360 復興開始
騎士さんや兵士さんががんばって、トーカとゴーレム軍団もがんばって、私も時々手伝って、王都中のガレキの撤去が終わったころ。
バルミラードやスティージュをはじめとする各国の支援が到着し始めた。
いよいよ復興開始、といきたいところだけど、まだまだ届き始め。
使える物資も人員も、広い王都を直すにはまだまだ足りない中で、まずは今朝から王城とその周辺の修復が始まった。
トーカはさっそく手伝いに行ったみたい。
私も行ってみようかな。
建築技術なんてないから役に立てないけど、力仕事ならなんとかできるし。
ペルネ女王やストラにも久々に会いたいし、ね。
そんなわけで、ベアトと手をつないで王城までやってきた。
城門はだいたい無事、だけどお城には大きな傷が残っている。
ベアトの命を狙って放たれた、赤い魔力光が残した傷痕。
嫌な記憶を思い出させちゃうんじゃないかって、この子は連れてきたくなかったんだけど……。
「……んぅ?」
チラリと顔色をうかがえば、平然としてるベアトのすまし顔。
そうだよね、私とちがってこの子は強い。
余計な心配だったみたい。
そもそも私、この子に対してちょっと過保護すぎるかも。
これじゃ恋人っていうより妹みたいな……。
「……えっと、足元、気をつけていこうね」
「んっ!」
ごまかしたら元気よくうなずかれた。
でも、お城の前の広場には、運びこまれた木材や建材があちこちに山積みだ。
足元に気をつけなきゃいけないのは本当だし。
若干のバツの悪さを感じつつ城門をくぐる。
さて、ペルネ女王はどこにいるかな……。
「元気そうだな、よかったぞ!!!」
「ひぅっ!?」
「元気が一番だからな!!! そうだ、何はなくとも元気が一番だ!!!」
……なんだ、このやけにバカでかいバカみたいな声とバカみたいな語彙力。
ベアトがビックリしてるじゃん。
「え、えぇ……。兄上におかれましても、ご健勝でなによりです」
「おう、俺はいつでも元気だぞ!! 風邪もひかないからな!!!」
「此度の支援、わが国を代表して篤く御礼を――」
「妹が困っていたら助ける、それが兄だからな!!! 気にするな、がーっはっはっはっはっは!!!!」
あぁ、バルバリオか……。
支援隊といっしょに来てたんだね。
王様になってそれなりに経っても相変わらずの様子。
ペルネの肩をべしべし叩いて、高笑いしながらのっしのっしとどっかに歩いていった。
「女王陛下、お疲れさま」
「あら、キリエさん。いらしたんですね」
バルバリオが去ったのを見計らって声をかけると、女王様は笑顔でおじぎを一つ。
言うほど疲れてないっぽいね。
「王都の復興、とうとう始まったね」
「各国の支援のおかげです。中でもバルミラードは真っ先に、無償での支援を名乗り出てくださって……。本当に無償とするわけにはいきませんが、お兄様のその気持ちがとても嬉しかった……」
そう言う女王様、本当にうれしそう。
ペルネ女王とバルバリオは、大勢いた兄弟姉妹の数少ない生き残り。
あの二人も血のつながった家族。
確かな、ちゃんとした絆がやっぱりあるんだな。
「ペールーネー! スティージュもほぼ同時に手を挙げたでしょー?」
「ふひゃっ、ストラひゃん……」
後ろからいきなり出てきたストラが、ペルネ女王の両頬をひっぱる。
いいのか、これ。
相手は女王様だぞ?
……あぁ、ストラも女王様か。
「ストラ、久しぶり」
「んぅっ!(よっ)」
「よっ、久しぶりぃ。……てかアンタら、ずいぶんとフランクね。あたしも女王様なの忘れてない?」
片手を軽く上げての軽ーいあいさつに、ストラはご不満のご様子。
うやうやしく頭でも下げればよかったのか、ストラ相手に。
……当のストラに熱でもあるのかとか言われそう。
「しっかし、相変わらず仲良しさんだねー。手なんかつないじゃってさ」
「付き合うことになったからね、私たち」
「……っ」
この二人相手なら軽ーくカミングアウトできる気がして、軽ーくカミングアウトしてみる。
「……え、それマジ? やるじゃん二人とも」
「お、お二人がそんな関係になっていただなんて……」
素直に関心してくるストラとは対照的に、そういうことに耐性がないのか顔を真っ赤に染める女王様。
両頬に手を当てて真っ赤になりながら、チラチラとストラを見てるのはそういうことだよね。
ここは背中を押してやるべきかな。
「そういう二人はどうなのさ。女王様同士だと難しかったりするのかな」
「な、な、なっ、何をいきなり勇者様言い出すんですか唐突に!!!」
あら、女王様が壊れた。
一方、ストラのほうは……。
「いや、まぁ、そのうち、追々、ね……?」
こっちもしどろもどろになってるし。
案外奥手なのか、この二人。
「……あの、じゃ、じゃああたし、あっちの方見てくるから! そゆことで!!」
そして逃亡。
残されたペルネ女王が復活するまで、しばらくの時間が必要だった。
「落ち着いた? ごめん、余計なお世話だったかな」
「い、いえ、いいのです……。ストラさんと、その……、お二人みたいな関係になりたい、という気持ちは本当ですから」
「そっか」
いろいろと障害は多いだろうけど、今の一言が小さなキッカケにでもなればいいな。
「……えと、じゃあそろそろ行くけど、何か手伝えることないかな」
「人手は足りていますし、大丈夫ですよ。……あぁ、それと一つ。話は変わるのですが、キリエさんにお知らせしておきたい大切な話がありまして」
大切な話……?
なんだろ、ものすごく真剣な感じだ。
こっちも真剣に耳をかたむけよう。
「王都の復興が終わったら、今度はリボの村を復興しようと思っているのです」
「え……、私の、村を……?」