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05 この下らない力の使い方




「なんなんだぁ……! なんなんだよぉ、この力はぁッ!!」


「知ってるでしょ? 水を沸騰させるっていう、くっだらない能力だよ」


 そう、本当に下らない。

 下らない能力だけど、人を殺すには十分な力だって、今、分かった。


「ふっざけんな、俺の手が、これ、血が、肉が、沸騰してんのか……!? くっそがああぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 怒りに任せて、無事な左腕の方で殴ってきた。

 きっとあの右手、もう動かないんだろうな。

 ぷらんってしてるし、煮立ってるし。

 こんな苦し紛れのへなちょこパンチ、私でも簡単に止められる。


 パシンッ。


 右手でパンチを受け止めて、


「こっちもさ、やっとこっか」


 力を送り込む。

 それだけで、左の拳も右手とおんなじことになった。

 血が湧き立って弾け、皮が破裂して肉が剥き出しだ。


「あひぃぃあああぁぁぁぁっ!!!?」


 あはは、情けない声出しながら尻もちついた。

 全然面白くない。


「クソっ、クソ、クソォっ!! ショボイ村焼くだけの、小娘一匹殺すだけの、何の武勲にもならねぇくだらねぇ任務で、こんなっ……!」


「……ねえ、今からあんた殺すけどさ」


 転がってる騎士剣を拾い上げる。

 案外重くないな。

 五人殺した分の上昇値で、なんとか戦える程度の力はついてるみたい。


「その前に、あんたにそのくっだらない任務押し付けたカロンってヤツの情報と……」


 両手で柄を握って、ガラレの太ももに思いっきり突き刺した。

 痛めつけるためじゃないよ?

 逃げられなくするためだから。


「ぎああぁぁぁぁぁあっ!!」


 切っ先を貫通させて、深く深く突き刺して、雪の下の地面まで届かせる。

 これでもう、こいつは逃げられない。

 尋問も拷問もやり放題。


「こんなことをした目的、詳細に話してよ。そしたら楽に殺してあげる」


「ぐっ、ちょ、調子に乗るんじゃねぇ……! 俺は、プロの軍人だぞ……! 小娘なんぞに屈するとでも——」


「ふーん、分かった」


 好都合だね、色々試したかったところだしさ。

 この力について、人体を使って色々と、ね。




「もぅ、やめてくれぇ……、早く、殺してぇぇ……っ」


 うん、案外簡単に折れるもんだね、人間の心って。

 あんなこと言っといて、もうなっさけない声出してる。


 足とか腕使って色々試してたら、細かいことが分かってきた。

 まず、これはどうやら魔法の分類になるみたい。

 魔力を使うと疲れるって聞いたことあるけど、使うたびにちょっとずつ疲れてく。


 で、触った場所から一定の範囲に魔力を流すと、沸騰現象を起こせる。

 必ずしも触れた場所だけってわけじゃないみたい。

 沸騰するのは魔力を流した範囲にある間だけで、そこから離れると元の温度に戻る特性も持ってる。


 それから、深さも調節出来る。

 表面は無事なまま、奥の方だけ沸騰させるとか、そんな感じ。

 上手く使えば、致命的な内臓を破裂させることも出来るかも。


「うん、大体わかった。もういいよ。けどさ、死ぬ前にちゃんと話してくれないと」


「話す、話すからぁぁ……!!」


 腕と足、全部煮立って溶けちゃってる。

 胴体は無事だけどね、まだ死なれたら困るし。


「まずさ、なんで私たちがこんな目に遭わなきゃいけなかったのかなぁ……!」


 村のこと、家族のこと、思い出すだけで、こらえようのない怒りが煮えたぎる。

 ガラレが「ひっ!」とか小さい悲鳴上げたけど、今の私そんなに怖い顔してるのかな。


「そ、それは……、勇者が死ななきゃ、次の勇者が出て来ないから……」


「そっか、なるほどなるほど。勇者の力を手放せられるとか、やっぱり嘘だったんだ。……ふざけんなッ!!!」


「ぎゃひっ!!」


 思いっきり顔面を蹴り飛ばした。

 だって、あまりにもふざけた理由だったから。


「じゃあなんで!! 家族まで、村のみんなまで殺したんだよっ!! 私一人殺せば、済む話だろうがっ!!!」


「そ、それは……」


「それは?」


「分からない……。小隊長でしかない俺には、これ以上……。ただ、俺たちにこの事実を、絶対に口外するなと念を押してた……」


「押してたの? カロンってやつが?」


 こくこくと、必死に何度も首を縦に振る。

 嘘はついてないみたい。

 コイツはもう、この件についてこれ以上知らないみたいだ。

 と、なると、次に聞くべきことは。


「じゃあ次。そのカロンのこと、詳しく教えて」


「カ、カロン・ストゥクス少将、かつては数々の戦場で武勲を立てた、叩き上げの軍人だ……。だが、頭が切れたのは若い頃だけ……。今は自己保身に突っ走り、面倒事を部下に押し付ける、クソみてえな豚野郎だ……」


