無理に言うてもアカンしな。よしっ!! キッパリ諦めたわ!! でも夏休みとかは東京に遊びにおいでぇや。それくらいやったらええやろ!?」
「そやな。遊びには行くで。その代わり『ランド』に連れて行ってや!!」
「え~っ!? 『ランド』やて~っ!? で、『ランド』って何や!? 洗濯でもするんか!?」
「それは『ランドリー』やろっ!! っていうか『ランド』も知らんのかいっ!?」
こうしてヒトヤンこと『丘司那一志』は一人、東京の『私立名染伊太学園』に入学する事になるのであった。
チン、チ―――――――――ン……
「アンタ、やっぱり親子やなぁ……まさか一志まで『名染伊家』にお世話になるなんてねぇ……」