「住居は?」


「王都北部、王城近くの住宅街に、でっけえ屋敷がある……。貴族じゃねえからな、貴族街には家は持てねえ……」


「分かった、もう十分。お疲れ様、死んでいいよ」


 必要な情報は引きだした、こいつはもう用済みだ。

 私の親友を、アルカの体をまるで物みたいに引き摺って、無造作に投げ捨てた。

 直接殺したのも多分こいつだ。

 絶対に生かしておけない。

 せめて一瞬で殺してやろうと、脳みそを破裂させるため、頭に手を伸ばす。


「……なあ、俺も軍人なんだよ」


「なに? もう喋んなくていいから」


「これだけやられて、黙って殺されるほどなぁ……」


 コイツの口元から転がってる短剣まで、もやもやしたものが伸びていることに、今さらながら気付いた。

 まるで糸みたいで、よく目を凝らさないと分からないほど細い。

 話してる間、少しずつ伸ばしてたんだ。

 相手の話に集中してたから、なおさら気付けなかった。

 あれもレンキとかいうヤツなのか。


「物分かりは良くねえんだよ!」


 心が折れたふりをして私の油断を誘ったんだ。

 ペラペラしゃべったのも、私の気を逸らすため。

 見えない糸で引っ張られたみたいに、短剣がガラレの口元まで飛んでって、柄をしっかりと口で咥えた。

 そのまま上半身を起こして、私に向かって斬りつけてくる。


 でもさ、そんな悪あがき通用しないよ?

 先に頭を掴んで、地面に思いっきり叩き付ける。


「がっ……!?」


 その衝撃で、短剣が口元からこぼれ落ちた。


「……楽に殺してあげようとしたんだよ? 本当だよ?」


 冷たい怒りが、どんどん湧き上がってくる。

 ここまで頑張ったんだから、せめて楽に死なせてあげようなんて、甘い考えだったんだ。

 甘さなんて、全部捨てなきゃだめだったんだ。


「私の親友殺したあんたをさぁ、可哀想だなんてちょっとでも思ったのがバカだったよ」


「ひっ、ひぃぃいぃぃ……っ!」


 そんなに怯えた声だして、また芝居かな?

 芝居でも本気でも関係ない。

 力を、脳以外の頭部全体へとまんべんなく送り込む。


「ドロドロに溶け落ちろ」


「あきっ!」


 まず、目玉が両方とも破裂した。

 次に口から、大量の血液がこぽこぽと泡立ちながらあふれだす。


「ぎあああぁぁぁぁああぁぁっ、あぁつ、ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 顔の皮膚が弾け、ドロドロになって溶けていく。

 じっくり煮込んだスープみたいに、ゆっくりと時間をかけて。

 その様子を、私はなんの感情も抱かないまま見下ろしていた。

 最初の方は絶叫しながら悶え苦しんでたけど、次第に動かなくなっていって。

 最後には、顔だったところが赤黒いぐちゃぐちゃの何かになった死体が完成する。


「不思議だな、殺したってのに何とも思わない。悲しくもないけど、嬉しくもない。本当の仇じゃないからかな、こいつも所詮下っ端だしね」


 この命令を下したヤツ、多分ブルトーギュ王だ。

 きっとアイツを殺すまで、誰を殺しても私の心は動かない。

 アイツを殺すまで、私は前に進めない。

 この報いを受けさせるまで。


「……まずは王都に行こう。カロンを殺して、そのあとは……、その時考えればいいや」


 その辺に転がってる殺した奴らの死体から、布を剥ぎ取って包帯代わりにして、傷口にキツく巻いて止血する。

 大柄の男からマントも手に入れ、体と顔を覆うマントとフードに変えた。

 私が生きてるって知られたらまずいからね、顔は隠しておかないと。


 村の方向からは、大量の煙が夜空を登っていく。

 近場の村が、異変に気付く頃かな。

 様子を見に行きたいけど、今戻ったらきっと見つかっちゃう。


「みんな、行ってくるね。戻ってこられるかは分かんないけど」


 王都の方角へ、雪深い森の中を歩きだす。

 いつ終わるとも知れない、道なき道を、たった一人で。




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― 新着の感想 ―
いや、それは1話でスキルが「沸騰」って言われてたし、兵士からもらった水を沸かすことができたからだろうよ… ちゃんと文章読みましょうぜ
こういう追放物は有能なスキルをさも無能なスキルとして認識させないと行けないから難しいよね 本来糞スキルを主人公の創意工夫で有能なスキルに昇華させるのがいいんだけどハードル高いよね
[気になる点] どうして水しか沸騰できないと思ってるんだろう。揚げ物料理もあるみたいだし。何も分からないなら、とりあえず温度を上げる能力だって思わないかな。結構、違和感が…。
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